外れた廃れた教会①
私は馬を借り衣装と鎧を変えて都市外れの教会に足を運ぶ。元は都市壁のない住人用の信仰の場だったがいつしか誰も運ばなくなり。廃墟となった教会だった。荒くれなど都市に入れない者たちに使われており、いつしか冒険者用の訓練施設として騎士団などが奪い。今に至る。
まぁ……表向きここまで。裏はトキヤに聞くと始末した物を都市インバスまでは遠い場合はカタコンベに捨てるらしい。故にアンデットはいてもおかしくはないと聞く。
供給はされ続けるのだ。多くの邪魔者として。
「あれだな……騎士の寄合所」
鎧を着た彼が指を差す。その先には鉄板で組立てられた小屋のような物があり一応対魔物用の防備が整っていた。
「たぶん入り口に魔方陣か何かで伝わるようになっていると思う。無理に突破する必要もないだろうから……これが生きる」
トキヤがある書類を取り出す。黒騎士団長に書かせた書類だ。もちろん入るために。
トントン
鉄板の戸を叩き、中から3人の騎士がお出迎えする。黒騎士の面々にトキヤがご挨拶をしたあとに書類を見せた。
「黒騎士団長からか……偽装ではないな。そいつが教会のシスターか」
私は聖典をもったままヴェールとマントを取り、金髪の姿をお見せする。
「はい……」
何も言わず返事だけをし、お辞儀をする。黒騎士たちは私の姿をまじまじと見たあとに胸を最後にトキヤに向き直る。
「護衛は一人でも十分なのか? 一応聞くが……」
「問題ない。彼女も戦える」
「わかった。入り口の魔方陣は解除しておこう。帰りは寄らんでいい……死ぬかもしれぬからな……武運を祈ろう。名も知らぬ騎士よ」
「ありがとうございます。黒騎士様」
「行くぞ」
「はい」
私はトキヤに呼ばれマントを着直して後ろについていく。そのまま崩れたレンガ作りの教会の裏手に周り、大きな大きな階段を見つけて降りていく。
トキヤの手には魔力のカンテラが握られておりそれを地面に置いたあと。彼は鎧を脱ぎ出す。私は複写された聖典を燃やした。女神ヴィナスの教えなぞ私の中の教えに背く。
「トキヤ脱ぐの?」
「脱ぐさ、俺は魔法使い」
「それでも、私は今はシスターで……後方だよ?」
「それ、着替えるだろ? お前、前線だろ?」
「着替えないよ。可愛いじゃんこの服!! そこは護ってよ!!」
私は今の姿が気に入っていた。確かに嫌いな女神の宗教だったが。裏切り修道士サーチちゃんの服に興味を持っていたのだ。ロングスカートに割れ目で太ももなどを見せ、ガーターベルトなどでなんとか大切な部分を隠し、ニーソックでまとめ、胸は空いているこの姿は可愛いと思っているのだ。
「ばっか!! 俺より硬いし、何を……」
「今は僧侶だよ!!」
「破戒僧の事なら正解だな。あっ翼と魔法を打ちまくるなよ。崩れるから」
「まぁ!! あなた……そこまで言います!?」
「よし、心に聞いてみよう。燃やしてたろ偽物聖典とか、その姿とか」
「いや。これはここのシスターの姿で………まぁその。婬魔で悪魔で魔王ですが、女神しなさいとも姉さんに言われてます」
「……英魔では聖女だったなそういえば」
「でしょう!! トキヤ!! 私が魔国に帰ってなんかすれば絶対にそうなる。うん帰りたくない!! ごめん聖女なんて威張って!!」
「手のひら返すな返すな。まぁそれよりも……蠢く何かいっぱい、いるな……幽霊も居るだろう大丈夫か?」
トキヤがカンテラで奥を照らす。両脇に骨が積み上がっており私はわおぉと声を漏らす。
「幽霊を切れればなんとか……」
「なんとかなりそうだな。よし、ネフィア準備はいいか?」
「……手を繋ごう」
「ネフィア……怖いのなら待ってろ。掃除してから迎えに来る」
私は首を振る。
「それもイヤァ……行く……」
震える手を差し出すがトキヤは首を振る。
「一応、動きやすいように手は繋がないでおこう。王、会いたくないのか? それでいいのか?」
「ぐぅ……ズルい言い方……わかった。まって……」
パチン!!
私は太ももを叩き気合いを入れる。そして、目を閉じ深呼吸をし深く吐き出した。そしてゆっくりと目を開けて真っ直ぐ彼を見つめる。
「……ネフィア準備は?」
「出来た。すまなかったな旦那様よ。余はもう大丈夫だ」
「……ネフィア」
「なんだ? 旦那様」
「俺の呼び方……コロコロ変わるな」
「そんなこと……ひゃい!?」
「無意識だったか……」
「ま、まって。余は……えっと……すぅはぁすぅはぁ……くっ……トキヤ。魔王モードの維持が無理に」
「……魔王。俺はたまに凛々しい姿がみたいな」
「うむ。余は素晴らしい!!」
「……」
「……」
「ぷぅ……くくく」「ふふふふ」
「慣れない事はしない方がいいな」
「そうね。あなた。ちょっと余裕でたから行けるよ……大丈夫、お前、勇者、トキヤさん、トキヤ、あなた、旦那さま……次はお父さんかな?」
「そこまで長命ならいいな」
私たちはそのまま談笑しながらダンジョンに潜る。危機感のない私達だが。いい感じに私の肩に力は抜けしっかりと幽霊を浄化することができたのだった。




