魔王と鋼竜・聖樹と土竜.
ネフィアに呼ばれてたどり着いた場所は激戦の後が深く残り、大きな爪痕が残っていた。大きな剣に黒い鉄の塊にドロドロに溶けたあとに固まった大地にネフィアが立っていた。全く動かず……ただただ目を開けて何も見ていないがただただ目を開けていた。
バサッ……
「ネフィア……」
「………」
「ネフィア!!」
俺は声を出し彼女を呼ぶ。爛れた手で彼女の頬に触れ、頭をぶつける。
「起きろ……ヴァルキュリア」
「……んあ……あ……ウルツワァイト?」
ネフィアが頬に左手で触れ、笑みを浮かべたあと目を閉じて脱力する。糸の切れた人形のように俺にもたれかかる。
「……大……丈夫じゃないな」
「うん。疲れた……ねぇ。ネフィアさんに会ったよ」
「そうか」
「彼女からさ……継いだ。私は継いだんだ」
ネフィアはニコッとしそのまま気を失う。やりきった顔に俺は背負った。先ずは安全な場所につれていこうと考える。
「何処へ行くべきか?」
そう、考えていた時。空で大きな竜が緑の髪の女の子を背負い降りてくる。巨大な宿り木の槍に天使を数体刺し吸収していた。確かに無限に沸くような奴にはそういうのが効くのだろう。動けなくすればいい。
「ユグドラシルにワン・グランド」
「トキヤご主人。ちょっと白髪増えたな?」
「そんなことよりもワンちゃん!! ネフィア姉さんをくわえて!!」
「何処へ持っていく気だ?」
「私と母とお婆さんの木の元へ。すぐに回復させる。今はまだ戦い中だから……危険」
「わかった。じゃぁ……ネフィアを任せていいか?」
「トキヤのご主人。どこへ?」
「空へ……ちとな。怒りが収まりそうにない!!」
俺は鋼竜になり。空に飛ぶ。天使を喰いに戦線復帰するのだった。
*
土竜は口にくわえていたネフィアをユグドラシルの木の元へおろし、人がいない事を確認した。
それをユグドラシルの女人像は頷く。
「ワンちゃん!! あっち向く」
「ワン!!」
忠竜はそのままおすわりし明後日の方向を向いた。そして、一人、一人。マナとエウリィが葉のベットの横になったネフィアに集まり。服を脱がせる。ドロドロに固まった血がへばりつく。
「うわぁ……重症」
魔法を唱えようとする孫にマナが問う。
「何処まで回復させる? ユグドラシルちゃん」
「死を回避するぐらい。とにかく気絶したままで」
「ユグドラシルちゃん? 起こさなくていいの?」
「起こしたらまた戦いに向かってしまう。そういう人」
「わかった」
「ふふ……ネフィアさん。変わらないですね。直進するとこ」
3人が3人。祝詞を謳い、ネフィアを癒す。癒す方法は生命力促進であり。生き物の力を大きくする。
「ちょっと……これ生きてる?」
「えっとよく立ってたね。グチャグチャじゃん」
「私たちよりも……生身が強いのに」
謳い終えた後に3人は驚いた表情をし、ネフィアを見た。息をしてるように見えないが生きており。生き物なのではないのではと疑問が生まれる。
「……でも、特別の何かではある。私の友達だから。よし、一命はなんとかね」
マナはマントをネフィアにかける。そして葉っぱで彼女を包み魔方陣で封印し。外敵から護る。
「本当、ネフィア姉さんいないと纏まりが悪いから。生きてて良かった」
「……そうですね。ユグドラシル」
「ユグドラシルちゃん、エウリィ。なんかわからないけど戦闘は終息してるね。一応……多大な被害は出たけど。なんとか……なんとか……なったね」
「はい。マナお母さま」
「うん。マナばぁちゃん」
「………姉さんと言いなさい」
3人が気抜けた話をし、それを暖かく土竜は聞いていた。土竜はユグドラシルが母もいない、親族は父親だけだったのを知っており。その暖かい空間を邪魔せずに黙っておすわりを続ける。
続けるつもりだった。エウリィがおすわりしている土竜の前に来るまでは。
「ユグドラシルを今まで護っていただきありがとうございます。ユグドラシルの母。エウリィです」
「……えっとこちらこそ。お世話になってます」
「それで……その。娘とは何処までの関係でしょうか?」
「主従関係です」
「娘を支えてくださってるのですね」
「……ワンちゃん。私はわかりますか?」
土竜の目の前にユグドラシルに似たマナが来る。
「はい……夢でお会いしました」
「あっ!! 覚えてくださってたんですね!! ありがとうございます!!」
「………じぃ~」
ユグドラシルも土竜の前に来る。土竜は3人の木を見つめ続ける。
「ワンちゃん。その……私。実は夢で会ったときにね……」
「マナのばあちゃん!! 黙る!! これ私の人!!」
「ユグドラシル……人?」
「彼氏!! 未来で私と婚約したんだからダメだよ!!」
「!?」
土竜はいきなりの話に目を剥く。ユグドラシルはフンフンと憤り。マナを睨む。
「ぐぅ……ユグドラシルちゃん……乗るぐらいは許して? ね?」
「いや!! 絶対に私以外を乗せたくない!! 他の女の臭いをつけるなんていや!!」
「お母さんも乗ってみたいけど……そうね……」
「ううぐぐぐ…………ユグドラシルちゃん。あなたの物は私のものよ」
「えっ? マナばあちゃん? ボケた?」
「ちょっとエウリィ!!」
「えっ!? マナお母さん!? 私ですか!?」
ガヤガヤと賑やかになる3人を見て土竜はサッと飛ぼうとした瞬間。
「「「つるの鞭」」」
ヒュルルル!! びったーん!!
「うぐっ!?」
「後で乗ります」「挨拶がまだですね。娘をどう思ってるか……これからの事も」「お母さんに紹介してない」
「モゴモゴ!? モゴモゴ!?」
シュルルルルル
土竜は根っ子に捕まれてグルグル巻きにされる。そして、土竜はネフィアを頼って鳴く。そこにユグドラシルが顔に近付きしゃがむ。
「ネフィア姉さんに頼っても……買い取ったからね。私のお小遣いで……ふふふ。ワンちゃん。いっぱい種子作ろうね?」
「!?」
土竜は大きな体を震わせるのだった。




