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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第零間章~一時の日常、一時の安息、一時の関わり~
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英魔の日常⑫~俺を野球に連れてって【国技】~


 英魔族に新しく生まれた物がある。最初は子供の遊びだった物がルールが決められ。殺しとは無縁な(死球は死ぬかもしれない)戦いが生まれた。


 元々は何か一つと考えれられていた鬱憤発散方法の一つや。軍事費を集めるためにと言う案だったがいつしかそれは大衆に受け入れられ。今では代理内戦の様相をていするまでになる。


 そう……英魔族の平和時の新しい戦場は球状の小さな箱庭に移ったのだった。


 そして……その戦いが決着。優勝チームと短期決戦優勝が決まり終わったあとに。私は女王陛下として球場に足を踏み入れていた。国賓用の箱席に護衛と一緒に戦いを見ている。


「ネフィア……お前の王配でよかったわ。こういう日のチケットフリーパスは強い」


「……オールスターで5日が休日なのビックリよ」


 席で用意された酒が入った大きな水筒を飲みながら。戦いを眺めていた。隣の旦那は席に座らずずっと中腰で前のめりに眺めている。


 とにかく今日は拮抗と言うよりも投手戦が開始され。両チーム。3者凡退を増やしていく。息の詰まる展開が続き。一本でも出たチームに勝利の女神が微笑むと言う。


 流れ着いていないが……チームごとに神様がいるらしい事にも驚いた。ヴィナスの神殺しから八百万復活の気配を感じる。


「あかん!? 球が完璧に伸びてる!! 打てねぇ!?」


「そりゃ……歴代最高の投手が流れ着いてるもんね」


 6回も凡退し、裏の6回へと移行する。そして……魔球が冴える。


「追い込まれたら絶対にあの3段に落ちる球がくるから。打てねぇ……かすりもしねぇ……」


「ほぼ無回転だと……ああなるのね……」


 球場は応援の声援は大きいが緊張が走り続ける。英魔族の中ではこんな投手戦はつまらないのではと思うのだが……楽しそうである。特に隣。


「ごく……」


「ねぇ……汗がすごいから拭いなよ」


「……」


「き、きこえてない」


 隣の旦那はもう何も聞こえなかった。しかし……ある声でビビり出す。


「代打。01番。スラリン」


「「「「「わああああああああああああああ」」」」」


 球場が歓声に包まれる。あまりの大歓声に私は隣に説明を求めた。そう、スラリン監督が出てきたのだ。


「ねぇ……あれ監督よね?」


「ああ……代打、私って言ったり。スタメンで外野守ったり選手兼監督なんだ。ベンチに監督並みの頭がいるから出来る芸当なんだが……大洋ホエールズの何でもやる精神の賜物だが……やべぇ……やべぇ……」


「そんなにヤバイの?」


「お前はリーグ戦を見てこなかったのか? 大洋ホエールズは流れやファンサービスでああいった事をし、雰囲気を作り。勝利を呼び込むんだ。それに……あのスラリン。お前と同じ女で唯一の選手でもあったらしい。そう。1年目4番のベテランが監督で帰ってきたら選手でも大活躍さ」


「……」


 めちゃめちゃ詳しくビックリする。綺麗なスライムの女性がバッターボックスに立ち大きくバットを揺らし。タイミングを測る。歓声が耳に突き刺さるほどに盛り上がった。他球団にもファンがいるらしく。期待が膨れ上がる。


「「「おぉ~我らの大隊長~す~ら~リン!!」」」


「あかん!? 怖い!!」


「まだ投げてない……」


「怖い……怖すぎる」


 大きく震えながら投手を見守るトキヤ。その緊張が投手にもあるのか汗を頻繁に拭う。そう……小さいスラリンのからだが大きく見えるのだ。


 そして第一球!!


 低めにコントロールされた球が真っ直ぐに走る。変化球ではない速球投手らしい速い球に……


グワラガアアアアアアアアン!!


 バットで力強く掬い上げる。投手が背後を慌てて見たときその大きい大きいフライボールはそのまま夜の景色に消え、球場外へ飛んでいった。


「「「わあああああああああああああああああああああああああああ」」」


「あっかああああああああん!?」


「ふぁああああああ!?」


 私とトキヤは全力で椅子を蹴飛ばして立ち上がり。観客も総立ちになる。中には監督やめろと言う罵声のような称賛を浴びせ。応援歌が流れていく。


 スラリンは大きく大きく手をあげて塁を周り、ベンチの選手とハイッタッチして下がっていった。


 ベンチの声を拾うと皆が流石監督とか、監督同士で冗談まがいな罵りあいがあり。雰囲気が良いのを感じられる。


「あんなスイング。一刀両断できるよね剣で」


「そうだな。選手は皆、剣を持たせると強い……はぁ……打たれたか……」


「大丈夫。まだ終わってない。1点だよ」


「……果たしてその1点は軽いかな?」


 試合は終わっていない。そう思いながら。成り行きを見ていたのだった。






「えー今日のヒーローは!! 完封の今選手と代打で決勝打の一発監督スラリンです!!」


 私は試合が終わり。隣で明日明日と駄々をこねているトキヤを笑いながら様子を見ていた。大歓声の中で二人がコメントをしていく。


 その熱を見ながら私は炎を取り出した。数ヵ月の合間に大きく熱く育った英魔の炎。それを眺めながら……今日の楽しかった日をくべる。


「ネフィア……その炎しまえ。燃え移る暑い」


「もう。トキヤ負けたからって不貞腐れない。明日は勝てるよ」


「3点……明日は未来が登板……3点に抑えれば勝てるんだ勝てるんだ……」


「あっ……明日未来ちゃんなんだ。応援しよ」


「やめろネフィア。お前の能力は危険だ」


「……大丈夫。その能力はない」


 トキヤが言う能力はネフィアの絶対にそうなると言う黄金律の運だろう。トキヤと話をしていると背後から声をかけられた。後ろを見るとダークエルフ族が笑顔で何かマイクらしいものを向けた。


「では!! 最後に今日は女王陛下もきてくださってます。一言なにかお願いします」


「見事です。しかし、乱打戦が見たいです」


「ありがとうございました!! 王配はどうでしょうか?」


「ノーコメント明日は勝て」


「ありがとうございます。贔屓ですねぇ」


 お礼をいい。去るダークエルフに手を振り私はトキヤの肩を叩き。笑顔で答えた。


「安心して。明日負ける」


「ぶっとばすぞ」


 荒々しくも悲しいトキヤを連れ私は球場を後にするのだった。こっからは……酒場など。人でごった返すのでそのまま家に帰る。


 帰りながら私は眠らない英魔たちの楽しげな声を聞き続けたのだった。







「明日も行く? トキヤ?」


「全部行く」


「わかった。じゃぁ一緒に行きましょう」


「……ああ。本当。楽しいなぁ。楽しいのに終わるのか……」


「いいえ。未来は続く……私が取り戻すからね」





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