都市ヘルカイトのユグドラシルを護る土竜
頼んだ釜飯とハーピーの卵を割り醤油をかけて混ぜこんだご飯を食べつつトキヤに私は燃やした手紙について教える。テーブルの上で納豆を混ぜてるトキヤは怪訝顔をしたまま箸を巧みの使っていく。
ユブネがわざわざ降りて私を個室に招いたのはそういう事だったのだろう。手紙を絶対に手渡すために。予想されていたのだ湯に入りに来ることも。逆にそんな周りくどい事をする理由は……よくわからないがとにかく何かがある。
「ネフィア……都市オペラハウスへ急行したいと言ってたが何があったのかわかるのか?」
「わからない。手紙の文面にはただ話したい事がある旨ともし、会えない場合は遺言を探して欲しいと言う旨が書かれてた。遺言なんてちょっと物騒じゃない?」
「……そうだな」ネリネリ
「トキヤ聞いてる?」
「……聞いてる」ネリネリ
「……ねったら私にもちょうだい」
「ほれ」
トキヤに納豆の入っている器を借りそのまま伸ばして啜るように食べる。苦味と甘味。醤油の風味が広がりそのまま卵ご飯をほうばる。
「まぁ、ここから行くとして……どれだけかかるかな、トキヤ」
「一月だろうか……飛んでいけば15日以下か?」
「前回はそのぐらいだったような気がする。でも手紙の状況からもうそれ以上に時間をかけるのは嫌かも」
「しかし、お前が俺を抱えて……」
「……」
私は箸を置き、トキヤも置く。そして二人で指を差して思い出したらかのように言う。
「「ワンがいる!!」」
そう、元ペットのエルダードラゴンの犬がここに居るのだ。会いに行こうと決めご飯を腹につめて急いで個室を抜けるのだった。
*
入ることの出来ない禁止地区。ユグドラシルの木の麓に私は浴衣のまま顔を出す。トキヤは先に帰っており旅の支度を慌てて行ってくれていた。ユグドラシルの近くに小さな犬小屋が出来ており、ワンちゃんと書かれた標識がある。扉に外出中と札がかけられており私はうーむと唸る。
「いないのか……」
「ワン!?」
ガサガサガサガサ、バサァ、ビダアアアアアアン!!
上の方で木がおれ、ボロボロと枝が落ち、勢いよく竜が落ちてくる。モフモフした手入れの行き届いた毛並みの犬のような竜が転げ、そのままスタッとお座りして舌を出す。
「ハァハァハァ!! ごしゅじん!!」
「ワンちゃんお久しぶり!! あとごしゅじんじゃないよ? 売り飛ばしたからね」
「くぅん……」
頭がをそのまま落としショックを受けているのがわか
る。私はクスクス笑いながも周りを見た。
「ユグドラシルちゃんは?」
「上に……」
ポトッ
ワンちゃんの頭にポトッっとユグドラシルが落ち、そのままワンちゃんの背中を滑り台にして降りてくる。緑のドリアードはそのままトコトコと私の元へ来た。
「ふぁああ。木の上で昼寝してたんです。地震も噴火もなくて、魔物も攻めてこず暇なんですよ」
「平和でいいじゃない。私は今から物騒な匂いに誘われて向かうからね」
「向かう……もしかして。ワンちゃんを連れ去るのですか!? ネフィア姉ちゃん!? くっ……私はあなたに勝てるかわかりませんがここは私に分が」
パク
ユグドラシルがワンちゃんに食べられる。モゴモゴと口を含みペッと吐き出しユグドラシルが転がす。ユグドラシルは立ち上がり、そのまま蔦にバケツを持ってこさせて唾液をそのまま被って洗い流す。一連の
「ごしゅじん。何があったのですか?」
「あった。都市オペラハウスに向かいたいの。私が飛ぶよりも速いしワンちゃんの力を借りようかと……」
「やだぁ!! 私はここ動けないのにワンちゃんだけいくのはやだぁああ」
「「……」」
「お留守番もうやだぁ!! 待ってる間、私は動けないのが悲しくて悲しくて……」
「ああ、ユグドラシル……泣いちゃいかん。もう大人だろ」
ユグドラシルがポロポロ泣き出すのをワンちゃんがなめとる。ユグドラシルがそのままワンちゅんの毛に抱きつき嫌々と顔を擦る。
「まぁドリアードは根づいたらそのままだから大変ね」
「うぅ……私も色んな所へ行きたい」
ドリアードの種族は一生その場所で生きないといけないと思うと中々、大変だと思いつつ。確かに寂しいよねと考え……他の手にしようかと諦める事にした。可哀想だ。
「ごめんね。やっぱりいいよ。他を考える」
「そうですか……まぁユグドラシルを置いていくのは不安ですので……すいません。ごしゅじん」
「いいえ、売ってごめんね。ワンちゃん」
「いえいえ、気にしてませんよ。必要な事だったのでしょうから。それよりもごしゅじん。足が欲しいのであれば冒険者ギルドや暇をしている金竜銀竜など色々と雇えると思います」
「わかった。探してお願いしてみる」
「……ネフィア姉ちゃんいいの?」
「大丈夫。ユグドラシルちゃん」
本当にまだ幼い気がするのでワンちゃんが必要なのだろう。
「……金竜銀竜……冒険してていない」
「あぁ。わかった。冒険者ギルド行ってみるね。またねワンちゃん。ユグドラシルちゃん」
「うん!!」
「では、旅のご無事を」
私はワンちゃんが頭を差し出すので優しく撫でる。そしてそのまま別れをいい。去ろうとした時、ユグドラシルちゃんに服を掴まれ囁いて相談があると言う。私は耳を寄せてこそこそと聞くと。
「……淫魔の体液欲しいです」
「ぶぅ!?」
「強い精力剤なんですよね?」
私は落ち着かせて優しく聞き返す。
「何に使うのかな?」
「ワンちゃんの餌に盛ろうと思います」
「……」
振り向き尻尾を振る大きな竜に小さな体のユグドラシルを見る。
「……一応、ダメです」
「どうして?」
「……私のこう……あれをトキヤ以外にはちょっと……」
「私はいっぱい飲まれてるよ?」
ユグドラ汁ね。
「あのね、あなたと価値観が違って恥ずかしい。それに薬に頼らなくてもあなたの母はオークと交わったわ。大丈夫、あなたの母も頑張った。頑張りなさい」
「……はい」
ユグドラシルはちょっと残念そうにし、私は胸を撫で下ろす。そして淫魔らしく、淫らな助言を出来たことに満足する自分がいた。やっぱり淫らな種族なのだと再認識するのだった。




