都市ヘルカイトの温泉街②
トキヤとユブネの後ろを歩いてついていく。ついていく先で旅館のような場所で手慣れた仕草で店員と話を始める。店員も浴衣を着ており。ダークエルフ族の女性は胸をはだけ谷間を見せていた。トキヤの目を見るが……視線はしっかり顔を見ており、私は突きだそうとした指をおさめた。よろしい。
「では、個室ご用意しました。鍵はこれをご用意致しましたのでこれでお入りください。くれぐれも空を飛ぶ、扉から出ないでください。罰金、衛兵に突きだしますのでご注意ください」
ダークエルフの女性から鍵を借りる。鍵は大きな木の札で溝が掘ってあるだけの簡易な鍵だった。もちろん檜の香りがする。
「おう。ネフィア。気を付けろよ」
「権力でもみ消す」ゴンッ!!
トキヤが握り拳を作りそのまま頭部に痛みを感じ、しゃがんだ。クスクスと周りが笑い私はトキヤを睨む。
「痛い……冗談じゃん」
「お前の冗談は事件が起きる。わかるか? 上に立つものの義務放棄は民草に迷惑かかるんだぞ? もう一般人じゃない。魔王と言う自覚を……」
「まぁまぁ、トキヤ殿。女王陛下もお疲れなのです。堅苦しいことは脇においておき……ご公務お勤めの疲れをお流して休みましょう。では、このユブネ。仕事に戻ります。何故……騒ぎはご遠慮ください」
「わかった。ありがとうユブネさん」
「ユブネ、ありがとうな」
「はい、トキヤ殿もおくつろぎください」
ユブネはそのまま湯宿を後にし、私は頭を押さえたまま館内地図を見て判断し向かう。中々広いが個室は数えるぐらいしかなく。高級個室宿と言うのが伺える。権力者用隔離施設と言えば聞こえは悪いがそんな気もする。
カチャ
トキヤが個室の鍵を開けて入り、私たちは箪笥とふすまのある部屋に入る。ふすまの区切られた広い部屋には畳もあり。驚く事に押し入れも存在し、中を見ると大小様々な布団が用意されていた。色んな種族が泊まれる配慮がなされており。色々と探ってみる。トキヤは畳に座り様子を伺っていた。
「ネフィア……子供みたいにはしゃぐなよ」
「だって……すごいよ!? 英魔と違った文化だよこれ!! 懐かしいよ!?」
「懐かしいが……まぁ懐かしいかな? いや、お前……生まれは内陸部だろ。懐かしいとか変だぞ」
「そうだけども……あっこれまるで将棋みたいだね」
テーブルの上に温泉饅頭とお茶が出されておりその横に将棋があった。私は駒を取り裏を見るとしっかりと裏面にも文字が書かれていたのだ。
「いや……将棋だろ。将棋だな……ルールわかるのか? 英魔は?」
「さぁ……ただのアンティークかもね。じゃぁ入ろうか」
色々見て満足した私はそのまま脱衣場にトキヤを引っ張って向かい。二人でスルスルと浴衣を脱いだ。トキヤの体は至るところ傷がついておりこれが戦って来た男の体なのだといつも感じさせられる。
黙って彼の背中の傷をさすり、そのままゆっくりと後ろから抱き締める。
「ネフィア……入るから邪魔」
「ごめん……でも……この背中すきなんです」
「3分だけな」
「はい」
私はそのまま、彼を抱き締め続け。3分後、彼はクルッと体を向けて私の顎を掴み、私は目を閉じて静かに唇を奪われるのを待つのだった。
*
風呂あがり、水を飲んだあとに畳に横になっているトキヤの背中に跨ぐ。
「おも」
「重くない!!」
「ぐぇえしぬぅ」
「重くない!!」
「……」
トキヤが舌を出した演技に私は頬をつねる。
「いたたた……でも重い」
「むぅ、女の子に重いはダメよ」
「いや、本当にお前は他の子よりもおおおおおおおおおぉお!?」
私は彼の背中に指をねじ込む。グリグリと爪を押し付ける。
「あだだだだ。いや、だって……疲れた」
「むぅ」
私は私で元気になってしまっている。いけない事とは知りつつもついつい吸ってしまうのだ。精気を。
「マッサージしてあげよっか」
「じゃぁ頼もうかなぁ」
「はーい」
私は浴衣の上から手で彼を揉む。硬い皮膚に硬い筋肉を揉むとドキドキし、こんなのに無茶苦茶される事を想像してしまいそうになって首を振る。
「……すぅ」
マッサージをしていくとトキヤの寝息が聞こえ、大きく溜め息を吐いた。エッチな想像した私自身を悔い、そのまま机に置かれているメニュー表を持って個室を抜けようと考える。
抜ける前に私はトキヤの顔に近づく。そして……ほんのちょっと起こさないようにキスをし、そのまま個室を後にした。
「さぁ、何を頼もうかなぁ」
メニューにはご飯の内容が書き込まれており。私の胃袋を刺激する。
ヒラッ……
「ん、何か落ちた………」
私はメニューの隙間から手紙のような物が落ちそれを拾いあげて宛先の狐の英魔族ヨウコと言う文字を見たあと。手紙を破き内容を読みそのまま握りしめて灰にする。そして……静かに何もなかったように注文をしに動き出すのだった。




