都市ヘルカイトの温泉街①
私とトキヤはあるものを持っている。そう、それは黄金に輝いた金色のプレート。掘られた名前は私とトキヤの名前である。なんとトキヤの名前は東方の名前が書かれておりこれの制作者の知識人ぶりが伺える。そうこれは温泉街のフリーパス入場券なのである。
昔に温泉を掘り当てた時の功績でいただいたのだ。あのときは都市ヘルカイトのマグマをぶっかけると言う悪行を行ったが時効である。
「ネフィア、箪笥から物を取り出して掲げる理由はなんだ?」
「あったことを教えるため」
「いちいち下着もタオルも掲げるな」
「だって!! 楽しくない?」
「温泉行くだけだろ」
「温泉行くだけよ!!」
「お、おう」
「トキヤこそ!! その"ゆ"マークのパンツ持ってるじゃん!!」
「いや、たまたま」
「本当に?」
「本当に」
「お風呂すきじゃない?」
「温泉はまぁうん。普通かな……」
「本当に?」
「しつこいなぁ。好きと言わせたいのか?」
「……うん」
「まぁ絶対、言わないがな」
頑なに言わないトキヤにまぁ……いっかと諦めた。
*
都市ヘルカイトの温泉街は都市ヘルカイトから離れた場所にあり新たな砦のような小さな町ほどの壁に囲まれて居る。屋台などが立ち並び。足湯など特有のゆで卵の匂いと湯気が立ち上ぼり。多くの多種多様の種族が浴衣を着て行き交っていた。大小様々な温泉が用意されているとのことで大きな大きな看板の地図があり、砂ぼこりが起きないように石が敷き詰められており非常に歩きやすい。
私は看板を見上げてどこ行こうかと話をトキヤに話を振る。なお、売春宿については触れない。
「どこ行く?」
「露天風呂好きだから、一番奥の壁上の風呂がいいな」
「わかったよぉ……好きじゃん。ふふふ」
「………普通だよ」
トキヤは黙るが拘りの部分で好きがあるのだろう。まぁ普通に好きなので普通と言い張るのだろう。
「それよりもネフィア。移動しよう。お前は目立ってしょうがない。周りの視線を感じる」
「声をかけないだけマシと思うよ」
視線は外へ出れば自然と集まる物だと思う。だが、それよりも気になる事があった。上から大きな影がどんどん大きくなり、私たちは上を見上げた。目線の先には一匹の竜がおりてくのだ。慌てて離れた先で龍が着地する。
ヒュウウウウン!! ザザザ!!
突風が英魔を吹き飛ばし。周りの視線を集めた。私は地面を踏みしめて大きく振りかぶる。
「ようこそ!! 我が温泉街へ!! 女王へい……」
パッコーン!!
「ナイスショット。ネフィア」
私は持ってきていた私物の木の桶をオーバースローで投げその降りてきた竜の頭にぶつける。大きな頭を仰け反らせ押さえる竜に私は怒鳴った。
「ビックリしたじゃない!! 都市内での飛行は迷惑でしょうが!! ユブネさん!!」
「いや、ネフィア。指定場所以外おりるの禁止だぞ。まぁ、衛兵以外はな。おいユブネ気をつけろ」
そう、ユブネ。変な名前だが。彼はユブネと言う名前の竜であり。温泉をこよなく愛するド変人である。そして、周りの英魔族はそのまま私たちと距離を取った。視線を寄越すが距離は離れて伺っている。
「いやぁすいませんでした。ご迷惑おかけしますが!! やはり女王陛下が来ていると言うことで。ご案内をさせてください」
「……自由に回ります」
「いえいえ、女王陛下。女王陛下であるのですから責任者である私が新しくなった温泉街を紹介して……」
「一緒に入るの? 私ゆっくり入りたい」
「ご好意。すまないが……風呂とはゆっくりと浸るのも良いものだろう」
「…………ぐぅの根も出ない真理でございます。そうですね。その通りでございます。そう、入るときは疲れを癒すのもあり。ゆっくり浸るのもまた温泉の楽しみかたの一つですね。大きな大きな大浴場もありますが個室もあり。全てのニーズを考えるとそれもまた。ですが……大浴場に女王陛下がとなると……周りを見ていただければわかりますが混乱も生まれてしまいます。他の方々がゆっくりできません」
竜の姿から人の姿へと変わったユブネが持ってきていた下着と浴衣を早着替えを行い。腕を組む。
「一応ですが個室をご用意しますので、すいませんがお願いします」
私は深く溜め息を吐く。周りを見回して頷き。彼の言う個室への案内をお願いした。
「ありがとうございます。では、ご案内します」
「わかったわ。ヨロシク」
私は吹き飛び、ぶっ壊れた桶を掴み。彼についていく。背中には大きな文字で"湯愛!!"と書かれておりトキヤが指を指した。
「あれ、欲しいな」
「ええ、ダサいよ……」
私は首を振る。
「そうかぁ? ユブネ、売ってない? それ?」
「売ってます売ってます!! では先に見てみましょう!!」
そのままついていくと浴衣を売っている店に到着し、色んな言葉が背中に書かれて居る。なお、漢字など異国の言葉で書かれたそれが読めるのは一部だけだろう。店は木で建てられており。非常に異国の風情がある店で懐かしさを覚えた。寂しい内装だが、それがまた味があるのである。奥には何故か畳が敷き詰められた大広間がありくつろぐ英魔が浴衣だけを着て肌をさらけていた。
「愛とか、屑野郎とかある……」
店を見ながらトキヤが指差す。確かにある。変な文字も……竜の絵もあるし。驚くのは太陽女王や英魔女王陛下と言う文字もあって少し引く。私の簡略絵もある。破廉恥の姉、エメリアの絵は下着姿である。破廉恥。
「女王陛下読めるのですか!? 流石、学をお持ちで」
「ええ、嗜み程度ですわ。ほほほ」
「ネフィアはずるしてるからな……」
ズルではない。しかし、異国の文化を知っている事は確かである。便利な物が多かった。考えてみれば言葉は近いものが使われている事に気がつく。
「ネフィア、どうした?」
「あっ……いえ。少し引っ掛かりを覚えて」
「ふーん。俺!! これにするわ!!」
トキヤが赤い浴衣を持ってくる。背中には赤鬼と黒く書かれており物々しい。
「なんでぇそれぇ~」
「お前がなんと言おうと俺はこれを買う!!」
トキヤは何故か異常に赤が好きなのは知っているが……ドが過ぎている気がする。何故だろう、本当に何故だろうか?
「ネフィアお前は何を買うんだ?」
「葵染めの婬魔って書かれてるやつ」
「婬魔……」
すでに侮蔑の意味でもないのだろう。普通に飾られていた。
「たまに言わないと忘れるからね」
そういい、私たちは2着を買い。ユブネに連れられて温泉付き個室のお店に案内してくれるのだった。




