神斬りの陽大剣
目の前の白い虎に怖じ気づく事なく。ただただ、攻撃を避け。魔法を打ち消し。時間を稼ぐ事だけを行っているトキヤは遠くでの天変地異の激戦に冷や汗をかく。しかし、その汗も熱ですぐに渇き。異様な熱さを感じさせる。対する白虎も流石に気になるようで手を休め激戦を見ていた。
「驚いた。朱雀と同じ炎の使い手だとな」
脅威を感じる雰囲気を感じとったトキヤはふと。あの炎を使えるのではと考える。
「それは俺もおなじ。何故、そこまでの強者が田舎から出てきたのかってな」
「田舎とは小僧、知らぬな修羅の世界を。それと強いとな、色々と歪みが生じるのだよ」
「……俺たちはもう、生かされてる所だな。強いとワガママが通るが上は上を越えていく。下克上とはそっちの言葉か」
「小僧、よく知っているな。だが……させぬぞ」
にらみ合い。ネフィアの激戦は手を止めるほどの物だった。そして、トキヤは動く。勝機を嗅いだのだ。ネフィアを利用しようと考える。
「なにぃ!! 行かせぬ!!」
白虎は動く。巨体をトキヤに当てるように噛み砕こうと口を開く。魔法では決着がつかないことはわかっていたその結果。
「……おっいいね。喰われようか」
トキヤは好機と口の中へ飛び込んだ。結果、砕かれる前に口に入り込み。白虎は驚いたまま飲み込む。
「丸のみされ中身から喰い破ろうとするのか、安直な……それは昔からやってきたやつは全て消え、朱雀さえ無理だった!! 愚かな」
白虎は愚かなと言い過去の猛者たちを思い出す。猛者たちも最後の手で内からの破壊は全て失敗している。胃袋には絶対の自信があった。
「合流しようとして、喰われに来るなぞ。変な動きをするやつだったが……」
白虎の顔面に拳の大きさの石があたる。
ズゴォオオオオン!!
「ぐぅお驚いた!? なんじゃ? なんじゃ?」
白虎は石の投げつけられた方を見ると目が合う。そう、今の今。朱雀をその炎で飲み込んだネフィアが睨んでいた。怒りに浮かんだその表情に白虎は後すざる。過去の退けた強敵。土蜘蛛の主将。鬼へと堕ちた女。そう、般若と言う存在を思い出させるには十分だったのだ。
「……!?」
白虎は知らない。勝つために利用するためならどんなことでもする奴だと。
「……聞こえる?」
「なに!? お主、風の呪術を知っているのか」
「ええ、腹の中にいる人に教えてもらいました」
「……」
白虎は仲間に逃げようと提案する。関わってはいけない物と本能が理解する。元々、玉藻がこれと仲を持っている事が噂で危険視されていた。だが……それは本当の事だと伝えようとし。
「……伝えるわけないわよね。風に声を乗せません」
「くぅ!!」
腹の中のも吐くかと悩み。拒否する。2対1は部が悪い。王配と言い。ここまでの怒りを見せられその連携を考えた時。白虎は一人で逃げようと決め、尻を見せる。
「……問う。剣はあるか?」
「何を!?」
「トキヤ、念じて。さぁ、その時だ」
「出せるの?」
白虎は驚く。腹から声が聞こえたのだ。
「あの剣は私があなたに託した。命じる!! 勇者よ、その邪悪な魔物の腹を切り払え!! その剣は!!」
「何をする気だ!!」
「白虎……お前四神獣とか自慢してたよな。なら、神斬りを見せてやろう」
ズブ!!
白虎は胃に痛みと熱を感じ慌てて吐こうとしたが。痛みで悶える。その痛みは広がり、内から焼け口から焦げ臭い息が漏れる。
「あがああああああああああ!!」
想像を絶する痛みに暴れ腹を痛めつけようと地面にのたうち中を圧殺しようとする。朱雀に耐えた胃袋は耐えれない。ネフィアは笑みを浮かべる。
「……仲間に伝えてやろう。その声を。さぁ話せ」
「ああああああああがああああああががが」
「うん。いい断末魔だ。トキヤ……楽にしてあげて」
そう言い。白虎の体の真ん中から剣閃が180度ほど飛び真っ二つにする。赤い液体白い液体が吹き飛び。焦げた内蔵を見せる。白虎は痙攣し……そのままビクビクと動かなくなる。内蔵の中に赤い灯りが見え。ズブズブと動き。そしてトキヤが出てくる。
「けほけほ。あぁ……ペッ。獣くせぇ」
剣は煙を出しながら触れるものを熱っし、消失させる。持つ手から煙をだし、持ち主さえ焦がし。それを支えに立ち上がったあとトキヤは手を離しベリベリと皮膚を剥ぎ。ボタボタと手に血が滴る。真っ赤に染まった勇者にネフィアは飛んで近づいた。
「最初からしろよ。勇者、その剣はあんたと共にあるんだから」
「……毎回。手のひら焦がして皮膚剥がれてまでは使いたくねぇ。右手の筋肉も皮膚も焦げる。すまん……使うとすげぇ痛いんだ」
「……」
ネフィアはそのまま血塗れの勇者に抱きつく。
「ダメかと思った」
「お前が怒って倒すと思った。汚れてしまったな」
「ええ、トキヤ。行って……私はここで炎を見てる。あと2匹」
ネフィアはトキヤの体を癒し、傷を修復。欠損した部分を創造する。そして離れ、トキヤは血塗れのまま慣れ親しんだ聖剣を再度持ち、手を焦がす。そして、駆け出した。
「わかった。行ってくる」
ネフィアは待つ。そして託す。この世で一番の伴侶であり。陽の女神が選んだ勇者を信じて。




