四天使の最後~耐えきった英魔.
私は3人の姉妹に苦戦していた。槍で攻撃を捌きながらも決定打が決まらなかった。
「隙がない……3人相手はきついですね」
バシューン!!
大きな盾の紋章の魔方陣が攻撃を防いでいく。私は「全くびくともしないのでは?」と思う。劣化した奇跡であるがそれでも非常に強力だった。それよりも女王陛下の容態が気になった。遠くで膨大な魔力の衝突があり、それの中心に彼女がいることが明白である。途切れた後から。復活した事もわかった。
「くっそ!! 堕天してるくせに!!」
「……ラファエル……何処にこんな力を」
「ラファちん!! ちょっとつよくな~い?」
「……強いのは英魔です。私は戦闘は不得意です。そうでしょう? お姉さん」
そう、四天使でも得意な物は違う。ミカエルは兵士や騎士を司っていた。ガブリエルは慈愛や連絡をウリエルは裁きと預言の解説者であり。文化を司っている。私はラファエルのとき薬剤士として病人を癒す事が得意だった。ミカエルが一番戦うのが強く私は全くだった覚えがある。
しかし、長所を伸ばせばある程度だが強くはなれる。使用出来ないだけである。
「くっ!! 三位一体で行くぞ!!」
「ええ」「いっくよ!!」
3人が何度も何度も行って来た浄化の熱線を私に向けて打とうとする。それを避け、防いでいるのが今の状況だった。拮抗した力により……決着がつかないのである。いや、決着をつける為の方法が使えないのである。
「隙を見せてくれたらな……」
「隙を作ればいいのですね?」
「はい……はい!?」
私は後ろを振り向く。驚いてその姿を見て槍を握りしめる。そう、トラストさんが盾を持ってそのまま私の前に出る。
「あれを防ぐので……あとはお任せします」
「ど、どうしてここに!?」
「それは後でいいでしょう?」
「………わかった。時間を少し貰います」
私はスッと胸で押さえていたペンタンドを取り出し。その中にある小さなビー玉のような薬丸に黒糖でコーティングした物を取り出す。それを……口に含む。
「くっ!! お前は!!」
バシュウウウウウン!!
3人がトラストに向けて魔法を撃ち込み。その向けている隙に含んだ薬丸を噛み砕く。ジュワァーとした音ともに体に疫病に侵食される。紫な手に槍が紫色に変色し感染する。
「3……2……1……滅びの疫病蒸かし……」
「ら、ラファエル!?」
その異様な光景に彼女たちは驚いただろう。そう……これは恐ろしい物だ。そして……ドーピングによっても力も湧く。
「ち、ちかよるなぁあああああ!!」
「怖がって……これが病よ!!」
ミカエルに一瞬で距離をつめて。槍を振り、少しだけ傷をつけたあと。ウリエルが槍で助ける瞬間に槍をつかんで唾を吐く。
「うわっ!? ばっちぃ……こいつ唾はき……!? うぐぅ!?」
「……あががが!? ら、らふあ……なな……なにを……」
「ミカエル!? ウリエル!?」
ガブリエルが慌てて悶える二人に近付く。その近付く時に私は笑みを向けた。右手でガブリエルを掴まえる。3人がいるからこそ無理だったが今はもう一人だけである。
「あぐ!? 離せ!! ラファエル!!」
「名前はルシファーです。どう? 姉さん苦しい? はじめての病は苦しいでしょ~天使は病に絶対の耐性がある。だけど………これはそんな耐性は関係ない。魔力を喰らい。肉を喰らい。最後は菌も喰らうほど強力なんです。免疫があっても危険です」
「あぐ……あが……か……」
ゆっくりと3人の体に穴が空いていく。暴れるラファエルは喉がつぶれ声が出なくなり。手は塵となって朽ち。私の目の前の頭も半分に欠けた。その瞬間投げ捨て。空中で見えなくなるほどに小さくなり天使は全く姿形を残さずに消える。
「ぐふ……」
「ルシファーさん!?」
「来ちゃダメ!! 触れたらダメなの!! 接触感染だけの特化型だから!! ふぅ……ふぅ……大丈夫。大丈夫よ……何度も何度もかかってるから。んぐ」
私は再度胸から同じ薬丸を口に含んで噛み砕く。するとゆっくりと体の中から力が抜け。元通りになっていく。何度も何度も人体実験を自分の体でしてきたので慣れっこである。落ち着いた時に私はトラストさんに向き直った。
「もう、大丈夫。解毒した……」
「……」
「引きました?」
「いえ、毒を塗る攻撃はよくあります。毒に驚いてます」
「ふふ、なんでも治す薬を作るために一番強く生み出したウィルスでね。これを治す薬は大概の物を殺せる劇薬を開発できたの。ただ……劇薬過ぎてね。実用化は無理だったの……薬で死んじゃうのよ。それよりもトラストさんはどうしてここに?」
「天使が降りて来なくなり……手が余ったのです。なので苦戦しているルシファーさんに助太刀と思い………ルシファーさん、どうしました?」
「……………………」
私は明後日の方向へ向き。殺した姉に言う。
「お姉さんありがとう!! 私は今、幸せだよおお!!」
「……??」
「トラストさんに助けられちゃった」とご機嫌になり。私はネフィア女王の事を忘れるのだった。
*
天使が引いていく中で……英魔族は耐えきった事を知る。多くの犠牲を払いながらの勝利が何処とからも伝えられた。しかし、その中で獲物を探すトキヤが撤退する天使を追う。
「……」
「おりゃ!!」
その途中、大きな赤黒い巨体のドラゴンに進路を阻まれて体をぶつける。体勢を立て直し向き直るとヘルカイトは大きく怒鳴った。
「深追いするな!! 鋼竜!!」
「どけ!! ヘルカイト!! 喰いたりない!!」
「怒りを静めろ……お前は他にやるべきことがあるだろう!!」
「ヘルカイト!!」
「退かぬ!! お前はトキヤだろう!! やるべきことは他にある!! ワシでは無理なことをな!! 鋼竜……都市を破壊するだけがお前じゃなくなっただろうが!!」
ヘルカイトがボコッと拳骨を落とす。
「痛いな!! おい!!」
「お前は誰の王配だ?」
「俺はネフィアの王配だ!! だからこそ許せるか!!」
「許さなくていい!! だが!! 王だろう!! 眼下を見ろ!! お前の愛した者が護ったものはなんだ!!」
「………」
鋼竜は下を見る。多くの英魔族が鋼竜を見ていた。それを見ていくとゆっくり熱が静まっていく。
「わかったか? ワシでは無理だ。ワシは自分の都市でいっぱいいっぱいだ。それに……お前の声が重要だ。王配であるお前の声が
「……わかった。俺が行こう」
鋼竜は天使を睨み付けてイヴァリースの城に向かう。向かった場所はネフィアが皆に危機を伝えるために入った部屋だった。
部屋の窓を割り、鋼竜は滑り込んでその魔方陣の上で都市に向かって話を始める。
「魔王ネフィアに代わり。勇者トキヤが伝える。魔王ネフィアは重症を負いながらも勝ち。我々の執念で亡びは回避した。戦闘終了……以後族長に従い復興のために立ち上がろうぞ」
それだけをトキヤは喋り。これから自分のするべき事を理解する。
「都市を破壊するのを遊んでた俺が、今度は都市を作るんだから龍生はわからないな。いや、人生か?」
そう独り言を溢し、王の代理を勤めなくちゃいけないことを察したのだった。




