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クイーンと幽霊付きの吸血鬼、残った囚人たち


 クイーンがゆっくりと歩く旧城まで続くメインの大通り、魔力の街灯が時間によって点滅する中で一人の男性が悪魔の女性と一緒に立ち首に噛みついていた。


 男性がゆっくりと首から口を離すと二つの傷が残り、悪魔の女性はそれを押さえながら1つ、吸血した男性に話をする。


「頑張って下さいセレファ族長……」


「……ええ、では後方へ。離れてください」


「はい」


 悪魔の女性はポーションを一気に飲み、苦しそうに走り出した。口元が汚れている吸血鬼はそれを服のすそで拭い。クイーンを見つめて世間話をするような笑みを浮かべる。


「……ちょうど食事も終わりました。吸血鬼にはいい時代になりましたね。胸を張って……血をくださいと言うと暖かい物をいただける。理解者が多くなり襲う必要もなくなってしまいました」


「ふふふ、夜の都市インバスを纏めるセレファ族長ですね。お初にお目にかかります。クイーンです。ふふふひ」


「変わった笑いをする女性ですね。セレファ・ヴァンパイア」


「ふふふ、変わったのはどちらさま? 吸血鬼なのに……祝福されている吸血鬼の異形者は?」


「そうですね。私は一人でいるのが寂しい吸血鬼なのです。今は幸せですよ……それが異形なら快く罵りを受け取りましょう」


「はぁ、英魔はつまらない。そうやって……挑発を受け入れる」


「……? あれ? クイーンさん? 笑わないのですか?」


「……面白くないから笑わない。よ!!」


 シャァン!!


 クイーンは頭を下げ、その頭に半透明の刀身が通り、前に避け、右手に黒い羽根を渦巻かせて一本の剣を抜くように引き抜く。


 真っ黒の刀身に黒い羽根が鍔に巻き、意匠が全て黒翼の異形な剣。それを片手で大きく振りかぶり吸血鬼を切り落とそうとする。


「小烏丸……」


 振った剣から黒い翼が舞い。吸血鬼のマントだけを引き裂く。吸血鬼は大きく離れ……その吸血鬼を護るように白いモヤが少女の姿を形取り。半透明な両手にナイフを構える。


「セレファ様!! 大丈夫ですか!!」


「インフェ……血を貰いました。力一杯戦っていいですよ」


「それが、あなたについた邪霊ねぇ」


 クイーンは剣で自分の腕を切り、黒い血を刀身に滴らせる。ゆっくりと血が地面に落ち、黒い炎を生み街灯の光を吸い込む。


「徐霊してあげる」


「……インフェ。頼みましたよ」


「はい、セレファ様」


 吸血鬼が右手を差し出し、魔力を放出し膝をつく。その魔力はインフェの小さな少女の姿に吸い込まれ。少女の姿は消え去る。


「……気色悪い儀式」


 クイーンは悪態を吐きながらその場から飛び去り避ける。その瞬間に上から半透明の大人の女性が両手の剣で切り下ろした。


 半透明の体に二つの天使の羽根を持ち、金色の波打つ髪をなびかせる。透明な剣を両手で持った少女は低い声でクイーンの言葉に反論した。


「そうですか? 私は……愛されてると思ってます」


「……ふぅ。笑える物が足りないわ」


「そんな事ないですよ。一緒に踊りましょう?」


「ふふ、それは楽しそう。幽霊と一緒に踊るなんてね!!」


 インフェは剣を構え直し、クイーンに斬りかかり。クイーンはそれに黒剣を当てて防御する。弾かれる透明な剣にインフェは驚く。


「どうして……透けない?」


「……ふふふ。幽霊の驚きなんて面白い!! ああ、ああ!! 興が乗ったわ!! 剣は生きてない……だけどこの烏丸は私の羽根……生きてるから触れるのね」


「……」


「さぁ、踊りましょう。幽霊と一緒にこの女王と」


「女王陛下は他にいる」


「それも今日までよ?」


 ギャァアアアン!!


 大通りに剣と剣が打ち合う音が響く。多くの悲鳴と歓声を音楽に、苦しそうに表情をする女性の幽霊と裂けるような笑顔で黒い翼と黒い剣が舞い続ける。


 大通りに黒い羽根を撒き散らしながら……






 大きな鎌を肩にかけて、自分の意思で留置場にやって来たエメリアは留置場内に残っている受刑者たちに会いにきた。


 離れた地で色々な人々をみていたエメリアは急ぎ都市に帰って来た時。気になる事があり留置場に寄ったのだ。


「私が……果たして……いいえ。考えるな。ネフィアのお姉さんなんです。大丈夫……昔よりしっかりできる……」


 自身の作られた人形の体の胸を押さえて落ち着かせて勇気を出す。戦うことも何もかもまだ臆病な部分を押し込めて留置場ないの開かれた牢屋かた、多くの受刑者が食堂でトランプなどで娯楽に興じている。


 その中にエメリアは飛び込み。叫んだ。


「受刑者の方々!! お話があります!! 聞いてください!!」


 唐突の食堂に集まった受刑者の英魔族たちは雑談をやめてエメリアの方を向き。それのエメリアの背中の翼がしゅんと縮む。


「聞いてください!! 今、首都が大変な騒ぎになっています!! お力をお貸しください!!」


 エメリアは堂々と口を真一文字に閉め反応を伺う。一人、一人立ち上がるなかで一人の悪魔だろう人物がエメリアを睨み付けて喋り出す。


「おいおい、天使の姉ちゃん。ここは何処だと思ってる? そんなもん衛兵に任せりゃいい」


「衛兵の数に限りがあります。殺すだけなら誰でも出来ますが護って戦うのはどれだけ大変かご存知ないのでしょうか?」


「……姉ちゃん。俺たちは皆、あの衛兵たちにぶちこまれた。救ってやるもんか。なぁ!! 皆」


「「「おおおおおおお!!」」」


「……衛兵を助けてくれとはいいません。都市の英魔族を助けてください」


「ああん? そんな義理はねぇよ」


「恩赦、民を助ける事で……女王陛下に取り入りましょう」


「はん? 女王陛下が俺らを許して下さると言うのか? ははは、こりゃ傑作だ。クイーンに狩られるともっぱらの噂じゃないか」


「……我が妹を舐めるな」


「妹? 妹……」


 悪魔が首を傾げて考え、そして口に出す。


「女神エメリア」


「……はい」


 エメリアは堂々と言い当てた悪魔に驚かず。そのまま大きく頭を下げる。


「お願いします。ネフィアにはそうお願いしますから……お願いします」


「……はははこりゃ!! 滑稽滑稽!! 女神直々に頭を下げるか!! 罪人に!!」


「はい……残ったあなた方は今、暴れている英魔たちと大きく違うと思いますのです。同じように逃げ出す事もせず……ここで待っていた。理由があるのでしょう。その理由を達するために尽力します。代わりに……」


 エメリアは一拍待ち。そして、大きくハッキリと再度、声に出す。


「私にお力をお貸しください!!」


 エメリアの声に食堂広場はシーンとなる。その中で一人の若者の獣人がエメリアに近づく。


「友人が心配だ……」


 その言葉にエメリアは答える。


「見つけましょう。名を、この紙に……」


「ああ、すまん。字が書けない」


「名を教えて下さい」


「ウルト。犬の亜人」


「はい」


ガタッ!!


 また一人立ち上がり、エメリアに近付く。そして……


「俺も家族が心配だ……家族に申し訳なく。ここにいて受刑を受け入れている。だから……行きたい」


「はい、お名前を」


「俺は名前だけは書けるだ。筆をくれ」


 そうこうしていると一人一人とエメリアに集まり、エメリアが慌て出す。そんな光景を見ていた最初に突っかかった悪魔が大きく叫んだ。


「おうおう!! 並べ並べ!! 文字書ける奴は名前を書いてやれ!! 書き終わったらグランドに集合!! いいな!!」


 多くの英魔の亜人がその悪魔の言葉に従う。エメリアはその悪魔の亜人がまとめていくのを見ながらただただ眺める事しかできない。動きが良くなっていく囚人に暇が出来た悪魔の亜人がエメリアに近付く。


「エメリアの姉さん。あんたの目録見は正しい……ここのいる奴らは暴動起こしている奴と違う。恩赦……頼んだぜ」


「名前をお聞きしてもよろしいですか?」


「ダノワール・デビル。立派で裏切り者の弟から多くを聞いている」


「ダノワール……冒険者ノワールの親族ですか!?」


「ああ、喧嘩別れをしたな……ノワールの尻拭いなぞくそ食らえだが借りを作るなら。気分も張れる」


「……ありがとうございます」


「なに、お礼を言うのはまだ早いぜ。女神さんよ、これからなんだからな!! グランドに待たせてる。武器もいるし、衛兵に味方だと分かる方法も考えないといけない!!」


「はい!! 武器は……私が用意します!! 識別は簡単です。この布に赤い丸を血で描いてください!!」


 エメリアは2枚の無地の布に赤い丸が書かれた者を肩につけ。頭にもつける。それにダノワールはそんな簡単な物でと大きく驚きながらも。グランドへ伝えに向かうのだった。











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