世界壊しの嵐竜.
作戦実行する中で多くの兵士が表へと駐留する中。私は一人で岩を割るほどボールを投げて鍛えた後。作戦会議に出席する。「出席する」と言っても数人の居残りだけである。残っているのはスキャラ族長とエリック族長だけである。
その二人から聞くと旧人類の施設はあそこから動きがなく。何もせずに包囲は完了したらしい。
作戦内容はまぁ聞いていない。
「今回……私は留守番でいいのかしら?」
「いいと思います。今回は族長が魔王に頼らずとも勝てる方法と言う事で素晴らしい成果を出すでしょ」
「そうですね。いいと思います。頼ってばかりではね」
「安心しましょうか……」
エリック族長が用意してくれた紅茶を啜る。「何もない事が幸せだなぁ」と思う今日この頃である。エリック族長がスキャラ族長に話しかける。
「それよりもスキャラ族長……可愛い子が居ますね。あの投手」
「ミライちゃんですか? 残念ながら……ダメです」
「スラリン様は?」
「スラリン姉は先約がいます」
私は紅茶を吹いてしまう。
「スラリン……婚約者いるの!?」
「はい。スラリン姉さん……ミライで何やら結婚したらしいですね。相手は何十才も離れた若い魚人の子です」
「めでたいわね。あなたは?」
「……………………………」
「女王陛下。そういえばヨウコ嬢が未来で都市に大きい被害を出す大変な事件をお持ちしますので覚悟してください」
「エリック族長!? いま!? それいいますか!?」
私は頭を抱える。「ネフィア・ネロリリスよ頑張れ」と思う。スキャラ族長はぶつぶつとスラリンの事を愚痴っていた。なんかあるのはわかったがきかないでおこう。
「まぁ……いいわ。未来よ未来……」
開き直り、紅茶を飲み干して私は立ち上がる。
「女王陛下? どちらへ?」
「そうね……孤児院廻りでも」
私は最近、英魔の子供に会いにい行くことが多くなっていた。流れ着く者には向こう側で生まれてこなかった子も含まれている。そういった子と触れ合うことで目指すべき場所への意思を固める事が出来るので何度も何度も会いに行っていたのだ。
あとは……お腹を触り、「子が産めない体なのがそうさせるのでは?」と思う。
「……ヴィナスもバカね」
そう愚痴り私は羽を広げた。
*
「……ネフィアもバカね」
大陸の上空。ぽっかりと空いた至るところにある大穴。英魔が奪った土地は大きく穴が開く。深淵に続く穴だと思われていた。しかし、その穴に……小さな光が漏れている。
バサァ!!
「ふん。続いているな。あの噂で聞く島に見えるぞ。アベコベな大地が」
「ふーん、ここがあの女の本拠地ね」
上空に集う嵐竜メイルシュトローム。女神ヴィナス。腐竜ラスティとその軍勢はその穴を見続ける。
「ネフィアは暗い中で光を焚き、我らに見せけた。ならば行ってやらん事もない」
「まぁ、何処でも現れる奴等の大元が叩けるならいいんじゃない」
「はい……だからお願いしたんです。いまここで彼女を倒しましょうと。『旧人類側を倒そう』と大量に出払っている今が好機です」
「はん……女神の案に賛成したくないが。ワシのもんをここまで奪われるのも癪だ。王は一人でいい!! 神もな!! ヴィナス!!」
「ええ、すべてが終わったら。旧人類、人類とあなたのその竜族と戦いましょう」
「ククク……」
嵐竜が不敵の笑みを浮かべ。腐った竜にその笑みを向ける。
「お前はどうだ?」
「………寂しくないならどっちでも」
「なら、従え」
「……」
腐竜は頷き。彼が指揮する死霊術のスケルトンドラゴンやドラゴンゾンビ等が穴に向かった。そして腐竜自身も飛び込む。
「私たちも向かいます」
「ええ、向かいなさい」
そして、女神ヴィナスがガブリエルに指示をし天使たちも穴に飛び込む。
「せっかちだな!! ククク!! 我に続け!! 生きている物は全て喰らえ!!」
それをみていた嵐竜が竜を引き連れて飛び込んだ。
穴の中に空が飛べる種族が飛び込む。ネフィアを倒し、荒すために。
*
天啓と言う言葉がある。金竜ウロはそんなことを考えながら予言を何度も何度も思いだし、慌てて流れ着く島に帰ってくる。旧人類との戦いが始まる前に見えてしまったのだ。
結果、作戦は延期。皆が帰るにも時間がかかるため金竜だけが霧を抜けてネフィアの元に向かう。
ネフィアは孤児の子とキャッチボールをして遊んでいたが金竜のその焦った姿に驚き。キャッチボールをやめて話を聞くために近付く。
息が荒れる金竜にネフィアは問う。
「どうしたの? ウロさん……今日は作戦開始で……」
「ネフィア!! あなたがここで負ける予言があったの!! 嵐竜メイルシュトロームに!!」
「えっ!? どういうこと?」
ネフィアが竜のままの金竜にキリッとした表情を向けた。
「今日、この場に奴がくる!!」
「ど、どうやって!?」
孤児院の子供たちをみる。ここは安全と思っていたネフィアは汗をかく。どうなるかを……最悪の結末を思い付く。
「穴に堕ちるとここに通じている。あの疑似太陽が穴から見えるんだ」
「な!?」
落ち度に気付くネフィア。そして、金竜ウロが顔を上に向けた瞬間だった。
「来た!!」
ガアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオン
膨大な竜の咆哮が流れ着いた島に響く。ネフィアは顔を上げ、竜と天使の群れにその瞬に察した。
空き巣を狙われ、そしてこの日。決戦となることがわかるのだった。




