英魔国に堕ちるハートの⑫番
首都イヴァリース。大きな大きな道の端に面白い店がある。
「おっお客さん。見ていく?」
その店は特徴的だった。本来、売っているのが珍しい貴重な商品が置いているのである。そう、将棋や花札など遊び道具など、専門に置いているのは玩具だった。だが、玩具でも値段の開きがあり。そして……売れ筋に面白い物がある。
「それが気になるかい? 売れ行きいいよ」
それに女性が触れ一枚一枚確認する。54枚の札には1枚2枚と中を見て行き。そして……ある数字で止まる。⑫番目のハートのマークの札。
「それかい。それ人気な絵なんだよね。女王陛下のイメージがハートだからさ。ハートのナイトクイーンキングは女王陛下の絵なんだよ。スペードは王配。ダイヤは金竜銀竜。クローバーは有名な人を……灰になった偉人たちの絵だね。①から⑨まで族長だな」
「ハートのクイーンの絵柄だけはあるかしら?」
「ん? 一応、裏の絵柄合わせでピン差し出来るようにバラ売りはしてるね。御守りで買ってくかい? ご利益ないよ。ははははは!!」
店主は声に少し覚えがあった。何処かで聞いたような声に少し悩む。もしやと思うのだ。フードを被った女性は笑みを浮かべる。
「じゃぁ、買い占めるわ。これでいいでしょ」
脇からドチャっと金袋置く。
「おぅ……えらい豪勢に買うね。いいよ……えっと袋の中身は……ほぉ。全部、金貨かぁ。金持ちやなぁ」
他の客も驚く。結構大きな袋だからだ。
「ええ、重かったわ」
「じゃぁ、その棚のもん全部で。おつりは……」
「そんな重いのいらないわ。そしてこれをあげる」
買ったトランプを袋に入れる彼女はその中から一枚を店主に渡す。
「ええかい? おおきに……でっこの一枚だけ返品かい?」
「クイーン」
「はい?」
「今日は期限がいいの」
女はフードを脱ぎ、口が裂けそうな笑みを浮かべた。店にいた者は皆がその金色に輝く髪に見覚えがあり驚く。
「お、お、女王陛下!? 声でもしやと思ったら!!」
「ふふふ。さぁ、誰でしょう。答えは……」
見せびらかすようにハートの⑫を一枚。顔に寄せ比較出来るようにし、そしてそのまま店を出るのだった。
*
「……これは残酷な」
「心臓を抜かれてるな」
ある娼婦の部屋に遺体があると言うことで衛兵が寄っていた。エルフの衛兵はエルフ族長の傘下であり。今回の事件の管轄となった。遺体を処理しようと獣人の衛兵が白目を向き口を大きく開けた死体を触る。
「……ここに居た娼婦は?」
「わからない。余所者だったらしい」
「余所者……」
「あら、余所者なんて酷いわ」
「「「!?」」」
3人が声のする方を見るとその容姿に驚き。そして……安堵する。
「女王陛下!? 何故こちらへ!?」
「ん? ふふふ。娼婦をお探しでしたでしょ? 忘れ物取りに来たの。ここに居たのは私」
3人はドキッとする。女王陛下が娼婦として出入りしていたのかと背筋が冷える。知ってはいけない事を知ったのではと。婬魔であるのだからとも衛兵は思ったがあんな真面目そうな婬魔とも思うのだ。そして……何故殺されたのだろうかと衛兵が聞く。
「すいません。女王陛下……何故この者は殺されたのでしょうか? 何か……あったのですが?」
「ん? この物? ああ。そうね。なんもないね」
「?」
衛兵が何故か背筋が冷え出す。そして、彼女は女王陛下とは何か違っているような気がしてゆっくりと剣を抜こうとした時。
ザグゥ!!
衛兵の腹に女王陛下に似た何かの手がつき入れられ破かれて臓物を引き抜かれる。口は押さえられ……引き抜かれた臓物は黒く拳の大きさで脈動し。握り潰されて衛兵はそのまま倒れる。
「な……ぜ……?」
「ん? 理由いる?」
「な……!?」
「女王陛下!! 何故!!」
「何故? さぁ?」
「「!?」」
*
「ルールールー♪」
その女性は死体を並べ。一枚一枚丁寧に買ったトランプを持たせる。ハートの⑫番、[クイーン]を。
「ふふふ。ふふひ」
「ふふふふはははははは!!」
この後、起きるであろう事にワクワクしながら翼を広げる。真っ黒なほんのり根元が紅い翼を部屋に撒く。
血塗れの床に漆黒の抜けた羽根が乗り。女は笑う。視聴者は誰もいないのにまるで見ている物が居ると知っているように独り言を叫ぶ。
「荒唐無稽な血なまぐさい。こけおどしめいた芝居の始まり始まり。どう? こんな演じることないと思った? ふふふ!! ないよ!! だって私は女王陛下じゃないもん」
真っ赤なベットに座り彼女は死体を眺めてクスクス笑う。
「はじめまして[クイーン]です。新人でよくわからない事がありますがよろしくお願いいたします。ここで覚えて帰ってくださいね? 好きなものは……甘いものかなぁ? ははは、でも、なに食べても砂の味しかしないけどね!!」
ペロ
手についた血をなめ。潰した心臓の肉片をつまみ含んで飲み込む。
「よし!! 練習バッチリ!! ふふふ、誰か来ないかなぁ~~誰か来るかなぁ♪」
血塗れの体で足をばたつかせ口が割けるような笑みを浮かべ続ける。そして……
ガチャ!!
「何があった!! なっ!?」
「こんにちは。荒唐無稽な血なまぐさい。こけおどしめいた芝居にようこそ。どう? こんな演じることないと思った? ふふふ!! はじめまして[クイーン]です。新人でよくわからない事がありますがよろしくお願いいたします。ここで覚えて帰ってくださいね? 好きなものは……甘いものかなぁ? ははは、でも、なに食べても砂の味しかしないけどね!!」
首都の一角で恐怖は芽生えたのだった。




