泡のように浮かび上がる者
飲食街の酒場の奥。昔から牛耳っていた悪魔たちの住みかに旧き時代の悪魔達が集まる。多くの不満を胸に秘めて。
「……また衛兵に処刑されたらしいな?」
「ああ、ダークエルフの衛兵団にな!! くっそ賄賂も要らねぇ……汚職もしねぇ……あいつら同じ悪魔か?」
「けっ……悪魔は契約を守る。それは騎士道に進んだとき規律を契約なんて屁理屈、くそ食らえだ!! おめぇの倅はどうだ?」
「あいつはもう倅でもない。裏切りやがった。衛兵団に入るために宗教家になっちまったよ」
「悪魔が宗教なぞ、くそったれ。あのエルフの野郎も同罪だろ」
「けっ!! 何が罪を償うだ!! 馬鹿馬鹿しい」
多くの悪魔が不満を漏らし、迫害を受ける事に苛立ちを覚えていた。酒場の奥で名のあった悪魔たち、前魔王やエルフ族長などと同盟を組み。魔界を牛耳っていた者達が集まりそして……再度、牛耳ろうと個人ごとの仲違いをやめて集まる。
敵の敵は味方と言う。英魔女王の立場を怨み集まったのだ。故に口汚く彼女を罵り、エルフ族長とダークエルフ族長から敵視されていた。
「畜生……あいつら衛兵団、無茶苦茶しやがる。俺の隠れ家も潰されちまった。まぁ道連れも多かっただろうがな」
「しかし、向こうはまだまだ増え続けている。じり貧だ……帝国へ逃げるしかないか」
「チッ」
暗い雰囲気の中、揺れるカンテラの明かりがある少女の影を移す。黒い翼の少女の姿を。
「何者だぁ!!」
「てめぇ!! 俺たちが誰かわかってるのだろうな!!」
5人全員が席を立ち、各々が武器を構える中でクイーンは現れ笑みを向けて首を傾げる。
「ええ、わかってます。女王によって日の当たる世界へと変えられたため行き場を失った人達でしょう!!」
「おめぇ!! その姿は!! 衛兵団のまわしもんか!! 死ねぇ!!」
渦を巻く剣を抜き、クイーンに突き刺す。クイーンはそれを腹で受け止めて突き入れられ、血をボタボタと流す
。しかし、深々と突き刺された彼女はそのままその悪魔の手を掴んだ。
「つ~かんだ~ふふひひひ」
「なっ!? 腹に突き刺さっているんだぞ!?」
「血……綺麗ね」
悪魔の男はぞわっと背筋が冷え、手を抜こうとした瞬間。クイーンは相手の手を引っ張り、黒い翼で包み。抱き寄せる。優しい優しい笑みを向けて。
「死は誰にも訪れます。それは平等です」
ネフィアが言うような、神の慈悲深い声音で言い。そして大きく破顔する。
「だけど!! その死が苦しいとはわからない!! 簡単に死ねないからね!! 私たちは!!」
ガバァアアアア!!
黒い翼が卵のような形を取り、悪魔を補食するように包み込み。生々しい音が響く。
バキバキバキ!! ぐちゃぐちゃ!!
「あぎゃあああ……」
悲鳴も卵から聞こえる中で、一瞬にして消え去り。肉や骨がつぶれる音が響く。黒い翼の隙間から血が涙のようにしずくを落とし、ゆっくりと床に池を作る。
想像を絶する恐怖に生き残った4人は凍り付いた。そして……血塗れの翼が広がり。男の姿はなく、真っ赤に染まったクイーンとその右手に持つ固形物の丸い肉団子だけであった。腹に刺さった剣を抜き。その固形物をその風穴にいれると脈動し……肉がくっついて穴が塞がる。
血塗れの指を美味しそうに舐め。言葉を溢す。
「また、体重増えちゃった。ダイエットしなきゃ……」
「あ、あいつは何処へ?」
「私のお腹……子宮になったかしら? 空けた穴の変わりにね!! ふふふ。じゃぁ!! 落ち着いた所でお話をしましょう!! 俺はバルデスの長。今日から組織名を"クイーン"と名前を変える」
「「「「!?」」」」
今さっきの男の悪魔の声音で4人は驚き。そして次の言葉で焦りだす。
「さぁ、下克上した。俺の新たな組織は行動する。あなたたちも私と一緒に来ない? 私を女王にして……もう一度……婬魔を消耗品として奴隷として使役し、殺して食べよう。女王を殺せるわよ私は」
「女王ネフィアを殺せると? その程度のちからで?」
「殺せる。彼女は強すぎる。だから、ここでは弱い。民を人質にすればね!! ふふふはははは!!」
狂ったように笑い。狂ったように目を輝かせる。
「報酬、部屋一杯の金貨を!! 用意してくれたら!! 族長も全部消してあげる!! いいね!!」
「信用できるかぁ!! なめるなよ小わっぱ!!」
「あらあら、怖がってキャンキャン吠えちゃってかわいいなぁかわいいなぁ~かわいいから撫でたげる!!」
シャン!! ボト……
吠えた男の後ろにクイーンは回る。あまりの速さに対応出来ず頭を後ろにから捕まれ、ゆっくりとクイーンの爪が伸びて突き刺さっていく。
「あがぁ、あぎゃああああああ」
痛みで叫び、振りほどこうとするがぐっさりと刺さり抜けずに血を流し続ける。
「全員……俺になってもいいんだよ? ん?」
ぐちゃ!!
頭蓋骨や肉が瞑れる音がし、男の頭が爆発し肉片を散らす。クイーンが潰した瞬間に驚いた顔をする。
「あっ……優しく撫でたのに死んじゃった……かわいい生き物ってどうしてこんなに弱いの? ねぇ?」
「あぐ、狂人!! お前の目的はなんだ!!」
「お金を頂戴。分かりやすいでしょ」
「金か!? ぐっ……わかった用意しよう」
「ふふひ、撫でてあげたいけど死んじゃうからいいや。集まったら勝手に黄金櫃に入るから任せるよ!! 期限は3日後。ふふひ」
「わ、わかった」
「お利口さん。ばいばい」
特徴な笑い声を残しながらクイーンは扉から部屋を去る。ズルズルと首を失くした遺体を引きずり、そのまま何処かへと消えていく。
*
「くっ……酷い部屋だ。エルフ族長……これも奴が?」
「ああ、そうだろうな。戦場の臭いだ……血生臭い」
「なんて酷いことを……誰も知らずに出来る事じゃない……隠れて出来る力。王配の力を疑う」
「そうだな。悲鳴もない……」
エルフ族長とダークエルフ族長はクイーンの目撃情報や捜索する中で……宿屋の一室に出向く。
中心で大きな巨体のオーク族の男が殺されており、椅子に座った状態で事切れていた。
死因は血黙りをみるに出血死。だが、そんな事よりも恐ろしいのは内臓などが飛び散っている部屋にいるオーク族の腹はパンパンに膨れ。中身があることを示していた。オーク族の皮膚にはナイフで血文字が書かれ継ぎ目があった。
「不幸せな贈り物……このために殺されたのか? 義兄さん。あの中になにが……」
「だろうな。開けてみるぞ」
内臓を切り抜き、抜いた中身を継ぎ目の紐を切り、開けて見ると……小さな瓶に入った肉塊と血濡れた手紙の入った瓶があった。その瓶を二人は手に取り手紙をエルフ族長は読み上げる。
「こんにちは。まだ見つけられないね。だからヒントを出します。この瓶の中の男は組織バルスの長です。わかりますか? 以上、ヒントは終わり。最後に不幸せな贈り物を!!」
「義兄さん!! 遺体から離れよう!!」
「何が!?」
「黒い炎だ!!」
遺体から二人は離れた瞬間に遺体に火がつき黒く燃え上がる。遺体は暴れだし、悲鳴をあげ、痛みに悶える動きをする。それが人形を操っている行為なのだが二人には趣味の悪い行為に見え険しい表情をする。
「女王陛下の火葬は果たして正しいの? 苦しいよぉお? 否定するなら女王陛下に会わせてね」
部屋にクイーンの声が響き、徹底的な死への冒涜が目に移り、二人は怒りを露にする。
「女王陛下への冒涜ですか」
「義兄さん。奴の目的は女王陛下だ」
「ああ、そうだな。敵意だ……そして……女王陛下を誘い出す」
「女王陛下なら……絶対に向かいますからね」
「ああ、絶対に会う運命になるだろう。会わせるのは危険だ」
「義兄さん!! 会う以上に女王陛下は遠い地だ!! 我々で始末するしかない……」
「わかってる!! だが……私の奥さんに力を借りよう」
二人は消化をしその場を衛兵の部下に任せて作戦を考える。ヒントを見ながら……クイーンを探し消すために。




