多尾少尾
尻尾を揺らしながら、ヨウコは腕を組み唸る。
「なんじゃ、なんじゃ。殺しに来ただけかとおもったらなんちゅう事に……わからん過ぎて……あれじゃ、あれ。順を追って説明してくれぬか? タナカよ」
「はい。最初は風の噂でした。ある日、大陸から竜が顔を出すときになって以降、我々にここの世界の事が耳に入るようになったのです。その竜の持ってくる物は全て新鮮で我々は金と交換しておりました」
私は思い当たる竜が一匹。温泉大好きの人物を思い出す。大きな施設を作るのにお金何処から出てるんだと思えば交易で利益をあげていたのかと考える。まぁ、正しいかはわからないけども。
「そこでヨウコ嬢の事が記された物語があったのです」
「物語? 私は何も物語を演じるだけじゃから……なんかあったかの?」
「魔王譚です」
「ふ!?」「ぶぅ!?」
私は紅茶を溢し、慌てて拭き取る。私は自分が全く関係ないと思ってのほほんとしていたのだがそうと言えないようだ。
「げほげほ……」(むせたよぅ)
「タナカよ……どういうことじゃ?」
「こういうことです。傾国の悪狐の代名詞である九尾が遠い地で傾国を防がれ、魔王の元で改心し。悪狐ではなくなってしまったと言うのが広まっています」
「元々悪狐だったかなぁ。正直、逃げて来てヒステリック起こしただけでしょう。なーんもない」
「すまぬが悪狐らしくの一つの都市を滅ぼそうとした気がするが……そう軽く言われると変にかんじるのぉ。にしても悪狐と言われればそうじゃと胸をはる」
「ヨウコ様、聞けば逃げてきた狐たちに衣食住と職を与えていると聞いております。個人でも狐の兵をお持ちとも……悪人と言えないでしょう」
「そうじゃが……持っていると言ってもただここの衛兵になってるだけじゃぞ。褒められることはしておらん」
「個人で兵を持つなんて無理よねぇ~ヨウコさん」
「ネフィア、お主。めっちゃ持ってるじゃろ」
「持ってないわよ」
「国家騒動して戦争しとったじゃろうが」
「あれは募集しただけよ。集まっただけ」
「集まっただけであんなに集まらん」
「それです。ヨウコ様」
「あん? なんじゃ?」
話が脱線していたところにタナカが本筋を話し始める。
「悪狐側と善狐側、管狐側は大陸側で活躍、族長の妻であり大陸の覇者のご友人でもある。そして、そんな中で逃げてきた狐をまとめている事がわかってしまい。九尾側を警戒しだしたのです」
「海の先まで警戒することなかろうに……」
「そんな事はないです。影響は大きかったです。悪狐側は新しい長。善狐を倒せる人としてヨウコ様を利用しようと言う動きが。善狐側は今まで迫害して来たヨウコ様の善狐よりも善狐。悪狐でも善になり得るというのが気に入らない事と迫害の復讐の準備をしていると疑心暗鬼になっており、大稲荷の善狐の弱体化に伴い敗北すると考えております」
「……せんぞ復讐なぞ」
「そうでしょう。ですが、善狐は大陸での膨大な影響力を恐れ慌てておりそれどころではないです」
「……そうかぁ……そうじゃったか」
「私から一ついいかしら?」
手を上げてタナカを見たあと。ヨウコを見る。アイコンタクトでどうぞと言われたのでそのまま問う。
「……あなたは悪狐側? 管狐側? 善狐側? そこまで詳しく教えてくれるなんて何処の勢力でなんのためかわからないわ」
そう、敵出ないことはわかるがどの勢力なのかハッキリしない。管狐側と言う傭兵みたいな者だろうかと思い。お金をくれと言われるのだろうかと考える。
「私は元善狐と元管狐側でお金とか色々とスパイなどしていたのですが。それらを止めて多尾側に寝返りました」
「多尾側?」
「新勢力です。悪狐善狐管狐からヨウコ様のように悪狐は善狐になれ、同じ狐である事を信じた勢力です。信念は尻尾の数より狐の数です」
「「……」」
私は眉間に手を当て、タナカを見る。臭うエルフ族長の雰囲気に近いものが。そう、これは宗教に近いものがある。
「その、多尾側の長って……」
「ヨウコ様の下で悪狐、善狐、管狐の3人です。私、タムラ、タグチです」
「知らぬ間に部下出来てるの笑えんのじゃが」
「ヨウコ、私も記憶あるよ。無視ったらヤバイよ」
「ほんで。お主……目的は?」
「あつかましい事ですが、ヨウコ様をお守りに参りました!!」
「……」
ヨウコの何とも言えない顔と冷や汗に私は私で影響力の大きさを感じる。私と関わった結果がヨウコは遠い地で噂の大名となってしまったようだった。




