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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1章~始まりは一人の狂人の連れ去り~
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魂の剣の火入れ..


 占い師がトキヤに恋占いを行う。水晶に魔力を注いで女性を写し出す。あまりにも高等魔術に私は疑問が生まれた。「未来予知能力は魔法ではないのでは?」と疑問が浮かぶが首を振る。今は見るべき所が違うのだ。


「これが君が出逢う。恋する女性たち」


「うわーやりやがったよ。全部か?」


「ケケケケ、そうさ、全部。あら………姫様がいる」


「うわぁ………知りたくねぇ。姫様かぁ………緊張したらどうすんだよ。俺が」


「いい顔だねぇ~恥ずかしそうに」


 小さい占い部屋に肖像画のように映された顔たち。私の苦手とする姫様もいる。苦手な理由はちょっと怖いからだ。底知れぬ黒い沼のような女性だ。それよりも私は「私」「彼女」を探す。探すがいないため、残念に思う。すごく残念に思う。胸がキュッと締め付けられて手を強く強く握った。私は本当に運命の相手になりたい。


「たくぅ………グランドマザー。自分で遊んでない?」


 愚痴りながらも頬を染めながら一人一人を丁寧に見ていくトキヤ。男の子だから見てしまうんだなって思う。欠落が少ない記憶に私は「紫蘭」も見つけてしまい。なんとも言えない気持ちも抱いた。この時の事をトキヤは忘れていたのだろう。


「ん……なんだ?」


 しかし、トキヤはある事に気がついた。水晶球に何かが映り込んでいる。ほんの一瞬。金色の髪が靡くのが見える。一個、一個。写し出された女性たちが消えていく。全ての女性の運命が消え去る。


「な、なんだい!? どういう事だい!? 運命が!?」


「…………これ」


 トキヤが水晶球を指を差す。


「何が見えたんだい?」


「わからない。でも、見えた」


「もう一度。占う。何が起こったか確かめてやろう」


 占い師が焦り出す。予想外の事なのだろう。占い師の容姿から考えられない、ずいぶん若い女性の声に聞こえた。そして彼女は水晶球に魔力を流した。


 いつの間にか若々しい姿で能力を使う。トキヤは気付いていない。そしてそこで彼の記憶が一瞬の暗転のち。世界が変わる。彼の目線で記憶を思い出した。


 それは「トキヤが絶対に忘れない」と言う意思なため、記憶なのに鮮明だった。風も感じ、日の暖かさ花の匂いを感じれそうな幻覚だ。太陽が眩しく思えるほど強い幻想。そう、夢の中なのに夢に居るような状態を味わう。


 場所はわからない。丘上に一人の女性が立っている。風に金色の髪を靡かせる背中姿。お腹を擦っていた。


 そして彼女は振り返る。私に似た誰かが振り返る。


 困った表情からパッと明るくなり短い言葉を発した。たった3文字だろう言葉だ。だが、それは聞き取れなかった。「トキヤ」だろうかと思う。


 言葉を発した瞬間はそれはそれは満面の笑みでトキヤを見ている。私には普通の笑顔だった。


 だが、トキヤには全く違う物が見えていた。驚きながら手を伸ばして空を切った。占いの途中。トキヤは夢を見たのだ。


 「彼女」の夢を見たのだ。


「どうしたんだい‼ 何が見えたんだい!!」


「はっ!?」


 トキヤが手を伸ばしていたのを下ろす。周りを見てもあれが幻想だったのがうかがえた。しかし、水晶球にはまだ写っている。綺麗な髪の美少女が見える。


「占い師さん。彼女の名前は? その未来予知ならわかるだろう。今は未来が一つになった。見易い筈だ。教えてくれ。『彼女』は綺麗だった、綺麗な笑みで短い言葉を伝えたのに聞き取れなかった。たった3文字だ。なのにわからなかった。なんであんなに綺麗に微笑むのだろうか? 自分に向かって。自分だけに向かって。3文字だと思う。名前なのか? くそ……わからない」


 トキヤは綺麗だった以上に知りたくなった。「彼女」の笑みと文字に含まれる意味を。


「少し待ちなさい。もう一度、もう一度。占う」


 占い師が占いを再開して、そして顔を驚かせる。若い女性の顔でトキヤが気にせずに待つ。


「未来が変わった?」


「そんな事はどうでもいいから『彼女』を教えて欲しい。知りたい。発した言葉と笑顔の意味を。どうしてあそこまで深い笑みを向けられるのか知りたい」


「未来予知がよく見える。ここまで一本が太いのは珍しい。名前は魔王ネファリウス。偽名はネフィア・ネロリリス。生まれていない。『この世界にはいない』存在だ」


「魔王!? いないって………」


 私は自分の口を押さえる。今、私の名前を呼んだ。確かに呼んだのだ。驚きを隠せない。心臓が燃えるように熱い。早く見たい続きを。うれしい。なぜかすごくうれしい。「彼女」が私に繋がる。


「生まれてない理由は……ああ、彼。魔王は男だな」


「男? どうみても女だったが……」


「そう、男だから生まれてない。そして、このままだと殺されるわね。即位数ヵ月で簒奪が起きる。魔国内は荒れる」


「…………殺されるのか」


「彼の運命は死ぬ定め、これは覆せない。絶対殺される運命。世界が彼を殺そうとする。帝国も魔国でも、未来予知では全てみれない。可能性のみ」


「…………………」


 トキヤが真面目な顔をする。それも、見たことがある顔を。


「いいのかい? その道は………」


「教えて欲しい。アドバイスだ。時間的なものは?」


「数年後絶対の死。だけど、今のあなたじゃ何も出来ないだけは言っておく。運命。諦めなさい」


「十分アドバイスありがとうございます。参考になりました」


「待ちなさい。その道は茨道よ。行くの?」


「………行きます。知りたいですから」


 トキヤの記憶の声が複数回、響き渡る。何度も何処でも口にしたのだろうその言葉を。


「言葉と笑顔の意味を知りたい」


 シーンっと静まる。そして、続けた。


「認めないですから、あんなに綺麗な笑顔ができるのに死の運命なんて認めない。幸せになるべきだ。絶対に」


「その道は険しいわ」


「知ったら戻れない。前を向くしかない。運命だよ、運命の相手だ」


「………………………わかったわ。応援しましょう。その狂った道を」


「俺にとってはいい道になりそうだ」


 そして見終わったあと視界が暗転し、彼の過酷な物語が続く。彼の戦いの物語が。



















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