夢魔は皆に夢を与えるいいお仕事です。.
流れ着いた者たちはある思念の空間に集まる。婬魔、夢魔が用意する空間であり、現地の夢魔が見たことを仲間の夢に移し夢魔同士が夢で繋がる。
その夢に皆が色んな手段で入り込み。現地の姿が映る。空間は自由であり大きな廊下の中だったり個室だったりと歪んだ空間形成を行う。その中でには多くの種族が顔を出す。例えば……
「すごいですね。未来の英魔族は」
「本当ですね」
「お母さん。おばあちゃんこっち」
ユグドラシルの3人姉妹。
「まだ間に合うかな?」
「ランスさん。間に合いましたね。試合開始が遅くなってます」
「そうか……どこ行こう?」
「息子のチームに」
「わかったリディア」
ランスロットアラクネ夫婦。
「こっち。皆さん、それでは天使族解散」
「ルシファー天使長。何処へ行く?」
「私は……白い燕かな」
「雑魚鳥のとこかぁ」
「もういっぺん言ってみろ。空島に括って吊るすぞ!!」
新しい英魔の天使族たち。
多くの者が夢に訪れ、別れていく。
*
ある大きい大きい部屋に色んな種族が集まり。ながーいソファに座り声を出す。小さな声でも皆の耳に届くほど夢で繋がった空間で賑やかに談笑が起きる。
「集まったな……」
「集まったな……」
「お前らどこよ。俺、家」
「空の上で哨戒中」
「仕事中かよ!?」
「相方が操縦だから問題ない」
「安心しろ、俺は衛兵で居眠りしてる」
「ふぁあああああ!! 働けよ!!」
「仮眠が重なったからな」
「ええときに見れんなるな」
「いやや……おきねぇ」
空間には大小、場所が違う場所で夢に入った者が笑顔で肩を叩く。一応この夢部屋は大洋ホエールズとデビルカープズの試合である。目の前に大きな映像が流れ、真っ二つに赤と青の衣類を着た亜人が所狭しと球場に詰めかけていた。
「大洋ホエールズ入ってるな……どっから湧くねんこいつら」
「いや、めっちゃ増えたぞ。それよりも赤い方も多いで……今」
「大洋!?k ふぁあああああああ。マジで4番巨豚やんか!? てか!? ほぼ若い選手ばっかやんけ両方!?」
「あかん……やっぱ先発女王陛下やん」
「始球式と先発と指名打席立つやんか!? やっぱ女王陛下やな……ほんま。生まれが違ってたら……野球選手で伝説残せたのに」
「そういう世界線見てみたいな」
画面に写される状況で亜人たちがぶつくさと言い。審判が大きく手をあげて試合開始の合図をする。その瞬間。夢の中で声が重なる。
「「「「「「「やきゅうのじかんだあああああああああああ!!」」」」」」」
膨大な声量が夢を維持する夢魔の女の子にダメージを与える。
「ぐふぅ……すいません。集中した声援はまだやめてください。維持できなくなります……もう少し落ち着いてください」
夢の中で注意喚起が流れる。なお、司会も含んでいるので現地の夢魔によって能力維持の甲乙がつけられてもいた。
「では、登録番号44。魔王が大きく振りかぶります」
「おっ……あのデーモンええ球投げるやんけ」
「デーモンの癖に技巧派で草ぁ」
「ばかやろ……速球みてみビビるで……ほらぁ!!」
「おお、速球もええなぁ。デビル結構ええやん」
「はは、3人凡退かぁ~ええでええで」
ネフィアが投球を始める。相手は人型悪魔でバットを構えて始まった。その1球にガヤガヤと話していた声が静まり……3球で仕留める。
「魔王。あれ……ストレートか?」
「いや~3球ともストレートでしたね………」
「ふぁあああああ、あんな球投げられたら絶対無理やんけ!?」
「やっば!? スライダーめっちゃ速い!? 緩急うめぇ!?」
「あかん……バットが当たらん」
「やべぇよやべぇよ」
「もう1回裏終わったやんけ」
「投手戦やな………」
「4番豚巨かぁ……」
「おおっとボテボテだが!! 全力疾走!?」
「お前ら……安心しろ……昔のあの豚巨じゃないで」
「でも、アウトやん」
「でも、やる気はある!!」
「やる気じゃぁ……ヒットはでねぇ……ふぁあああああ5番魔王やんけ!?」
「おっ!! 戦うの見たいやで。ワイの赤鬼!! 見せてやれ!! デビルのエースという………」
「とらえたあああああああああああ!?」
「ふぁああああああああああそこボールやろ!? なんですくってはいんねん!?」
「でたぁ、女神打法……ウィンディーネもようやるんよな」
「お客さま……叫ばないで……維持がしんどくなります」
英魔国は静かな夕方だったが。夢の中は熱い熱狂で木霊するのだった。
*
「ああ、結局。デビルカープ負けたな……」
「いや、ズルい……魔王個人軍やんけ……」
「今回。初戦らしくピリッとして終わったな」
「他のチームがまだ試合してるし見てみようか? 勝ったから気分ええのでワイが視聴寄付税払ったる」
「スライムの姉さんあり……どうや……」
【オークジャイアンツ10ー12リザードタイガーズ】
【エルフダークドラゴンズ6ー7エルフホワイトスワローズ】
「「「「ふぁああ!? 大炎上やんけ!?」」」」
「やべぇ……他ファンから聞いたら全盛期選手9人やからめっちゃ打つんやって。あかん。アツアツや」
「ふぁあ!? 投手より野手のがヤバイんか!? どうなってんねん!!」
「ストライク入れるとそこを打つんやって……」
「胃袋しぬぅ!?」
「他ファンがかわいそうやな……」
「他人事やけど……終わったら相手はこいつらやぞ」
「ひぇ……」
夢の中での英魔たちは熱狂的に盛り上がったのだった。
*
私は試合後。チームの皆に御礼を言ったあとに敵チームにも顔を出す。すると……何人か握手をしたあと。一人泣き晴らした悪魔が顔を出す。人型の若い悪魔がベソをかく。
「魔王様……負けました」
そう、先発で9回まで投げたが私が一本甘いのを仕留めたために負けてしまった投手だ。
「はい、勝ちました。ですがこの嬉しさはあなたに勝ったから嬉しいのですね」
「……ありがとうございます」
「これからも応援してます。頑張ってください」
「はい!! あとトキヤ殿はどちらに?」
「『何処かで見ている』と言ってました」
「わかりました。いつかトキヤ殿の期待を裏切らない選手でいたいです。『見ててください』と言っておいてください」
「……伝えておきますね」
その後、私は握手会とサイン会を行い。他のチームの大暴れを聞いたとき。英魔国の明るい世界に少し熱を貰えた気がしたのだった。
*
「お疲れさまネフィア……ヤバイなお前……女神やめて野球選手になれば?」
「無理ですよ。死球くっそ痛かったですし、まだおしりがヒリヒリします。それに私の仕事は皆の未来を取り戻すです。あと……トキヤ。選手名、赤鬼が『見ててください』だって」
「あー……あっちのトキヤがな……頭の中が赤いんだわ。『弱い時から応援してたんだ』ってな……」
「そうだよね。そんな気がした。でも……見てあげなよ」
「わかってる」
「でっ……その袋なに? なに買ったの?」
「ユニフォームレプリカ」
「どこの?」
「あ……あか……」
「………」
「………」
「応援しなよ」
「もちろん……俺の血は赤い」
英魔国に野球文化が復活したのだった。




