王子達との別れ
都市アクアマリンでマグロの解体から切り身、大トロ、カマ、アカミ、中落ちを買い付け。中落ちを包丁で細かくしネギを混ぜて砕いた物などで海の恵みを堪能した次の日の早朝。
都市の門の下でアクアマリンの王子と別れの挨拶をする。私たちはそのまま北へ。アクアマリン王子はそのまま帝国へ向かう予定だ。スズメメさんは鍛冶屋で作って貰うより売っていた槍を買うこと選んだそうで私が魔方陣を彫って加護もつけてあげたのだ。
「……では、王子。エルフ族長にしっかりと親書を見せて保護を受けてくださいね。スズメメさん、これも何かの縁です。冒険者として彼をしっかりと英国に送ってくださいね。重役であるのですが護衛なしの忍びでの旅です。頼れるのはあなただけです」
「わかりました」「女王陛下かしこまりました」
私は頷き、彼らに注意をする。
「スズメメさん。帝国は敵国であったこと。多くの者を殺した事で英魔を恨む者の多いと思います。目立った姿なので気をつけてください」
「はい」
「あと、冒険者ギルドカードが唯一あなたを護る物ですので窃盗など気をつけてください。帝国の冒険者ギルドは大きくそこを拠点とすることで治安もいい場所です。そこから色々と手を伸ばすといいでしょう」
「はい、女王様」
「それと、黒騎士には気を付けてください。英魔は帝国の中では無視を決める事を知っているので声をかけられたらしっかりと抵抗しないでください。話はわかる人です」
「そうなんですね……王配のような方が多いのでしょうか?」
「ダークエルフ族長の衛兵団みたいな物です。それから、飛んでいくのはオススメしません。魔国では発着場などあるのですが、帝国などにはないです。誘導員もおらず、魔物として落とされても文句は言えません。ですから、飛んで行く場合は途中で降りて門から入ることをオススメします」
「忠告ありがとうございます」
「あとですね。旅ですので忘れ物が再度ないかを確認して……」
「ネフィア……」
「トキヤ、何? 話の途中」
「スズメメさんは冒険者ギルドカード持っている立派な冒険者であるから大丈夫だ。そんなにいちから話すことはない」
「しかしなぁ……じゃぁ最後に!!」
「ネフィア!! 大丈夫だからもう行かせてやれ。困ってるぞ」
「そ、そう?」
「そうそう、最近ネフィア。俺にもうるさいよな。あれは大丈夫かとか。ハンカチ持ったかを2回3回聞いたり」
「……」
「お前は母親じゃないだろ……」
「うーん。はい、ごめんなさい。そうですね……心配しすぎも変ですね」
私は自覚せず口うるさい時がたまにあるようでそれに怒られるてしゅんとする。するとスズメメさんがそんな私にフォローをいれてくれる。
「ネフィア女王陛下は英魔昆虫族の母上ですよ。私たちは女王陛下によって英魔の地位を得たのですから間違いではないです」
「わぁ、いっぱい子供いるねそうだと」
「ネフィアマァマァ~」
「へへ、よーしよし~」
私はスズメメの抱き締めて頭を撫でる。唐突に変な空気に男性陣が苦笑いをしていた。
「クンカ王子、陽の加護がありますように」
「ええ、王配殿も陽の加護がありますように」
私は思った以上にスズメメの首の白いマフラーみたいなのを触り続けたのだった。触りごごちがすごく良かった。
*
都市アクアマリンから私は王子たちと旅の無事を祈り合いながら別れた。私は都市の外で翼を広げてトキヤを掴み飛び立つ。白い城、青い屋根に私は別れを告げてそのまま北へ向かう。
「トキヤ、話は上手くいった?」
「いった、無理難題は吹っ掛けて来なかったからな。折半案がすぐに通った。アクアマリンの王はまぁそういうのは上手いのだろう。戦争では役にたたないだろうが、平時では名君かもな」
「……ほう」
「だけど、お前の方が凄いぞ」
「えっ!? 本当に!?」
トキヤが褒めてくれる。やったーと思い笑いかける。
「うれしい!!」
「そうそう、何もしないから楽」
「うれしい!!」
「皮肉をそのまま受け取るな」
「いや、それを言ったら今の状況がそうでしょう」
「……俺らいる?」
「英魔にはいらない。族長にはいる」
「おっ、全てではないのか」
「うーん。考えると族長達の間を持つのが仕事な雰囲気。絶対喧嘩する」
「すでに荒れてるぞ。まぁ手は出てないが……色々と決めごとで。揉める」
「知らない所でお疲れ様」
「おう……まぁでも。そういう物だから仕方ない。それよりも次の都市から都市ヘルカイトへ行くんだよな?」
「うん、次の都市はまぁ何処だっけ?」
私は名前が思い出せずに聞くとトキヤは答えてくれる。
「都市フィールドランド。珍しい壁もない都市だよ」
「ああ、農地の広がった大地の……あと火山で焦げた大地もあったよね」
「そうだな……」
トキヤは遠い目をし、その都市の方角を指差す。私も少し、あの人に関して思う事があったが何も言わず。それからは何も喋らず。空を飛び続ける。
「ネフィア……もしも、今のお前なら……いや、いい」
「なーにトキヤ。聞きたい」
「もしも、今のネフィアなら。アイツはあんなことしなかったのかな?」
「……」
アイツとは……トキヤが殺めた人の事だろうか?
「わからない。それに過ぎたことは……」
「ああ、そうだな。過ぎたことだ」
少し、今日の空の風は肌を突き刺すようなそんな気がするのだった。




