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魔族旅行者の路宿施設


 私は家にあった軽装の冒険者ようの皮装備をトキヤと同じように着替え、少しの荷物を背負い都市ヘルカイトの発着場まで徒歩で歩き、待っていたワイバーンに挨拶をする。ドラゴンよりも細身であり尻尾が長く。手は翼と同化しており、小さな副翼もついており、速く飛ぶことに特化したような姿である。


 あまりに速そうに見えるがそのとおりで、驚くほど速く。その速さは何故か雷鳴のような轟音と爆発音をもたらすほどである。エルダードラゴンと戦えるほどに強いワイバーンであり、私の知る野良ワイバーンとは違ったワイバーンの変異種と思う。おかげであの天災嵐竜を倒せたのだからドラゴンとも言っても間違いではないが………


「……デラスティだったのか。ネフィアが捕まえたドラゴン」


「ワイバーンだよぉ。トキヤ」


 ドラゴンの姿にはちょっと思えない。そう、軽そうなのだ。


「トキヤ兄さん。ワイバーンです」


「ドラゴンもワイバーンも先祖は一緒だ」


「それ言ったらさぁ~トキヤと私たちも同じでしょ……たぶん」


「……トキヤ兄さん。今日はピリピリせずにのんびりしてるね。仕事じゃないんだね」


「わかるか。まぁ、長期休暇だよ。でっ……括って運んでくれるんだろ? 音を越えるなよ。俺達死ぬから」


「音以下で飛ぶよ」


 音を越えるというのは音の速度を超えると言うことらしい。ワイバーンが……と思うだろうがワイバーンはドラゴン並みではないが硬い鱗を持っているので大丈夫なのだろう。あと、熱いらしい。彼にしかわからない世界だ。


「今日からお願いしますね。デラスティ」


「はい、速く括って。落ちないように気を付けてね」


「背中は乗らないのか?」


「背中に乗せるより腹に括った方が飛びやすいんだよ」


「ふーん」


 私たちはデラスティのお腹に体を括ってくっ付ける。そのままトキヤにくっついてスリスリし、発着場の石畳に上り。衛兵の合図で離陸する。ぶつからないように誘導員の指示で都市の空を飛び立つ。


「結構、寒いから気をつけて」


「そっか、そろそろ冬だもんね」


「いや、空と風で……まだ暖かいよ」


「いや。デラスティ……向こうはもう雪が降ってるかも知れないぞ」


「そうなの? シロップ買ってないや」


「ジャム買いましょう。うまいでしょう」


「雪を喰うなよ。腹………壊さないだろうなぁ」


 クスクスと私たちは笑いながら。空の旅を始めるのだ。





 速かった。とにかく速かった。私が飛んでいたときはまぁそれなりに速いと自負していたのだが。本業の速さには敵わないことに気付いた。そして、予想よりも速い旅の行程の合間に野宿を挟もうと考えたがデラスティがさらに速度を上げて道途中にある小さな旅宿に到着する。簡易な丸太の杭で壁を作り、簡素な木板の建物郡が見えそのままその近くに降りる。


 道の途中にこういった宿が出来ているのに驚き。聞けば最近国内の至るところにあると言う。冒険者も楽になったものだとつくづく思う。


「えっと。小さい小屋借りたよ。最近こういう場所多くて旅行者も多いんだー」


 そういい、慣れているデラスティに小屋の場所を教えてもらいついていく。数字の小屋の中に入るとそれはもう。ただの大きい木の箱だった。雨風しのげるだけであり。寝袋は持参などなど本当に簡素な作りだった。野宿よりマシと言ったところだ。


「本当はもっと良いところ取ればいいんだけど。あれ以上速いと……ねぇ。お姉さんたち耐えられないと思う」


 そう、速いと耐えられない。しかし、野宿よりマシなので私は別に気にしなくてもいいのではと思い首をかしげた。


「ネフィア姉ちゃん女王陛下でしょ……こんな牢屋みたいな場所はと……思ったの。女性だし」


「ネフィアの事は気にするな。慣れっこだ」


「それもそれで複雑ですね。トキヤさん」


 私たちはそそくさと荷物を下ろし、寝袋をひいて携帯食料をつまみ。そのまま座談をする。


「にしてもあの速さなら都市で暴れてすぐ逃げられるね。デラスティ」


「ネフィア姉ちゃん。そういうのを追いかけて捕まえるのが僕の仕事でもあるよ」


「あんなに速いと逃げられねぇわなぁ……ネフィア気を付けような」


「私が行う前提で話すのやめてよう。トキヤもするでしょ」


「俺はバレずに仕留めるからなぁ……」


 トキヤがナイフを持って眺める。確かにトキヤならばそうだろうなと私は思いながらデラスティを見つめる。そういえば……


「そういえば……ボルケーノとはどこまでいったの? しっかりとドラゴンとワイバーンの交雑種出来る?」


「ネフィア……」


「ネフィア姉ちゃん!?」


「ん? お姉さんに教えて」


「ネフィア。俺はそれを聞くのは酷だと思うぞ。もう相手は歳だ」


「それ言ったら炎弾撃ってくるね。居ないから聞けるのよ」


「………えっと。この前に一回」


「「!?」」


 私はキタキタと思い、トキヤは頭を押さえる。


「別に言わなくてよかったのにな」


「いや、だって!! 僕は大人だから……出来るんだ!!」


 少年が真っ赤になりながら大人だと言う姿は子供っぽい。だが、これがボルケーノは好きなのだろう。歪んでる趣味だ。


「まぁ、大人なのは知っている。だがなそういうのは人に言うべきではない」


「エルフ族長」


「ネフィア。黙ろう。そいつの名前は出しちゃいけない……それよりも水はどうしてるんだ?」


「小型の井戸あるよ。複数、外にね。でも濾過しないと飲めた物じゃない場合もあって気を付けないといけない。まだまだしっかりした設備じゃないんだよね」


「なら、魔法で空気を絞って出すか……」


「その方がいいね。トキヤ兄さん」


 そう言って鍋に水を出し、持ってきたコーヒー豆を挽いた物をいれて煮込む。そのあとコップを3つ用意し沸騰しすぎないように調整したコーヒーを茶漉しのような物をコップにのせて注ぐ。香りが部屋に満ちて落ち着く。


「よし、できた」


 残りかすはそのままトキヤはゴミにし、デラスティに手渡し、それにデラスティは渋い顔をする。


「苦いと思うが疲れた体にいい。我慢して飲め。ほんのちょっとは良薬だ」


「うぅ。わかってるよぉ。でもそのまま飲むの慣れない」


「ネフィアも飲むだろ?」


「のむぅ」


「最近、本当に豆の栽培多くて助かる」


「トキヤ本当に好きだね」


「大人になったらわかる。飲み過ぎはいけないがな」


「私を子供扱いすな」


 私は私でトキヤに淹れてもらった物をすっと我慢して飲みほし。苦いというが仄かに後が甘く感じた。デラスティは舌を出してうえぇと言うがしっかりと飲み干している。


「はぁ、美味しいなぁ」


「わかんないなぁ」「僕は子供だなぁ」


 二人でトキヤがゆっくりと匂いを嗅ぎながら味わうのを不思議な表情で見つめ、そしてそのまま床に入るのだった。










 

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