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アクアマリンの人質王子


 馬車に戻り、私は笑顔で席に堂々と座った。ふんぞり返りながら真面目にしようと満足した腹から声を出す。


「余は満足した。これからは真面目にしよう」


「ネフィア……タレがめっちゃ頬についている……気付かんかった」


「……ふふ、ふ………ま、魔王は靡かない」


「いや、拭こうな」


 魔王らしい、格好つけたところでスベる恥ずかしさで情けない声を出す。トキヤに飽きられながら布を借りる。


「昔のネフィアは一本の蒲焼きを小さくモグモグ食べて可愛らしかったのに。今回両手に2本づつでガツガツ喰うからなぁ、昔の方が男じゃない、言いながら……今の方が食べ方逞しいんだよなぁ」


「うぐぅ……待たせてるから勢いよく食べたのだぁ」


「それにしてもだけどな」


「そういうトキヤこそ!! 3本ずつ持ってたじゃないか!!」


「ネフィア……本数じゃないぞ」


「トキヤ!! ドヤって俺の方が本数多いとか子供かと思ったぞ」


「いやいや、いや………いや」


「トキヤ、ショックうけるのね。そこで」


「大人げなかったなった……反省してます」


「オホン!!」


「「!?」」


 私たちは咳払いで黙り、王子を見る。


「すいません、つい……二人の時間を邪魔して悪いと思いますが……ついですね」


「すいません」


「すまなかった……」


 反省する私たちに王子は呆れた表情をする。気が抜けたのか少し肩の力が抜けてるようだった。


「そろそろ、つきます。ですので……」


「ネフィア。喋るなよ」


「……むりでしょ」


 魔王モードは本当に数分持てばいい方だった。





 白の綺麗な城の城門を潜り、私は馬車をおりると驚く事に赤い絨毯が敷かれ使用人が両サイドに立ちお出迎えてくれる。あまりも光景にちょっと気が引けた。


「あっ私、魔王だ」


「ちょっとその発言は笑う。自覚あっただろ」


「あったら両手に蒲焼き持たない」


「安心しろ。王配もする」


「よし、トキヤ。一緒に自覚をもとうぜ」


「……お二方……そろそろ前を歩かれては?」


「「すいません」」


 私は堂々とトキヤの後ろを歩く。魔王では私が上だが、家族ではトキヤのが上と決めているため妻である私は彼の後ろに付き従う。自然とそうなるようで……


「……王配であるトキヤ殿が前?」


 驚く王子の声で我に帰る。


「あっ…………英魔では騎士と姫という文化があり。姫を護るために騎士が前に出るのです。魔王ですが私は姫です」


「そ、そうでしたか。申し訳ありません……アクアマリンや人間とは違った文化だった事を失念してました」


「[あっ]て漏れたよな」


「しぃいいいいいい!!」


「……」


 私は空気を読まないトキヤの背中を押す。そしてそのまま進んでいくと玉座の間につくのだが。中年のおっさんであるきっとここの王であろう人が玉座に座らずに待っていた。豪華なマントに着せられているような感じで私があった王とは違い"普通"な感じの人である。


 そう、あの戦闘狂いの喧嘩を売るスパルタ王。晩年はただの好老人であったが何処か鋭い帝王。王に類する事ができそうな族長連。覇竜王ヘルカイト。いや、出会ったのがちょっとあれですね。


「……初めまして。アクアマリンの王。私はネフィア・ネロリリス。英魔共栄圏……えっと」


「英魔共栄圏第一英魔王の王配トキヤ・ネロリリスです。今日はお呼びいただきありがとうございます」


「アクアマリン王、シルド・アクアマリンです。遠路遥々、お越しいただきありがとうございます。申し訳ないのですが何もおもてなしの用意も出来ておりません。お許しください」


「許す……既に腹は満たした。それに冒険者であった故に突発の訪問。預言者でしかわからぬだろう」


「では、建設的な会話と行こう。アクアマリン国王の思うところはなんであるか?」


「……我がアクアマリン国との友好を結んでいただきたいと思います」


「良かろう。書は祖国に送っていただければそれでよし……友好の証として私を示す旗を掲げていればよい」


「……ありがとうございます。それでは……友好として彼を英魔首都に置いておいてください」


「彼?」


 アクアマリンの王の隣に道案内や馬車で一緒になった王子が頭を下げる。あの生気のない瞳で。トキヤは察し、私に魔法で囁く。


「ネフィア……人質だ。もしも、約束を破るなら殺せとな。王の親族だからこそな」


「!?」


 私は驚きながら王子を見るのだった。











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