エンディング~英魔を見届ける雪翼の女神~
私は静かな残された島でただ永遠を享受しようとした。しかし、ふと疑問に思ったのだ。
「まって……なんで指輪が残ってるの?」
指に嵌めた指輪が消えずに残っており私は不思議に思う。思い出を内包したそれに消えてなくなってしまわない結果が私にとってはありがたいが今は胸がざわつく慌ててしまう。
「誰かがいる」
ゆっくりと立ち上がり。島の何処かにまだ何か残っているのではと慌てて見回りをしようと振り返る。
「残ってしまったら。帰れなく……!?」
振り向いた先に右手に火を生み灯りとして立っている姿が目にうつった。その男性は私がよく知り、よく支えて下さった人だった。
「ヴァルキュリア。勝手に行くな……全く」
「あなた!? どうして!! ここに居たら忘れられるわ!! 居なかった事に!!」
「居なかった事にはならないだろう。それに……別れは伝えたし」
「だから……どうして帰ってきたんですか!! 私はあなたのために……」
「ヴァルキュリア。俺は竜の災悪であり向こうでは勇者に斬られて死んでいる。償える事が出来ない俺はたった一人。愛する君のために頑張ろうとしたんだ。だからな……皆を未来に導いた君を今度は俺が君を未来に導くよ」
ウルツワァイトは火を落とし灯りをつけたまま手を差し出す。私は……指輪を嵌めた右手をゆっくりと上げる。
「……ウルツワァイト。やっぱり……」
ぐっ!!
私の右手が掴まれ強く引っ張られてウルツワァイトに抱き締められて捕まる。逃がさないように強く。強く。
「やっぱりじゃない。愛してると言った。あの夕陽を一緒に見たのは君とだ。鋼竜ウルツワァイトは君を愛するよ……」
「ウル……うぅ………」
「だから勝手に行くなよ。怒っているんだからな。俺の目の前で悲愛は認めない……認めないからな」
顎を持たれ深い深い契りを結ぶ。小さな灯りが消えかり。鋼竜ウルツワァイトはゆっくりと離れ竜となる。
「ありがとう……ウルツワァイト……」
「お礼はいい。さぁ背中に乗れ。足が動かないのなら背負うまでだ!!」
「ウルツワァイト!! ありがとう!!」
「恥ずかしいから、ささっと乗れ」
私は鋼竜の背に乗り。熱い熱い熱を持った指輪に視線をよせ。それを胸に当てる。そして私も翼を広げたのだった。
*
三面鏡の前でネフィアは目が覚めた。腕を組みスヤスヤと眠っていた彼女は大きくあくびをする。
「ふぁああん……んん……なんで寝てたんでしょうね」
何か長い夢を見ていたような気がするネフィアは首を傾げる。夢を見ていたようなのだが覚えがないのだ。仕方なく髪を櫛で整えて金色の髪をとく。
「そういえばトキヤは慌てて外へ出たけど。なんかあったのかな?」
不思議に思いながら三面鏡をネフィアが離れる。寝巻きを脱ぎドレスに着替える。
「それよりも……色々これから大変なんでしょうね。どうなるんでしょうか……」
(大丈夫、英魔は発展します)
「!?」
ネフィアは何か聞こえた気がして後ろの三面鏡を見たが驚く顔の自身しかうつっておらず、奇妙な気分のまま。ネフィアは何故か皆の顔をみたいような気分で寝室を出る。
そして、残された三面鏡の中にネフィアがうつったままになる。誰も見ていない鏡の中のネフィアは微笑み。人さし指を唇に押さえる仕草と笑みをこちらへ向ける。そして誰もいない部屋に静かに囁いた。
(静かに……ね?)
鏡の中のヴァルキュリアはそのまま姿を消した。そしてその日、都市の中で不明な竜の影とそれに乗った人の影に季節外れの雪が降った。しかし、人々の心に何故か不思議と……好意的に受け取られ。一部の人は少し思い出すのだった。
氷を操る女王陛下が英魔を救ったという噂だけが一人歩きをし、そしてある作品が生まれる。
【白雪翼の英魔王】
ただの噂から生まれた物語は都市オペラハウスで演じられるのに時間はかからないのだった。




