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追突


「……そうか、わかった。思った以上にこれは大事件だから避難も考えろ」


「死ぬなら故郷で死にます!! 王配殿!! 王配殿残しては行けません!!」


「なら、勝つために剣を持てと伝えろ……狐狩りだ」


「はっ!!」


 小柄ゴブリンが伝令として状況を把握し俺に教えてくれた。都市内への攻撃に一時の混乱は一瞬にして、収まったとの事に安堵する。元々、そういう事が起きるだろうと言うのが分かっていた部分もあったからだと聞く。そして、異常に勇ましい。見た目からは想像つかないほどに頼もしく感じていた。


「トキヤ……これは大事ですね。しかし、本当に女王陛下様々でした」


「ネフィアが居ると言うだけで何かあることは噂以上に周知され。ネフィアの声で我を戻すなんてはや芸当のような状況だな。エリック族長」


「そうですね……エルフ族長の本のおかげですね」


「納得できねぇ……それよりもネフィアがいないが?」


 俺は周りを見渡す。屋根から降りてきていない事を確認し、タナカと言うと狐を介抱しているヨウコ嬢が慌てて俺に駆け寄る。


「王配殿!! 大変じゃ!!」


「何があった?」


「ネフィアがの!! 炎の主を見つけたと言うて飛んで行ってしまったのじゃ!!」


「方角は!!」


「あっちじゃ!!」


「わかった!! エリック任せられるな!!」


「ええ、族長ですゆえ……大将の首を取りに単騎駆け。なんとも見栄えのいい場面でしょうか……あとで状況をお願いいたします」


「……ふぅ。わかった。絶対帰ってくる」


 指差す方角は東南、俺は屋根に上がり走り出す。蹴り飛びながら、すぐさま壁にたどり着き遠くを覗いた。ネフィアの様子を見ると誰か男と相対し、草原が燃え上がり戦場を作り出していた。


 そして、ネフィアに向かって男が火炎を放ちネフィアを焼こうとし。ネフィアは翼でそれを吹き飛ばす。フツフツとネフィアの翼から火の粉が舞い。怒りのように荒々しさを感じた。


「なんだ。女王陛下嫌だといいながら。ああやって民に対しての攻撃に怒る事が出来るじゃん」


 変な所で安心し、俺は俺で耳に手をやり……エリックにネフィアが戦っている旨を伝えようと風の魔法を使った。


「エリック、聞こえるか。ネフィアはネフィアで任せよう……」


「任せるのかえ?」


「!?」


 俺は……その場に危機感を覚え横に飛ぶ。元居た場所には大きな大きな爪の軌跡があり。壁の石材を切り裂く。見えない何かがそこにいるのがわかり。おれは……ふと風の魔法を打ち消す対抗呪文を放った。


「なに!? 魔物!?」


「ふむ。手練れか。ワシの攻撃を避けるとはの……それに見えておるからにお主……風を操ることができるの」


 俺は自分の身長よりも遥かに大きな白い虎と目が合う。風に隠されていたものは魔物だった。いや、人語を話すから英魔族に近い。


「ふむ。怖じ気つかぬか……名を聞こう」


 名を聞きたがるこの変な文化。なんとなくだが、東ノ国を思い出し。故に敵だと言うのがハッキリする。英魔族も最近名乗りが流行っているがこれはハッキリと種族を示すためである。


「……英魔族人族。女王陛下の王配。トキヤ・ネロリリス」


「ふむ。立派な名乗りよ。ワシは四神、白虎。女王陛下の王配と言うてたの。なら、そこで朱雀と戦っている奴の旦那かえ?」


「如何にも……でっそれがなにか?」


「ふむ。手練れな理由は十分じゃ……すまぬが稲荷さまのため。朱雀があやつを押さえているのも邪魔はさせぬよう殺させてもらう」


「……ふぅ。エリック……聞こえるか?」


「残念じゃが。ダメじゃ」


「……しょうがない」


 俺は……腰につけた鹵獲品の刀を引き抜き。戦闘態勢を整える。


「ほう。お主、名前があれじゃと思っておったがそれはやっぱり刀じゃったか」


「ああ。他に何に見える」


「老眼でよく見えなんだ。すまぬのぉ……」


 白虎は俺から距離を取り大きく雄叫びをあげる。その咆哮がビリビリと肌を震わせた。


「行くぞ、大陸の武士よ」


「残念だが。こちらでは騎士と言う!!」


 白虎が風を舞わせ……戦い避けられない。


「ネフィア……にカッコ悪いとこ見せられねぇなぁ。任せた……エリック族長」








「……トキヤ王配が何かあったらしいです」


 エリック族長は仮面つけた状態で腕を組み首を傾げる。衛兵の指示を飛ばすため屋敷の庭で待ち続ける中でヨウコも一緒になって待っていた。


「なんじゃ!? どうしたのじゃ!!」


「報告が途絶えました。声が全く聞こえず何かあったのでしょう」


「そんなのわからんじゃろ」


「誰よりも意思伝達を大切にというお方がそんなことをしないのは変ですから。任された分。頑張りましょう」


「そうじゃの……タナカよ。屋敷の寝ておってええぞ」


「……いえ。大丈夫です」


 そう、言うタナカの尻尾や小さな耳は倒れ。意気消沈しているのがわかっていた。


「大丈夫に見えぬから言うたのじゃ」


「……いえ。本当に大丈夫です。慣れっこですから」


 味方について色々と思う事があるタナカは首を振って笑みを見せる。


「私たちが始めたことです。私が……終わらせなくちゃ」


「……ふふふ。あなたに終わらせる事が出来て? タナカよ」


「「「!?」」」


 3人は離れ、エリックはレイピアを抜き、ヨウコは狐火を構え。タナカは小型の刀を抜いた。目の前に化粧し、東の国の貴族が着ているような服を纏った女性がセンスを見せて現れる。その胸は豊満であり。なんとも妖艶な姿にタナカとエリックはヨウコに似ていると思うのだ。そして背後から二人の男が寄り添うように姿を見せる。


「お前は!! 何故ここに!!」


「タナカよ。そちも始めた事を終わらせにきたのじゃよ。色々とあったじゃろうて。まぁ懐かしいから立ち話もするかの」


 にんまりとした女性はヨウコに扇子を向ける。ヨウコも負けじと……


「ちょっと待つのじゃ」


「なんじゃ……逃げるのかえ? 追いかけろ」


「いや、屋敷に扇子を取りに……はぁ、そんな暇はないじゃろうな。すまんなぁ。扇子ええもん使ってるの。じゃがワシの扇子のがセンスええのぉ」


「……」


 ぴきっと空気が痺れる。ヨウコは飄々としなんとも風に揺らぐ柳のような余裕を見せる。


「ええっと。すまぬが私はヨウコじゃ。お主は稲荷じゃったかえ? こんなケバい化粧する幼狐じゃったっけ?」


「……タマモや。お主に一体何があったかは知らぬが。逃げ惑うお主をわざわざ追ってあげたのじゃ。感謝してほしいのぉ」


 空気がどんどん重くなるがヨウコは何も感じないように軽い気持ちで答える。


「親大将……まどろっこしいのはええのじゃ。本題はなんぞえ?」


「……タマモの確保じゃな。人質はこの都市じゃな。見たじゃろ? あれが1発で終わりなぞ思えんじゃろう?」


「ほう。そうじゃね。じゃが……お前の力じゃなかろう?」


「私の力じゃな」


「……稲荷。今ならわかる。お主は稲荷と言う名前は大層勿体ないのじゃ。悪狐にならぬか? 才能の塊じゃ」


「お主のようにこの国に迷惑かけぬの。今のようにのぉ。そこの御仁。そいつは傾国の呪いがかかっておる。引き渡してもらおうかのぉ」


「……ふふふははははははは!! 持ち場に帰れ……私は大丈夫だ。邪魔になる」


 扇子を向けられたエリックが仮面を脱ぎ。大きく笑いだしてヨウコの前に立つ。衛兵達が見守る中で衛兵に指示を飛ばしたあとに身構え宣言する。


「すいません、ヨウコさんは私の伴侶です。連れ去る姫を護りますよ。私は!!」


「ほう。そうじゃったのか……なら玄武。青竜。やれ」


 扇子を閉じ、隣の男達が細長い蛇のような竜と大きな亀の姿に変え、建物を崩す。だが、その光景にだれ一人、臆する事はなかったのだった。



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