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悪狐と善狐


 ヨウコは英魔族悪魔族長エリックの伴侶であり。細かな元種族が英魔族獣人族狐人だと思う。が、細かい事情があることを知っていた。


「何から話せばいいやら……まぁワシの過去を話そうかの」


「重要?」


「ちと、重要じゃな……ワシの故郷は東方の海を越えた先の国じゃ。その国でワシは九つの尾を持っていたため迫害されており……ここまで逃げ落ちた訳じゃが。ちと、追手も途絶えておったのじゃが。最近、また顔を見るようになったのじゃ」


 トキヤがそれを聞きながら、要点を話す。


「要はヨウコ嬢は遠い国ではお尋ね者であり。こんな遠くまで始末しに来ていると言うことか?」


「そうじゃの……そうじゃろうかのぉ」


「心当たりは?」


「おおいぞ。ずっと戦って逃げてたからの。それに……不吉な九つの尾を持つ者は亡国の不吉な存在として妬まれ嫌われておる。文化と言えばいいのか。尾の数が多いほど悪狐と言われ。少ないほど善狐といい。少ない奴のが大多数じゃな。4つ以下は善、4つ以上は悪として。9が最大の悪とされておる」


「悪女ですもんね~」


「ふふふ、そうじゃな。否定はせんぞ。嫉妬深いからのぉ~浮気が一切許せんのじゃ。まぁ冗談は置いといての……殺されかねない所まで来ておる。遺言はそうじゃの……言っておこう」


「遺言ねぇ……」


 本当に物騒。死ぬ事もあるのかとも疑う。ヨウコは強い。


「私が死んでも。私の仲間は助けてあげてでしょうか?」


「……仲間?」


「……ヨウコ嬢。まさか……」


「そうじゃ。悪狐と言われて逃げて来た者を匿っておる」


 私はピンっと頭にある発想が生まれる。そうだ……仲間を集めると言う事は。


「少し、私の考えいいかしら?」


「どうぞなのじゃ」


「悪狐、善狐の争いは長い?」


「長い」


「……そして、それは今も続いている訳ですよね。悪狐は反発もあったでしょうか?」


「あったらしいの。いや、今も戦っておるらしいの」


 話を聞き一つ思い付く事が生まれる。こういうのは感情的に大きな大きな溝がある。だからこそ思うことはある。


「復讐はする?」


「ふふふ、興味はないの………もうあそこは祖国ではないのじゃ。もう、独り身でないし、私は英魔族であるのじゃ。祖国はここである。と言うより……一度道を誤っておるし反省しとるよ」


 それを聞き私は胸を撫で下ろす。てっきり殺りに行くのかと思ったのだ。だが、逆に違う不安が生まれる。


「ヨウコ。何故狙われる理由が他に心当たりは?」


「うむぅ。ここまで遠出をして九尾を殺す理由はよくわからんがのぉ。情報ないのじゃ……だがの。確かに狐狩りは行われておるのじゃ」


「……ヨウコ嬢。他に犠牲者がいると?」


「そうじゃの。最初は……よくあるいざこざの類いでの殺人かと思われた。しかし、少しづつ少しづつ。狐だけが消えていくのじゃ。気付いた時にはすでに遅く。都市内に潜み、ゆっくりと消されておる。許せぬが何もできぬまま……犠牲者だけが増えていっているの……はぁ」


「……それで。私を呼んだと。エリックはなんと言ってますか?」


「エリックは影を追ってはいるが中々尻尾を掴めず。他の族長にも注意喚起をしている。援軍は……ちょっと忙しく無理そうなのが本当に時期が悪いと愚痴っておったの」


 そう、今は忙しい時期であり。どこも余力がない。


「……そして?」


「それでお主相談することをな考えたのじゃ……風の噂でな。絶対に寄るであろう場所に……置いておいての。時間がかかっても大丈夫なように」


 まんまとそれを拾い私は誘われた訳だ。だが……まぁ来てよかった。まだ間に合っている。親友は生きている。


「ふぅ、周りくどい。助けてって言いたいならそのまま言えばいいじゃない。親友でしょ」


「うれしいのう……だがのぉ……そうじゃが……影は邪魔をするかも知れぬだろう? ワシなら援軍要請をするなら始末するの」


「ネフィアそうだぞ。すでに自由に動けるほどの状況じゃないみたいだし、ちょっといってくる」


「えっ!? 行くって!?」


 トキヤが席を立ち、フードを被る。


「ネフィア、まず状況はだいたいわかったが。ハッキリした目的がわからないフワフワしていて気味が悪い」


「だからって……行くって何処へ?」


「なぁーに聞きに行くんだよ。情報をな……色々と」


 にやっと悪い笑みを浮かべ扉を開けて店を出ようとするトキヤを追いかける。そそくさと彼について行くと……トキヤの姿は消えていた。風がブワッと舞い。耳を澄ますと町の歓声しか聞こえず。一瞬で消えた彼に私は思い出す。


「トキヤさんはどちらへ行ったのじゃ?」


「……風になった」


「風?」


 私は店に戻りながら。ヨウコを手招きする。


「ヨウコは忘れた? 彼………本業はこれなんだよ。さぁ、折角です。飲み会しましょ」


「そうじゃのぉ。あまり他に犠牲者を思うと居てもたってもおられぬが……」


「まぁ、焦っても何も出来ないでしょ。任せましょ」


 目立つ私は彼にはお荷物だ。だが、今はもっと目立つ女性が目の前にいる。


「なんじゃ? 顔を見て?」


「なんでもない……ねぇ。魔法使えないのは何か理由があるの?」


「そうじゃ。有事じゃからの……ゴブリン砲が吸い溜まれば空に放射しているの」


「そう。有事ね……本当はあなた自身を抑えるためなんかじゃないかと思ったわ」


「……よくわかったの?」


「私も同じ……力を持ちすぎてるからね」


「そうじゃの……そうじゃったの」


 店の奥へ戻り私は複雑な気持ちでため息を吐いた。穴の中に潜く蟻を潰すのに魔物を用意するような物なのだ。使い勝手が悪い。なので私は静かに待つことにするのだった。













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