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女神からの申し送り後編


 白い薔薇の園で私は女神エメリアの話を聞き続ける。


「私が語るのは根底原理。世界の黄金律です。そして私は何者であるかを教えします。そう、私は夢魔の女神でした」


「夢魔の女神? 愛を名乗る女神ではなくて?」


「それは後天的に司りました。そう、あなたがそう勘違いし広めてくれたから。女神は人に存在を認めて貰わなければ存在できず。否定者が多ければ消えていくのです。だけど……強い願いの元に存在を許されることもあります。例えば懺悔室での声に答えるぐらいには」


「そ、それなら……私が倒したのが生きてる!?」


 消したと考えていたがこの話では生きているというように聞こえる。


「いいえ、消す方法と殺す方法が違うだけで。死因のひとつと考えればいい。だけど、肉体持たぬ存在はそれでも、大きいです。これが私たち。神と言う存在です。曖昧なんです。本当に調べるの苦労しました」


「調べる?」


「昔はね、ネフィアちゃん。一種族に一神が作られていたの。今ではもう忘れられ神も信じられない世界になり、人間だけが忘れてはなかったのでしょうね。悲しいですがその結果があの、お姉さまです」


「……ふーん、で?」


「察しが悪いですね……英魔族と言う魔族をまとめての呼称でまとめあげ、英魔族の後に昔ながらの族を呼称させる結果。彼らのプライドを持たせたまま。新しい族が生まれその族の神は誰と答えればネフィアちゃんと答えられるでしょう。神は自分で呼称するものじゃない」


 そう、神であると呼称しても世迷い言葉だ。


「周りがあなたを神であると信じればそれで神へと昇華できる。いえ、そう誘導した。ネフィアちゃん……私はあなたを見つけ、あなたは私と同列、いえそれ以上になり。姉を倒すと信じたんです」


「待って……ちょっと整理させて。謀略みたいな物がありそうとか思ってたけど……本当にそんな事を……」


「エルフ族長とグルでね。エルフ族長グレデンデとトキヤさんはあなたに魔王の姿に惚れ込み。誰よりも盲信、忠誠を捧げる。その立派なイメージは淫魔の襲われる人の理想の姿で現れる能力によって完璧に発現したわ」


「う、うむ……それは、皆が隠してた事かしら?」


「ええ、誰もあなたに説明しませんでした」


 ベラベラ喋る彼女にただ聞くだけの私はもう察する。今までの出来事などの説明を確定した情報を私にくれるのだ。何故かそれはもう隠す必要がなくなった。では、何故隠されていた?


「隠してた事を何故? いえ、それよりも長いです。もっと簡単に教えて」


「……成長期。そしてどうなるかわからなかったから伝える事はしなかったのです。どこまで強くなるか。どこまで成長するか」


「はぁああああああああ」


 私は大きくため息を吐く。そして指を差した。


「子供扱いだったのね。そして、今やっとその情報を出す事を決めた。それを聞いて……正しい判断が出来るように」


「ええ、そう。でもちょっと、間違っている。ユグドラシルちゃんも大人しく聞いてくれてるけど。知っておかないと間違いが起こってしまう。各々の強さで世界が歪む事を……」


「……ユグドラシルちゃんにその話は重いわ」


「遅かれ早かれです。ネフィアちゃん。お姉さんなので教えてあげてください」


「……わかった。そういうことなのね」


 私は目を丸くするユグドラシルの頭を撫でる。こんな無垢な子も荷を背負う。


「……私、本当に神様になるのです?」


「ユグドラシルちゃん、そうね……もう少ししたら。ネフィアちゃんは私の勇者であり。聖なる力を行使でき、自己犠牲をいとわない聖女。そして、最後に神様である創造する力を持つ神と昇華した。あなたもすでにこの世にない実の創造をしてます」


 あの駄洒落の飲み物が入っている実だろうか。私は手を見てあの日にがむしゃらに創った剣を思い出す。そういう力が必要であの日。あの時、強く強く願ったのだ。勇者の剣を。


「質問はいいかしら……」


「あんまり。ちょっと……いきなりの事で……こんがらがる」


 私はギュッと拳を握り。整理の追い付かない頭を振る。


「では、最後に……ネフィア。あとは任せます。あの剣を使い……ネフィアあなたの我が子の復讐を」


「!?」


 がしゃん!!


 私は椅子を倒す勢いで立ち上がる。驚いた表情で見つめてくるユグドラシルを余所にエメリアを睨む。お腹を擦り、強く強く言葉を発する。


「どういうこと……」


「……あの日々。姉のただの嫉妬心からくる呪いを見逃したのです。何か伝える事も、私の代わりに姉に復讐をしてくれる切っ掛けとして見過ごしたの。なので……消えるのではなく抹消とします」


 私は震える手で、唇に手を持っていく。あの日あの……時には知っていた?


「………」


 エメリアは椅子から降り、地面に座る。そして……あの剣が薔薇の園に転がってくる。持ってきたのだ彼女が。


「無くなる覚悟出来てます。ありがとう、そして……ごめんなさい。あなたを復讐に巻き込んで」


「……つぅ」


 私は勇者の茜色に染まる刀身の大剣を拾う。女神を切り、抹消した剣を構えた。私の剣ではない。だけど動かない者を斬るのが造作もない。


「ネフィア姉さん!!」


「ユグドラシルちゃん……目を閉じて」


「………」


 ユグドラシルちゃんが手を合わせて震えて祈る。同じようにエメリアもその時を待つ。私は思い出すのはあの空虚な悲しみの日々。奪われた日々だ。


 忘れる事の出来ない。忘れられないあの我が子を宿した日々だ。


 翼を6枚広げ、私は大きく剣を………


 ビュン!!


 白い薔薇の園に全力で投げ捨てた。そして叫ぶ。


「うわああああああああああああ!!」


 後悔や悔しさを……もしもの運命をも想像させた事を全て丸めて。叫んだ。


「ああああああああああ………あぁ……ぁぁ」


 ひとしきり。叫び終わり。私は驚く二人に……泣き声で答える。


「もう、斬っても……あの子は生まれないんです。意味のない……懺悔はやめて」


「ネフィアちゃん」


「エメリア!!」


「!?」


「……女神として英魔に尽くしなさい……それが魔王の私からのお願いよ……以上!! この話はそれで終わり!! 私に継がせるな!!」


 私は名前を呼ぶエメリアの声を振りほどき。強引に夢から抜け出した。そう……私はまたあの悲しみを思い出す。


 愛しい我が子の死を。





「……あう……」


 夢から醒めた。そこはマクシミリアンのテントでカンテラが中を照らす。そして、強く抱き締められている事がわかった。


「トキヤ……」


 泣いている私をどうやら抱き締めて寝たらしい。反応はない……本当にぐっすりしている。


「トキヤぁ……」


 私はその暖かさに甘えるのだった。お腹を撫でながら……本当に欲しいものを思い出して。そして、それがトキヤは求めてない事を苦しんで。




   



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