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英魔の捜索隊


 明るい太陽が昇る世界、夢の中。クイーンはそこで忌々しい太陽を見ながら……静かに待っていた。黒い羽根が光沢を持ち、黒光りする中で笑みを浮かべる。花を踏みしめながら彼女は立ちすくしたまま背後に向かって声を出した。


「くそったれな夢ね。綺麗すぎる。本当に誰よこんなつまらない夢を見たのは」


「私です」


 クイーンの後ろに泣きホクロが特徴なメイド服を着た少女が答えを口にする。何処か凛々しく、金色の髪が太陽によって輝き、小さな羽根を生やして右手に炎を生み出し敵意を示す。


「あら、あら、あら? 女王陛下の真似事? 私に似てますねぇ!!」


「真似事です。名をネフィア・エルフ。愛称はフィアと呼ばれております。城の管理、メイド長をさせていただいてます」


「知ってる知ってる!! 婬魔のネフィアからいただいた名前で!! ネフィアの替え玉さん……すごいね。奴隷から一躍エルフ族長の姫様なんてねぇ!! 童話もビックリ!!」


「……伺っていましたが。道化師みたいで人を馬鹿にする口調。本物ですね」


「ふふふ、あなたもこのカードあげよう」


 クイーンが一枚のカードを投げつけ、それをフィアを受け取る。ハートの12番のカードに意味を知り。当たりを引いたことを確信した。


「草の根も掻き分けて探して私が当たるなんて僥倖です」


「会った事は幸せなんて嬉しい!! 私も会えて幸せ!! だって……婬魔の裏切り者ですもの」


「裏切り者?」


「こんな夢で隠してもダメよ……婬魔はこうじゃないと」


 パチン!!


 指を鳴らしたクイーンが夢の世界を変える。暗く、そして黒石の建物が立ち。壁には多くの婬魔が吊るされていた。首からではなく手から吊るされ……翼の生えた魔物についばまれている光景にフィアは口を押さえる。所々、婬魔の遺体が積み重なっているのだ。


「忘れた? 痛かったわ……啄まれるの」


「うぷ……ふぅふぅ。都市インバスの光景ですね……もうこんな光景みませんよ」


「見ないよね。そう、みない。増えすぎた婬魔、老いた婬魔。奴隷の終わりも見てないよね? 皆、忘れてる。忘れてるね」


「……あなた。婬魔だよね。私と同じ」


「ふふひ、どうかしら? でも覚えてるものは多いわ!! 閉じ込められてゆっくりと毒ガスを入れられ苦しみ悶え処分される。面白半分で首を落とされる。生きたまま拷問で悲鳴を盃に消耗品として扱われてきたのは覚えてる」


「……もう。そんな時代終わりました」


「本当に? 終わった?」


 クイーンはニタニタと笑う。そして、翼を翻し黒炎をばらまき、夢の世界を燃やす。


「終わりではない、始まりですよ……全てね」


「クイーン!! 投降しなさい!! 絶対にあなたではネフィア女王に勝てない!! 復讐ならもうやめて!! 私たち婬魔はやっと安息の土地を貰ったの荒らさないで!!」


「過去は忘れられない」


「過去は越えられる!! いいえ、私と私達で越えてみせる!!」


 フィアの背中の翼が燃え上がり、黒炎を吹き返す。クイーンは笑い、その姿を馬鹿にする。


「ネフィア女王に似た力。模造品。奴隷ごときが使えるなんてねぇ……ネフィア女王もその程度かなぁ?」


「私のエルフ族長への愛を馬鹿にするなぁあああああ!!」


 ブワァゴバアアアアアアア!!


 空間が黒い炎ではない、赤い輝く炎で埋め尽くされクイーンを取り囲む。その事にクイーンは余裕を見せ続ける。


「夢で焼き殺します!! いいですね!!」


「ふふふ、出来るならとっくにやればいいのに優しいねぇ~」


「はぁああああ!!」


 炎を操り、弓と矢の形を取る。エルフ族長の技を模倣し放つフィアの矢が鳥の形を形取りクイーンに迫る。一点集中した炎の力はその一点だけ……ネフィアの炎を越えて青白くなり、白へと登り詰める。


「フィア!! フェニックス!!」


 フィアの努力と婬魔のエルフ族長の愛が成す技は必ず殺す事の出来る物へと変わり、クイーンを飲み込んだ。


「ふぅ……!! 燃え尽きろ!! 燃え尽きろろおおおお!! あの人のために!!」


「……そう。倒せば褒めてくれるもんね。倒せば愛してくれるもんね」


「!?」


 炎の中で手を大きく開くクイーン。その瞬間にクイーンの目の前に黒い炎の球が生まれ……炎を取り込んでいく。吸い込まれるように炎が集まり。全てを吸った後。球体は何事も無かったように消え失せる。


「エルフ族長に捨てられたくない。そんな気持ちもこもった炎ねぇ!!」


「う、そ……炎を食べた!?」


「おっ、吸収とは言わずに食べたと表現。そうだね!! 暖かい熱い。いい炎だったわ。美味しかったわ!!」


 背筋が冷える中で、フィアの肩にある手が置かれる。


「フィア……」


 優しい声と共に戦いの途中だが、フィアはつい振り向いてしまう。その瞬間に……唇が固まってしまう。


「……勝てなかったのかい? あぁ……そうか。そうだね」


 振り向いた先に冷たい表情のエルフ族長がフィアを睨む。その睨みにフィアは偽物なのに震えが止まらなくなり、首を振った。


「所詮、ネフィア様には敵わない。ああ、女王陛下は強く逞しく。お美しい。なのに……君は……」


「……うぅ」


 フィアは夢から覚めようともがく。


「起きたら同じ事を言われるよ?」


「違う!! エルフ族長はそんなこと言わない!!」


「……本当に? ふふ、本当にかしら。現実はこっちで実はあっちが夢かもしれませんよ。起きたとき……暗い部屋の上で誰とも知らない男と寝ているかもね」


「……ごめんなさい。グレデンデ様」


 ゴバァアアアアア!!


 肩に置いた手をそのまま掴み、炎で焼く。無抵抗な彼は一瞬で燃え尽き。存在の薄さを感じさせる。クイーンはそれを見ながら真顔になり、ただだたフィアを眺める。無感情に。


「これが現実でもあれが夢でも。私は……辛くても立ちます!! 私では……どうすることも出来ないですけど。場所はわかったです」


「……逃げたか。ふふふ、ははは……いいじゃないそういうことね」


 フィアは落ちていく。現実世界へと。








 婬魔が住む屋敷の一室。多くの婬魔が同時に眠っている中で一人声を上げて飛び上がる。


「ん、んんんん!! グレデンデ様!!」


「フィア!?」


 布団を押し上げて飛び上がったフィアが皆の様子を見ていたグレデンデに走り抱きつき。顔を寄せながら言葉を溢す。


「怖い夢でした……」


「……すまない。こういう仕事を頼んで……」


「いいえ、いいんです。それよりも地図に記入を……もう相手も起きてます」


 グレデンデが用意された机に置かれている地図に彼女をつれていく。すぐに印をつけたフィアの頭を撫でたまま次のお願いをする。


「仮眠中の衛兵の夢に伝えてください。そして……かわいい娘たち全員を起こしてください」


「はい。そして……一つお伝えします。これに失敗したら女王陛下を頼ってください」


「……」


「私の力を吸い込まれました。あれは大きな大きな穴です。深淵まで続く穴です」


「わかった。2回目は時間稼ぎにしよう」


 エルフ族長は頷き、フィアを姫様抱っこする。彼のその力強い腕の中で彼女は夢へと渡り。衛兵が飛び起きるのだった。






 

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