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夜の終わり、決着の後始末


 私はクイーンを始末後、衛兵に呼び止められ……そのまま一言二言、言い。城へ帰って衛兵用の大浴場を一人で沸かした。一人で入り旅の汚れや、戦いの汚れを洗い流す。そのあとに髪を乾かし、バスローブを着て脱衣場を後にする。その脱衣場から出たところでエルフ族長とダークエルフ族長、セレファ族長が待っており。3人は私を待ち伏せしていた事が伺えた。衛兵から聞いたのだろう……帰って来たことを。


 皆が後始末に奔走するなかで一人、風呂に入った事を怒られるのだろうかとも思ったが……今はそんな事は気にもしていない。無感情……そう。悩んでいるずっと。


「……ごめんなさい。皆さん。勝手に入ってました」


 私がそう言うとエルフ族長が一歩前に出て膝をつき。他二人も膝をついた。


「女王陛下。火は消しとめられました。反乱者も全てその場で処刑……半数の脱獄者は無事に収容されました」


「……そう」


「女王陛下。お疲れのようですね。後の事は我々が行います。女王陛下はお休みください」


「……ええそうね。でも、眠れそうにないわ。誰か……酒を付き合ってくださらない?」


「「「!?」」」


 私の目の前の3人が驚きながら私の顔を見た後。こそこそと話をし、そして3人は立ち上がる。代表としてエルフ族長が頭を下げる。


「……時間を空けさしてください。部下に指示を終えたあとに向かいます」


「ええ、どうぞ」


「ありがとうございます。ダークエルフ族長、セレファ族長……早めに切り上げられるように頑張ろう」


「ええ……」


「はい」


 3人は私に一礼をし……その場を去る。一人となった私は窓を見て夜中なのに明るい都市を眺め大きくため息を吐いた。


 クイーンの最後の笑みをまだ……理解出来ずにいたまま廊下を歩く。






「……」


 自室で、椅子に座り。こびりついて離れないクイーン最後の微笑みを私は思い出しながら目を閉じる。彼女のやってきた残虐な行為を追想しようと思い夢魔の力を行使している。夢の残滓として途切れ途切れ映像を見ながら……彼女を理解しようとするが。何一つ理解が出来なかった。


 最後の微笑みはとにかく暖かい物だった。それだけを追想しようとしても……彼女の感情、残滓を追おうとしても。夢魔であるクイーンの力に阻まれ。いや……完全に抹消されていた。


 何もかも、ひた隠しに感情を見せない。


 隠し続けている。何かを。


「……わからない。何故こんなことを?」


 理由はない。ただ遊びの感情での狂った人ならば追憶、夢で何かしらの尻尾は拾う事も出来ると思った。だが、何もかも私には見えてこず。おかしいと感じた。


 グランギョニル……残酷劇。


 狂人なら狂人らしく。この劇を楽しんだ念があったはず。


 あるのは強い強い恋。私への恋。見えてくるのは訳のわからない感情のみだった。


「隠しているわけじゃなく……これが本当にそのままの感情なら……楽しんでいる振りをしていたことになる」


 もしも、私が考える事と違い。恋で行動に移していた場合を考える。だが、恋もまた残酷であることを知っている私は……ゆっくりゆっくりとじわじわとクイーンの考えが読み取れていく。


 クイーンの立場で……考えた行動。


 多くの者を恐怖に落とす行為。


 何もかも……何もかも。ある事が思い起こされる。


「……はぁ、わかった。そういうことね」


 私は筆と紙を用意し、自分の考えを書き込み。そして……空になった酒便に入れて封を施す。


 思い付いた事をそこに封じるために形として残した。そのまま……それを部屋のタンスの置くへしまいこむ。心に封をし、一人背負う。


「……あなたの意思、受け継いであげるわ」


 ただ静かにそれだけを囁き。私は白い衣装に着替え、飾ってある覇王旗を掴む。魔王として立たなければいけなず……強い足取りで自室の扉を開く。


 そのまま耳に手をやり、最近魔法として開発された夢魔の連絡方法。夢を使い、通り所へ声を届ける術を使う。


「……誰か通じる?」


「はい、どちら様ですか?」


 かわいい少女の声に私は答える。


「女王ネフィア・ネロリリス。族長たちに繋いでもらえる?」


「は、はい!! 繋がりました!! どうぞ!!」


 慌てる声にふふっと笑みを溢し。私は聞こえているだろう3人に伝える。


「晩酌は無しよ……考えがまとまった。声明を出します。私自身がね」


 耳元ではなく、頭に声が響く。何を言うのかと不安がって聞いてきた3人に私は一言。


「魔王の声を信じれないと? 一緒に聞きなさい……声を」


 文句は帰ってこなかった。私は廊下を歩き、堂々と、テラスの劇場へと上がる。風が私の髪を撫でてくれた。私の炎が私を照らしてくれた。


「さぁ……行きましょう」


 クイーンが演じたのは残酷劇。


 そして、私がこれから演じるのは……


「悲劇か喜劇か不条理劇か。それとも同じ残酷劇か……はたまた大衆演劇。いいえ、その全てよ」


 城の高い位置、テラスに身を乗りだし。私の生み出した炎に旗が照らされる。竜の刺繍された旗が風で靡く。


「……それを私はフィナーレまで演じる。いいでしょう、死ぬまで……きっと縛られ、降りることを許されない」


 テラスから私は大きく大きく声を張り上げた。事件の終息とこれからの話をする。強敵を葬り去った事を堂々と宣言する。


 多くの所から私を誉め称える声を聞き入れる。


 ただただ。私はその声を聞き入れる。


 静かに何も言わず。受け入れる。


 日が昇るまで終わる事ない。


 私への……観客から拍手喝采をその身で受け入れる。














 






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