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クイーンの宝探し


「気付かれちゃった」


 部屋の一室でクイーンは夢から醒め血に濡れ渇きカピカピとなった服から新たな服に着替える。誰もいない隠れ家で一人……真夜中で静かに目覚める。


「ふふふ楽しみね。いったいどうなることやら……早朝が楽しみ」


 都市は広く。衛兵では全てをみることは敵わない。だからこその婬魔での大捜索だった。


「婬魔を正しく上手く使う事の出来るエルフ族長は強敵ですねぇ……ふふじゅ」


 ガタガタ!! ドンッ!!


 階段をかけ上がる音と共に蹴破られる扉。大きな戦斧を持ったダークエルフ族長以下、黒い鎧の衛兵が並ぶ。


「見つけたぞ。今度は逃げられない。空も昆虫亜人族によって閉鎖している。アラクネ族長の罠もある。大人しく殺されよ」


「あらぁ、対面で殺すなんて……物騒。時間を取りましょうよ。悲しいわぁ~ふふふへへへへへはははは」


 狂った笑い声に屈強な黒い鎧の衛兵たちも背筋が冷える。ここまでおかしい人物がこの世にいるのかと怖がった。綺麗な化粧が施され、ネフィア女王の姿だからこそ恐ろしいくも彼らは感じる。


 女王陛下の強さがもしもこちらに向いたらという怖さを知っている故に。


「あらあら、びびちゃって……チクチク痛むわぁ」


「黙れ、斬る!!」


 大きな戦斧を振り上げて壁、天井ごとバキバキと斬り崩しクイーンの頭上へ降ってくる。だが彼女は避けずに手を広げて笑みを残したまま、小さく囁いた。


「死んだら、死骸が出る」


ピタッ


 眉間に斧が止まり、少し皮膚と肉を斬る。滴る血が鼻や顎から垂れ。その赤黒い血は油のようにねばつき、床に触れた瞬間に燃え上がる。


「何をした!!」


「ふふ、なーんにも。朝明けとともに太陽の光で燃えるの。好きでしょ? 太陽が……みーんな。子供も女性も男性もみーんな。だからね窓際に座らせたの」


 ニヤニヤとクイーンは愉快に語る。背中の羽根を一枚取り、それをダークエルフ族長に向ける。


「私の炎は遠隔でも燃えるの知ってるでしょ? この前は手紙を読んだ瞬間に起炎。次はね……みーんな大好き太陽が登って部屋に光が入ってきた瞬間に~起炎する」


 クイーンの手に持つ羽根が燃え上がる。戦慄する衛兵たちを嘲笑うように話を進める。


「遊びましょう。私からのゲームです。この羽根を机に座ってる人々に置いてます。さぁ明けるまでのお遊び……助けないとみーんな焼け死んじゃう。早朝から多くの鶏が泣き、叫び、美味しいお肉になっちゃうよ」


「クイーン!! 何処へ隠した!!」


「教えるわけないじゃん……お遊びなんだから。1、2、3、4、5。あっ!? 指で数えられない」


「クイーン!! やめろ!! 死にたくなければな!!」


「んんん? 二流。死んでも皆一緒に、機嫌損ねても彼らだけ太陽に焼かれる。やることは一つじゃない? 私の気分が変わるまでね、ふふふ……さぁ斬ればいい。斬れば救われるよ? あと、羽根は一枚。火力もないからゆっくりとゆっくりと燃えていくだろうね。熱い熱いと泣いても無駄って絶望しながら。はははははは」


 ダークエルフ族長は斧を投げ捨て、クイーンを鷲掴みし顔面を殴りつけて床に押さえつける。


「全員!! 聞いたか!! 探せ!! 宿屋の個室や全てを!!」


 黒い衛兵は恐怖を噛みしめてその場を後にする。


「ふふ、動きがいい……帝国や他の都市なら救えないのにね」


「黙れ!!」


「ふふふはははははははははは!! ひひひひ!! 救えるのは数人だけ!! さぁさぁお宝探しのお時間だ!! ふふふ」


 腹を潰されながらも部屋に笑い声が響き続ける。そしてクイーンはエルフ族長に向かって背中の翼で包み。横に投げつける。壁が壊れとなりの部屋の転がりながら立ち上がりクイーンをダークエルフ族長は殴り抜く。


バガァン


(重たい!! 手が痺れる!! 鉄を殴っているようだ!!)


「痛い……痛いよぉ……なーんちゃって。何も感じない」


 スッ


「しま!?」(この動き!?)


 殴り続けるダークエルフ族長の懐にしゃがんでクイーンは入った。そしてそのまま、ダークエルフ族長に殴られても怯まず。大きく大きく拳を振り上げてオーバーブローを顔面に叩き込まれた。ダークエルフ族長が宙に浮き、距離が離れながらクイーンは首をコキコキと鳴らし見下す。


「あの日から鍛えてなくない? ねぇ? 武器取られた、あの日からさぁ」


「な、なぜそれをお前が知っている!! なぜ俺が最初に負けたあの日を!!」


 転がりから立ち上がり叫ぶ。クイーンはそれをおちょくるように笑い言った。


「だってそれ……私だし?」


「嘘をつくな!! そんな筈はない!!」


「ああ、怖がってる。怖がってるねぇ!! 怖がって」


 ガシャン!! シュルシュルシュル!!


「ん!?」


 クイーンの体に魔法の白い糸が重なる。グルグルと巻き付けられて四肢の動きを制限。窓側の壁が壊れて糸が飛んできたのだ。


「ダークエルフの族長さん!! 目を覚まして!!」


「アラクネ族長!?」


 アラクネ族長が黄金に輝く聖剣を握りしめ、片手で糸を操る。巨体の彼女は自身が入れる大きさに剣を使い壊して参戦したのだ。


「この人は"ネフィア"じゃない!! クイーン!! 別人です!! 何を迷ってるのですか!!」


「ふふふ、アラクネ族長。あなた……どれだけの生き物食べて来たのかしらね!! 王子にその醜い行いを説明した?」


「彼は知ってます!! 沢山!! 食べてきた!! だけど!! それは私が魔物であり英魔族だからよ!! 今日……もう一人増えるわ!!


「ひひ、私を喰おうと? 腹下すわよ」


 チリチリ


 糸がゆっくりと黒く燃えていく。それを上から何度も何度も糸を補修し口元も塞ぎ時間を稼ぐ。


「ぐむ」


「ダークエルフ族長!! 立ちなさい!! あなたはそんなに弱い人ではないでしょう!!」


「しかし、殺せば……皆に被害が!!」


「四肢を切断し行動を制限すればいいでしょ!! 皆が探している。私の夫も皆!! 信じて待ちなさいよ!!」


 アラクネ族長がダークエルフ族長を叱咤激励をする。強く、たくましい聖剣を持つアラクネ族長にダークエルフ族長は拳を強く握りしめて戦斧に手を伸ばし……吸い寄せる。


 パシッ


「英魔の女性はなんでこうも逞しく。強いのでしょうか……ええ、怖がってましたよ。クイーン、女王陛下の影に見えて」


「……がりっ。ペッ!! ぶはぁ……すぅはぁ。ヤバイかも」


 クイーンが口元の糸を噛み千切り吐き出して笑みを向けて力の奔流が勢いを増す。黒い翼が卵を割るように糸を裂く。裂いた翼の数に族長二人は戦慄した。4つ翼は開いている。


「4つ……いる。この場面ではね……さぁ吹き飛べ」


 笑い声が鳴りを潜め、大きく彼女は旋回する。黒い4つの翼で凪ぎ払うように。ネフィアのあの炎翼で凪ぎ払うように同じ動作で翼を当てる。


ボゴォオオ!!


 だが、右回転だった事で……ダークエルフ族長の斧に止められる。翼を閉じてクルッとして深い笑みを向ける。


「やめてよぉ!! かっこよく吹き飛ばそうと思ったのに!!」


「……女王陛下の翼より硬く、重く、柔らかくもなく。焼けはしない。アラクネ族長……離れてください」


「はい」


 アラクネ族長がスッと破壊した壁から飛び去り、闇夜に消えた時、クイーンの腹に斧が食い込む。


バキバキバキ!!


「ぐへっ……へへへ」


 だが、絶ち斬れず。それでもダークエルフ族長は勢いよく部屋の外へ吹き飛す。球のように反対の家の屋根に跳ねて吹き飛んだクイーンはそのまま……顔面をダークエルフ族長に掴まれて……


ドガガガガガガ!!


 屋根に叩きつけられ、家に風穴を開けて落っこちる。落っこちる穴の底で空を見上げるクイーンはダークエルフ族長が覗き込むのを笑みで返した。


「いったーい……痛かった」


「……」


「だからこそ……だからこそ!! 私はここにいる!!」


 ガバッ!! 


 クイーンはそのまま爪を伸ばし、ダークエルフ族長と剣劇を楽しむ。四肢を削られながらも斬り合いを選んだのだった。





 都市の屋根屋根が爆発し、壊れ、多くの悲鳴や応援の声が響く中で……時間が過ぎる。


 ゆっくりと明るくなっていく中で……ふとクイーンは攻撃の手をやめた。ズタズタの肉、手は骨の見える部分もある中でもクイーンは立ち続けた。不死のような状態かとダークエルフ族長は感じながらも次の一手を考える。


「ふふふ、日が昇る。私の宝探しの今日はおしまいね」


「……それはお前が死ぬと言うことだ」


「いいえ、さぁ!! 悲鳴の大合唱。早朝の歌!! 楽しみましょう」


 ………………


「あっれー?」


「なめるなよ。歴代最強を自負する首都衛兵団をな!!」


「クククク……はははははは。私の負けね!! 全部見つけちゃったかぁ!! はははははははははは!! 素晴らしいブラボー!! ブラボーおおおおおお!!」


ぱち……ぱち……ぱち……


 乾いた拍手クイーンが行い。ダークエルフ族長は間合いを詰める。だが、スッとクイーンは消える。ハートの⑫番がヒラヒラとなびく。


「何処へ!? いや、落ち着け……ちっ!!」


 ダークエルフ族長は目を閉じて邪悪な存在を捉えたが一瞬で空に舞い上がり。飛んでいっている。追いかけるには翼以上に魔法の準備が足りず。ダークエルフ族長は唇を噛む。


「風の魔法か……くそ!! 音を消せるのを失念していた!! いや……仕留めそこなった!! ああああああああ!!」


 飛べない己を……悔しがり、戦斧を勢いよく怒りに任せ全力で投げつける。腕の辺りで大きな衝撃波と音の壁を壊す激しい轟音とともに投げ放たれた戦斧は何も無い空間を裂く。屋根の上からであり、屋根を家を壊した攻撃は何も無い空間を過ぎる。だが、その空間から片腕と一枚の翼が現れ落ち。灰のように白くなり、塵となって消えていくのを見たあと。彼は座り込み。頭を掻いた。


「やはり……俺たちではダメなのか」


 そう、嘆きながら。




 








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