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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1章~始まりは一人の狂人の連れ去り~
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新たな縁と起きない人..


 ワイバーンに連れられ夜中。森の中に輝く篝火の元へゆっくり羽ばたきながら降りる。


 降りた先には長く赤い紅い髪の大人の女性が立っていた。スラッとした肢体に鋭い瞳。額には何かの宝石みたいなのが埋め込まれている。


「お帰り、デラスティ。見つけた? 彼女がそう?」


「うん!! 見つけた!! それより竜姉!! 重傷者が!!」


「わかった。早く家に」


「うん!! ネフィ姉ぇもついて来て!!」


「はい!!」


 そこからトキヤを担いだまま数分歩き。ついた場所は一軒の小さな木の家だった。魔物から守る城壁もなにもない。ただただ普通の家だ。


「小さい家だが。さぁ先に入れ」


「は、はい。でも彼は」


「矢を抜かないといけないだろ? マンドラゴラの塗り薬と魔法で何とか塞ぐ」


「わ、わたしも手伝います‼ ヒールぐらいなら‼」


「わかった。じゃぁ抜いたら私と一緒に唱える。いいな?」


「僕が矢をぬくよ‼ 姉ちゃんたち!!」


 デラスティが人の姿に戻り、彼の刺さった太い矢の先を折る。そして返しがなくなった矢を一瞬で引き抜いた。鮮血が飛び、急いで傷口を塞ぐように魔力を流し唱えた。竜姉と言われていた女性はマンドラゴラの塗り薬と言う薬に魔力を流し傷口に塗ると塗り薬が傷口にくっつき塞がる。私もそこへ、ありったけの魔力を注いだ。


「すごい………はぁはぁ。傷口がなくなった……」


「デラスティ!! 寝室に運び、服を全て脱がせ」


「わかった!!」


 自分は膝をつき両手を地面につける。体が重い。


「バカね、体力分も全部注いだな。傷が塞がるだけで良かったのに。だが、そのお陰で早く塞がったな」


「す、すいません、加減わからないんです。彼は大丈夫なのでしょうか?」


「後は根気だ。運が良ければだがな。さぁ家に入れ」


 私はふらつく体で立ち上がり、頭を下げる。


「ありがとうございます」


「お礼ならデラスティにいいな。私はあまり関わりたくないので」


「………はい」


 私は彼女の背中を追いかけて家に入った。木材の家であり。木の香りが部屋に満ちている。


「竜姉!! 体温が低い!! 血を流しすぎたんだ!!」


「デラスティ、トキヤの体温が低いの?」


「うん!! 危ない!! 体が動かなくなるし‼ 新陳代謝も低くなる‼」


「あなたが添い寝してあげな。人肌で暖めるんだ。簡単だろ」


「どこ、ですか? 彼は」


「あっちの部屋に!!」


「わかりました」


 部屋はすぐそこ。すぐに向かい、向かった先では横になって寝ている彼が見え、顔色はよくないが息も鼓動もあることに一時は安心する。


 しかし、まだ。危ないことには変わりがない。私は服を脱ぎ、躊躇せずに布団に入る。肌が触れあうとわかる体の冷たさに驚いた。恥ずかしさなんて今はない、助ける絶対と決めて抱きつく。


「トキヤ………ごめんね。何も出来なくて」


 冷たい彼の体に触れて暖め続けた。部屋の外から耳に声が届く。私は回復した魔力で盗み聞く。


「お姉さん。一緒に寝るみたい」


「そう………デラスティの言う通り恋仲なのね」


「うん!! それは仲のいい二人だよ‼」


「どうしましょう。ベット一つだけになったから。む、むかしと同じ。い、一緒に寝る?」


「ごめん竜姉、僕はもう大人だよ。恥ずかしいし。なので都市に行くよ。朝市でご飯と包帯を多目に買ってくるから‼」


「あっ………うん。そ、そうね。で、でも私にとってはまだ子供だし」


「…………子供………うん!! 行ってきます‼」


「あ、ああ!!………いってらっしゃい」


 私は二人に感謝しながら、落ち着く。安心したのか睡魔に負け眠るのだった。





 朝、トキヤの冷えた体もある程度暖かくなっていた。足りない血をどうにかしないといけないし。内蔵などの欠損を修復しないといけない。魔法で何とか出来ないだろうかと考えるがそれは創造に近い事で無理である。


 だが、今なら私は神の奇跡も簡単に扱える気がした。愛を謳う祝詞だって心から言えるし恥ずかしい事はない。そう考えながら服を着て、部屋を出た。するといい匂いがする。パンの焼ける匂いが。


「起きたか、おはよう。これでも食って英気を養え。お前が倒れたらダメだからね」


 パンとベーコンの焼き物。それを持って部屋に行こうとした。後ろから頭を叩かれる。


「こら!! 待て何をする気だ!?」


「トキヤに食べさせようかと………」


「まて。まて。食べさせるのは後だ。先ずはお前が食え。倒れるだろうが。あんだけ魔力と体温使ったんだから」


「えっと、はい………いただきます」


 机に皿を戻して食べる。美味しいけど、ソワソワする。そんな中でも周りを見ながら机の上には観葉植物の鉢植えが飾られていたのが目についた。そしてその観葉植物が震えて根っ子が顔を出す。


モゾモゾ。ボゴッ!!


「ちぃーす」


「………ちぃーす?」


 丸く太った根っ子が喋ってくる。愛らしいコロコロした姿。


「ああ、自分は魔族のマンドラゴラっす。薬が効いて良かったっすね」


「ええっと。うん。ありがとうございます」


 根っ子に頭を下げる。こんな魔族居るんだと驚いた


「いやぁ~姉ちゃん~魔族でもとびきり人型できれいっすねぇ~根っ子でも綺麗さがわかるってもんす。と言うか根っ子ですか?」


「あ、ありがとう」


 根っ子が勝手に話しかけてくるのは少し。いや、すっごーくビックリした。「叫ばないの? マンドラゴラは叫ぶでしょう?」と言う疑問も浮かんでくる。


「ああ、ビックリした? こいつはペットのマンドラゴラだ。あと遅くなったが。私は火竜の上位種。エルダードラゴンの爆竜のボルケーノだ」


 私は驚かない。なんとなくそんな気がしていたからだ。ただの魔族、亜人ではないと。


「ええっと私は元魔王。ネフィア・ネロリリスです。助けてくださりありがとうございます」


「飛竜デラスティのお陰だな。魔力が高まって色々衝撃波があったらしい。爆心地にいけば高級な見たことのある鎧があったそうだ。黒騎士たちは息を引き取って死んでいたらしいな」


「そうなのですね………まぁ彼らも死ぬ覚悟ぐらいあったでしょうから」


 そう、私は運が良かっただけなのだ。私は朝ごはんを食べ終わるが、何故か味はあまりしなかった。心配で心配で味覚が狂っているのかもしれない。


「トキヤのご飯。どうしましょう?」


「実は私も悩んでいてね」


「………自分、喋ってええすか?」


「なにマンちゃん?」


「マンちゃん………自分、マンちゃんすか?」


「マンドラゴラだからマンちゃん」


「ああ、ネフィアさん。ここの家主よりかわいいすね~。ご飯っすけど蒸かした芋とこの葉っぱを細かく千切って口に含んで柔らかくし、しっかり魔力を注げば生命力が上がるっす。そして無理やり飲み込ませたら損傷してる臓器もなんとか修復出来るんじゃないっすかね?」


 マンドラゴラが自分の頭の葉っぱを千切る。それを私に差し出す。「ぶちっ」と痛そうな音と汁が垂れていた。


「痛くないの?」


「大丈夫っす。恋するかわいいお嬢さんのためっす。どうぞ使って下さい。泣き顔は見たくないっすから」


「マンちゃん!! ありがとう!!」


「私のペットとすごく仲良くなっている。まぁ、それより家主よりかわいい。家主よりかわいいかぁ。仕方ないよなぁ。仕方ないよなぁ。ええ歳だし」


 ボルケーノお姉さんがぶつぶつと独り言を言う。私は気にせず調理場を借りて芋を貰い、蒸かしたあとにマンドラゴラの葉っぱを持って部屋に戻った。トキヤはすやすや眠っていた。


「トキヤ………まだ寝てる」


 蒸かした芋と混ぜないといけない。しかし、彼は食べることが出来ない。トキヤの体を起こさせたが彼は目覚めない。


「しょうがない。ごめんなさいトキヤ」


 自分は塩を少しつけた芋を噛む。葉っぱも少しかじるといい匂いがした。モグモグしながら、魔力を混ぜる。


 そして彼の口を見る。ちょっとドキドキするが躊躇なんかしたくない。「生かすために必要なこと」と男らしく覚悟を決め。そして、彼の口に触れて流し込む。「元気になって」と願いながら。





「ただいま!! ネフィア姉ちゃん、竜姉!!」


 勢いよく玄関の扉が開け放たれ。小さな少年が飛び込んでくる。


「おかえり。ネフィアが先だと!?」


「おかえりなさい。包帯買ってきてくれたの? お金払うわ」


「お金はいいよ。元気になったら頼みたいことあるし」


「わかった。ありがとう」


 私は包帯を貰い。木のバケツに水を酌み。寝室へ向かう。向かった先で先ずは体を拭いた。次に汚れて乾いた血まみれの包帯を交換する。傷口が塞がったが、何故か滲んでいた。だが、傷口があった場所は肌の色が違うが塞がっており、触れると皮がある。トキヤは少し異常なほど生命力が高い気がする。


「これなら………すぐに治るかも」


 少し元気が出てきた。彼のたくましい胸に耳を当てる。鼓動もしっかりしていて、いい音だった。


「最初はどうなるかと思ったけど………これで、ひと安心」


「ネフィア姉ちゃん。どんなかんじ?」


 デラスティが部屋に入って元気よく確認にくる。


「少し、血行もいいし。順調かな」


「ネフィア姉ちゃん!! 良かったね」


「うん!!」


 彼が生きてる。本当に嬉しかった。私は彼の未来を繋ぎ止められた。


「まだ、私は。告白してませんから。死なれたら困る」


「僕もだね!! ねぇ、お姉さん。もし安心できるようになったら都市へ行きませんか?」


「都市へ?」


「都市ヘルカイト。まだ都市じゃないけどいつかは都市になる。そこで相談があるんだ。いっぱい」


「わかりました。恩を頂いたのです。喜んで行きましょう」


「………おお。ありがとう。それよりもお姉さん変わった?」


「変わった? そんな感じはないですけど。恋を認めた事ぐらいです」


「そっか~うん!! 今のお姉さんちょっと………ドキドキする。なんか魅力的に見える。魅惑的かな」


「ふふふ。ダメですよ。私はトキヤが好きですから」


 私は寝ている彼を見る。そう見つめる。


「う、うんそれはわかるんだ。でもパッと見たとき竜姉に似てるって思って」


 私は部屋の鏡を見て確認する。全く変わらない私。金色の髪。昔は意気消沈していた姿だったが今は大好きな姿だ。


「今はどう?」


「うーん髪が赤い」


「…………もしかして。音奪い………ボルケーノ姉さん好きですか? 大丈夫、魔法で音は漏れません私だけに聞こえます」


 彼女に聞かれないように聞いた。確認のために。


「うん!! 竜姉好きなんだ!! なんでわかったの!?」


「ああ、うん。私そういえば淫魔だった。ちょっとまって………ふん!!」


 魔力を抑え込む。少し漏れていたのだろう。気付けば私は……………婬魔。マンドラゴラの根っ子にはもしや同族に見えていたのかもしれない。


「あっ!! 戻った」


「ごめんなさい………暴走してたみたい。一部の夢魔は『好意の相手の姿を見せる』能力があるの」


「恐ろしいね淫魔って」


「……ええ」


 何故、この瞬間に淫魔らしい能力が発現したかわからない。だが、それ故に私は「彼女」にも『私』にもなれるのかもしれないと考える。


「もしかして。この体に完全に馴染んだ?」


 私は女の体の変化にネフィアとして気付くのだった。





 執務室で目覚めた。よく知った帝国の黒騎士団長室。頭に違和感と頭痛。


「………ごほ!!」


 眠っていた。何故なのかわからない。


「おかしい、何故ここに? 国境付近であいつと相対していた筈だ」


 「夢なのか? 死後の世界か?」と自問自答する。白い壁に迫られたのは覚えているがその先は覚えがない。


「お目覚めかい? 黒騎士団長さん」


「グランドマザー? 何故ここに?」


「黒騎士団長が負ける未来が見えてね。興味本意で現れたのさ」


 黒い影が魔女の姿に変わる。これが本来の姿だろう。


「見えただと‼ あいつは生きているのか‼」


「残念ね。あなたが彼女のきっかけを生み出した。花が開いていく。それは恐ろしいほど綺麗な花さ。5部咲きだけど。きっかけになってしまった。木から栄養を奪ってね」


「ここは、死後か?」


「いいや。運が良かったね。そこに割れた硝子細工があるだろう?」


「ああ、これは………」


 机の上に割れた四角い硝子細工。中には羽が入っていたらしい。天使の羽が入っていたらしい。だが、私には何も見えなかった。しかし、あいつには見えた。なにか違いがあるのだろう。


「死の運命を一度だけ回避する伝説の魔法具さ。彼、トキヤに貰ったものだね」


「………ふん。殺そうとした奴を助けるなぞ。甘い」


「彼なりの感謝だろうね。さぁどうする?」


「被害の確認と追撃は無理だ。諦める。他にもやらないといけないことが多いからな」


「残念だったねぇ~」


「ああ、裏切り者を始末できなかった」


 自分はとっておきのタバコを一本、火をつけた。同じ魔術士の高みを持つものだったのを見抜けんかった後悔がある。そして「忘れよう」と考える。いつかこの事が帝国に仇にならないことを望みながら。


 ただ、後悔するなら対魔法陣を先に大きく展開すれば良かったと唸る。詰めが甘かった事もある。


「マザー、これから俺はどうなる? 見れるか?」


「かわらないさ。ずっと」


「なら良かった」


 使命は全う出来そうだ。





 一週間。彼は目覚める気配がなくずっと看病してきた。まだ、本調子ではないだろうが何故か目覚めない。息はある。暖かみも、鼓動も。驚異の回復力で健康そのものだ。しかし、彼は目覚めない。


「ネフィア姉ちゃん!! 都市へ行こう!!」


 元気よくデラスティが駆け寄ってくる。竜姉ボルケーノに睨まれるがちょっかいはない。こっそり「あなたがこの子にご執心なのをバラす」と言ったら彼女は焦りだし、「黙っていて欲しい」旨を言われた。分かりやすい二人である。


 だが、私から見るとデラスティと暴竜ボルケーノの関係は母と子である。ボルケーノは全てを話してくれた。隠居していた彼女ははぐれたワイバーンのデラスティを拾い育てらしい。


 だが、大きく強くなるデラスティに何かしらの初めてを感じているとのこと。もちろん私はそれを「恋」だと知っているが………彼女には秘密にしている。


 もちろん彼も、子供扱いをやめて一人の男と見て貰いたいらしい。これは、どういった気持ちかはまだよくわからない。愛か、親に誉めて欲しい年頃なのか。両方か。わからない。


「あっ、うん。どうしよう」


「大丈夫、まだ寝てるよ」


「えっと………起きたときに一番始めに『おはよう』と『ありがとう』。そして胸に飛び付きたいから」


「姉さん!! そんなことするのお姉さんしかいないから大丈夫だって、行こう行こう!! 帰ってきたらすればいいよ!!」


「………わかったよ。強く引っ張らないの」


 自分は鎧を着込む。拾ってきて貰った白金の鎧と剣で身を包み家を出た。庭には既に手綱をつけたワイバーンが待っている。もちろんデラスティだ。


「デラスティ。道中は野良ドラゴン、ワイバーンに気を付けなさい。あとヘルカイトには気を付けて」


「大丈夫だって、心配性だなぁ。行くよ~ネフィ姉」


「ええ、お願いします。竜騎士デラスティ」


「へへへへ………なんかそれ。痒いなぁ~」


「姫を護る者は皆、騎士ですよ」


「おい、イチャつくな」


「ボルケーノ。嫉妬してるんですか?」


「誇り高き火竜だ。嫉妬なぞせん」


「ふふ、いってきます」


 彼の背に乗り、飛び立った。強情な人を見ると昔の自分を見てるようで微笑ましくなる。素直になれないのだ。


「掴まっていてね。寒いよ」


「わかった。いいよ。大丈夫」


 向かうは都市ヘルカイト。日用品を買いに向かう。後は私に会いたい人がいると聞いている。いったい誰か検討がつかないが、会ってみようと思う。顔見知りの良さはこの飛竜で知った。縁は必ず無駄にはならない。私はそう学ぶ。





 飛んでいる空は過ごしやすかった。暑い気候なのだが風でそこまで暑さを感じない。空を飛ぶって気持ちいいと思った。「いつか飛べたらいいな」と考える。


「んんんんん!!」


 青空の下、よくわからない経緯で飛竜の背に乗り。私は手を広げる。風を大きく感じるために。


「そこまで寒くないわね」


「ここら一帯暖かい地域だからかなぁ? えっ? なんでこんなに綺麗に声聞こえるの?」


「そういう魔法ですよ」


「便利!!」


「そう、便利な便利な愛おしい魔法ですよ」


 彼から教わった彼より上手く扱える音の魔法。風の魔法で唯一、私が物に出来た魔法だ。


「あっ、見えてきた。前方」


 そう言われ見ると、確かに壁が立ち上がっているのが見えた。小さい、今まで見た都市より遥かに小さい。その都市の上空へ来ると建物も少ないのが分かる。そう、出来たばっかりと言うのが伺えた。


「あそこに降りるね」


 大きな石畳の上へ自分達は降りた。石畳は四角く加工され用意してあり、これが飛び降り出来る場所として作っているのがわかった。他にも飛べる種族のためか。竜人のためか、その両方かはわからない。


「デラスティ以外に飛び降りする人がいるの?」


「いるね。数人」


「ドラゴン?」


「竜人。ドラゴンをやめて生活する人たち。人間、亜人に憧れて」


 石畳から、酒場まで移動する。ここの酒場は店も兼ねているらしい。店に入るとカウンターで待っているように言われ、大人しく待つこと20分ほどドラゴンフルーツを食べながら待つことにした。


 ドラゴンフルーツはほんのり甘く、小さな実がサクサクしてて美味しい果物だ。自生しているらしく、魔物やドラゴンは木を痛めないように生活しているらしい。なのでここでは多く自生しているとデラスティに聞いた。


「お姉さん!! ごめん遅くなった」


「お待たせしました。こんにちは。あのときはどうも、お世話になりました」


「はい、こんにちは? 先月?」


 会った記憶がない二人である。


「ええ、子供を救っていただきありがとうございます。都市を襲った火竜でございます。監禁懲罰が終わったのでお礼に来ました」


「あっ!! あのときの‼ 子供はお元気ですか?」


「はい。元気です。本当にありがとうございます」


 都市を襲った火竜は人竜族だったらしい。話を聞くとやっと生まれた子だったが拉致に会い。それを追って都市を襲っていたらしいのだ。「人間の自業自得だなぁ」と思う。関係ない人も巻き込まれているが、その怒りもわかる気がする。


「それで、少なからずお礼と言うことでヘルカイト様に会ってもらってもいいでしょうか?」


「ヘルカイトさま? 都市名だけど?」


「ああ、お姉さん。兄貴はここの都市を作った人だよ。気紛れが多いから気を付けてね。酒場の奥に部屋があるから。ついてきて」


 そう言われ、ちょっと怖くなりながらついていく。「お礼はいらない」と言っておこうと思う。奥へ案内されると帝国で昔働いていた店を思い出した。作りが本当に似ていて、隠れ部屋が多い感じだ。


「帝国のお店に似ていますね」


「真似たからね。真似て作る。ノウハウないし」


「誰がお作りに?」


「ドワーフの魔族に依頼を出してる。ここに住んでるよ。少しだけ」


「へぇ~」


「ドラゴンはまだ不器用が多いから」


 奥の部屋に案内され扉を開ける。すると豪傑な髭を生やした大男が座っている。彼がヘルカイトだろう。


 少し、デラスティに彼を教えてもらう。覇竜ヘルカイト。ドラゴンの最上位変異体であり、主食はドラゴンだったというドラゴンでも変異種な存在だったらしい。今はただの兄貴風情のおじさんと聞く。


「どうした、デラスティ? なんの用だ?」


「兄貴!! 彼女はこの前、お世話になった人だよ‼」


「なにぃ!! 我が名は覇竜ヘルカイト。倅が世話になった。有能な冒険者と聞く。今、用意できる物は我の鱗だけだ。お金を用意すればいいが今は金欠で。すまぬな」


「えっ? いや!! もう恩は返して貰ってますので‼」


「いいや、我が火竜の倅が『どうしても』と言うのでな。儂の鱗にしたんだ」


「え、ええっと」


 ありがたくいただこう。押し問答になりそうだ。


「ありがたくいただきます。覇竜ヘルカイト殿」


「若い者が世話になった。そして姉ちゃん。頼みを一ついいかな?」


「はい、なんでしょうか?」


「冒険者としてこの都市を広めて欲しい。安全だとか言ってな。部下の火竜がいる。そこらの都市より遥かに安全だと広報してくれ……」


「ああ、ええっと。わかりました」


「報酬は………追々相談させてくれな」


「兄貴が頭下げてる!? 力で従わせてる兄貴が!!」


「おう、坊主表へ出ろ!! そんなことしてねぇ」


「ごめんって!! 怒んないで‼」


「えっと、仲がよろしいですね」


「もちろん師弟だからな!! こいつは儂が育てた」


「兄貴に鍛えられた」


 その後は色々都市に必要な事を聞かれたが。私はなんでも知っているトキヤを連れてくる事を交渉とし、物品を補充しその日は帰った。


 ここの品は火竜が空輸を行っているらしいく魔物が魔物ではない生活している。


 私は少し疑問を持つ。「魔物」と言ったがそれはもう亜人だろう。私は変わった縁を手に入れた気がする。そして、彼とはある程度の話をしたあとに帰ることにした。そろそろトキヤが心配だから。




 ヘルカイトと言うドラゴンに出会って一月がたった。


 マンドラゴラのマンちゃんの薬のお陰で早い段階で表面は治った。色々なお世話をし、起きるのを待つ。待つのだが。起きる気配がない。


 ご飯はしっかり消化できているのは色々な事で確認できている。臓器も穴が開いていてもマンドラゴラはくっついて治るまで塞ぐらしい。本当に妙薬さまさまだ。そして完治している筈である。


 そんなことを思いながら。今日も台所で竜姉と一緒に晩飯の用意をする。今日はイノシシ肉のマンドラゴラ葉包みで臭いを消す料理法。


 マンドラゴラの葉はハーブみたいに匂いがいい。取れる部位によって香りの強さも違うと言ういい香草だ。


 さすがマンちゃん。料理でも使える。今度、マンドラゴラを抜くときは優しく語りかけてみようと考えた。


「彼、起きないですね」


「おかしいわね。もう起きてもいい筈。ネフィア、心当たりは?」


「ないですね」


 けっこう、「恋する女性同士」と言うのもあり。最初の高圧的な会話が無くなる。これが本当の彼女なのだろう。なかなかに優しい。キツい言葉で中身はスゴく優しい彼女。昔はそんなこと無かったらしいとはデラスティの談だ。デラスティを育てた結果なのだろう。


「植物人間になる筈無いんだけどな。頭は無事?」


「頭は無事かなぁ………倒れたとき打ったかな?」


「ああ、それなら。納得だけど………」


「夢は見てるんでしょうか?」


「わからない。あなた夢魔でしょ? 確認すれば?」


「そうでした!! 婬魔、夢魔でした!!」


「…………はぁ………」


「そんな残念な子を見る目をしないでください!!」


 作り終え、そそくさと、ご飯を食べ終わる。気付けば単純。今なら、意識がないし対抗呪文があったとしても力が強くなっており、打ち破って夢見が出来ると思い急いで部屋に入る。そう、悪い事だけどついでにトキヤの記憶を全部見ようと思う。『彼女』を越えるために。私のために私は魔族の悪魔になった。















































































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