部隊展開
ブルブルブル!!
大きなプロペラが回り巨体を浮かす。ガルガンチュアは大きな巨体を青空に浮かべ霧から身を繰り出す。村一つ内包できる巨体が大空を飛び、甲板に乗っている鎧を着た天使など有翼の亜人が整列する。英魔衛兵団の衛兵達である。
凛々しい顔のダークエルフが大きく叫ぶ。ダークエルフ族長バルナトスだ。
「空が飛べる英魔衛兵団の精鋭たち!! 君達しか出来ないことを命じる!! 女王陛下をお守りしろ!! 以上!! 発!!」
「「「「はい!!」」」」
整列した天使の衛兵が甲板を走り大きくジャンプし、体をねじりながら翼を広げガルガンチュアの鈍重で思い動きより先に飛んでいく。
昆虫亜人族はそのまま飛び。鳥亜人は邪魔しない場所で落ちて翼を広げる。
たった数人の竜人はそのまま人のまま甲板を飛び落ちる中で光を放ち。光の嵐の中から咆哮と共に竜の姿へと変わり空を飛ぶ。
先攻し、制空を得るために。衛兵の空戦部隊は甲板から発進して船を護るように敵と接敵しようとする。
そして彼らを見つめる飛べない英魔は敬礼だけをし、持ち場に移動した。
ガシャン!! ガシャン!!
飛び出した後に甲板、側面の船底などが扉のように開く。ハリネズミのように棒状の筒が用意された。魔力を増幅させ加速させる機構を持つ道具に英魔が並ぶ。首筋に補給用のストローをつけた服を着たまま。
「ガルガンチュア!! 全速前進!! 怯むな!! 都市にぶつけていけ!! そして砲の準備!!」
ガルガンチュアの全面が開き、目玉のような丸い砲が口を広げ砲身の中を赤く染めた。ゴブリンが泡立たしく作業を行い。兵器の準備に取りかかる。
ゴブリンの砲火砲をそのまま前面に乗っけたのだ。ゴブリンの砲火砲は足があり。自立して移動する旧人類の兵器だが。それでは運べる所は限りがあった。
それを無理矢理乗せて運用し。意を反する物にその砲火砲の火で滅ぼすと言うような事が出来る。英魔の最終兵器の一つになったのだ。だが、殺すだけが目的ではない。
「未来を取り戻すために用意されたような気がしますね」
「ダークエルフ族長!! 船内へ!! ここへいたら!! 危ないです!!」
他の衛兵隊員が慌ててダークエルフ族長に注意を行う。しかし、彼は動かない。
「ふん。手摺もある。一番ここが戦場を見渡せる」
「しかし!! 危険です!!」
「女王陛下は危険だからとこの場を譲るか?」
「そ、それは……」
「死ぬときは何処にいたって死ぬ」
ダークエルフ族長は甲板に至るところについてある取っ手をつかんだ。そして、衛兵団の幹部も同じように出てくる。若いアラクネの騎士も現れた。
「……お供します」
「別に私のワガママに付き合う事はない」
「衛兵団長が引かないのにその下である私たちも引くわけにはいきません」
「すまないな」
ダークエルフ族長は自分の長い獲物を背中に担ぎ。取っ手をしっかりとつかんだ時。船は加速するのだった。
*
大きなワームが木々を薙ぎ倒しながら進む。鋼の体は傷がつき。金属の塊を打ち込まれる猛攻。鉄の雨の中を進み続けそして空中都市の見える位置まで移動が終わる。
「エルフ族長。移動か終わりました」
「わかった。艦内放送……」
「大丈夫です」
エルフ族長は魔法を唱え、魔石に声を伝える。
「グレードワームが定位置についた!! 全員対空装備で展開!! 行くぞ!!」
号令をかけ、ワームの側面が開き多くの英魔が蜘蛛の子を散らすように散らばり走り出す。遠距離武器を持った者たちが種族関係なく走る。
そして鋼の体が開き、格納されている発掘されたゴブリンの砲火砲を大小様々なのを何個も用意した。
「展開始まりました」
「ワームはここに捨てておき。俺も出る。婬魔の魔導士たちも出ただろう」
エルフ族長が大弓を取り、背中に背負う。
「……エルフ族長。その弓で攻撃が出来ますか?」
一人の兵士が魔法を打ち出す砲を指差す。疑問に対しエルフ族長は笑う。
「エルフの弓をなめるなよ……弓も新しいのだ」
不敵の笑みを残し、エルフ族長もワームの甲板の部分へ出る。命令は単純だった。飛んでいる蚊を打ち落とすだけと言う。シンプルであり、地上の英魔はこれしかできないと言う事だ。しかし、それでも……
「数は減らせるはず」
悪い方法でもないとエルフ族長はワームの上から大きな弓を構え魔法を唱えた。そう相手は魔法を封じる力場を作っていないのだから。全力で使える事が今と昔で大きく違うのだった。
*
捨てられた島の海の上で多くのパンジャンが回り出す。プロペラが回り、塗装が施された機体が海の上を走り。滑りながらゆっくりと浮上する。
ブルルルルルル!!
プロペラの羽音を捨てられ島一杯にし、逐次海族のスライムは空を飛ぶ。
赤い鳥が霧に入り。青空の霧の中から姿を現す。多くの海族英魔の知恵の決勝が空の大海を泳ぎ。英魔の衛兵団の竜人の隣へ来る。
戦場で知り合いにあったのか所々で親指を立て。笑顔で進み。皆の耳元に同時に声が届けられた。婬魔の女性の声が空の騎士たちに届けられる。
「敵機!! 発見!! 散開!! 接敵後、各自……打ち落としてください!!」
ブルルルルルル!!
空の騎士である英魔とパンジャンに乗るスライムはそのままバラバラに離れ。空中都市から出てくる3角形の得体の知れない物体と戦うのだった。
*
ヘルカイトは空中都市の上空の霧から登場した。そして続くように竜人と古竜が同時に都市の障壁の周りを取り囲む。
「行くぞお前ら!! 竜人ならへばっんじゃねぇぞ!!」
竜人の手に木出てきた宿り木の槍を持たせられ、それを使い。不明な得体の知れない敵を攻撃する。
腐竜はヘルカイトの盾に火竜は膨大な魔力による爆発の連鎖で無差別に攻撃をする。近くを飛んでいたワイバーンが苦言。
「火姉さんの近く危ない」
「デラスティ。避けなさいあなたは」
「そんなぁ~」
都市を攻撃する。都市ヘルカイトの民が障壁に槍を投げつける。宿り木の槍は障壁に当たると根を張り魔力を吸い出しにかかった。しかし、障壁に阻まれて一定時間後に燃えて無くなる。
「じゃんじゃん!! 槍を持ってこい!! 弱まるまで何度も何度もなげる!!」
ヘルカイトは指示をしユグドラシルを護る聖獣と呼ばれる土竜が背中の背負った槍をヘルカイトに渡していく。そして無くなれば霧に入り、都市ヘルカイトから持ってくる事を繰り返すのだった。
*
空中都市の中枢。女神の間にヴィナスは外の光景を見ていた。予想よりも激しく強力な猛攻に空戦部隊は数を減らし、空中都市の攻撃も障壁を解除できないため何も手が出せない。
いや、出せない訳じゃない。障壁の一部を消せばいい。しかしそんな事をすればそこから入ってこられると言うのが予想が出来たのだ。
「天使を差し向けろ、ここを耐えれば勝利よ」
ヴィナスは胸を抑える。そう……英魔を見ると異常なほどに怒りが身を焦がさんとするのだ。
「このからだの残留思念。私自身が険悪する」
そう、ヴィナスはネフィアが憎かった。体を奪ってもそれは変わらず。結局は意思も混ざり女神ヴィナスは大きく歪んだ笑みを溢す。
「そう。ネフィアが……憎い」
間の中で見る映像は輝いて見えた。英魔の発展している環境が見えた。強さはその国力に比例する。だからこそ……憎かった。
魔王の癖に人間の神よりも立派なのが。
「ふぅ……落ち着いた。全軍につげ……今日が旧人類復活のための最後の戦い。家族を救いたければ!! 勝つのだ!! 我々はもう一度……世界を手にする」
大きく大きくヴィナスは叫んだ。燃えるような殺意を押し込んで。目の前に映るガルガンチュアを沈めろと命じた。




