ネフィアの練習..
未来、平和になった英魔国は野球文化が発達したらしいとネフィアは説明を受ける。理由は「軍縮しなければいけない」と言う意見が出だし、それの反論、資金不足解消、騎士団存続のために見せ物などで税金を貰い、国民に示すためにやりだした行事がある。しかし、行事だったのだが……いつしか馴染み。新しい文化となって根付くとのこと。
とにかく「金策だったがいつの間にか文化となってしまった」と言うのが野球らしい。
「まぁ……死なない戦いなら大丈夫でしょう」
許可をした後で用意周到に事細かに説明を聞き。大人しく彼女は頷く。エルフ族長は笑みを溢しながらワクワクした表情で答えた。
「まぁ、今からです。奇跡的に歴代のベスト選手たちも流れ着き。万年最下位の大洋ホエールの選手さえ層が厚いですからね」
「エルフ族長……今年最下位はそっちじゃないか?」
「イエイエ。その座はお譲りします」
すでに牽制し合う族長とその代理人にネフィアは立ち上がった。
「その、今から練習したいのですけど……どこか良いとこないですか?」
ネフィアのお願いにダークエルフ族長が答える。他の者も口を出そうとしたが閉口する。
「近くに練習場がありますのでついて来てください。エルフ族長。会議はお開きでいいな?」
「はい。日程調整は任せてください」
「まぁ、今度は都市と都市が近いから移動は楽だな」
「ええ、そうですね」
ダークエルフ族長の後ろを私はついていき。トキヤは「他に仕事がある」とエルフ族長と打ち合わせに入ってしまう。少し、「見て貰いたい」とも彼女は思ったが「トキヤにはトキヤの仕事があるのだから我慢しないといけない」とネフィアは誘う言葉を飲み込み静かに黙ってついていったのだった。
*
「こちらです」
「し、室内訓練所……」
「はい」
ネフィアは城の一室に作られた訓練所に驚く。土は丁寧に敷かれ少し盛られた土の上で何人か既に練習を行っていた。
「既に……」
「ええ。既にいらっしゃるのですね。女王陛下は個室でよろしいですか?」
「ええ」
ダークエルフ族長とネフィアがその土に足を踏み入れた瞬間に心臓が跳ねる。驚いたネフィアは胸を押さえた。
「大丈夫ですか?」
「あっ……うん……なにこれ? なんか変わったような気がする」
「聖域の効果でしょう。ここに入った瞬間。私たちは魔法の効果が一切無くなります。結果……本来の体の力のみに頼らないといけないのですよ」
「知らなかった……」
「はい。そして……今の女王陛下は結構なノーコンだと聞いてますし、知ってますので。私めが球をお受けします」
「玉取ってくれるの?」
「捕手と言う物です」
「へぇ~」
「……女王陛下。お忘れでしょうか?」
「あっ!? いや……はい」
ネフィアは慌てて知らないことを訂正しようとしたが知らなかったままではいけないので正直にダークエルフ族長に言う。ダークエルフ族長は頭を押さえた苦々しい顔をしたあと。ヴィナスに対して憤りを見せて愚痴る。そしてそのまま、ネフィア用のグローブを渡し、ダークエルフ族長は防具をつけていく。
「防具いるの?」
「魔法の効果が消えてしまったので当たり所では死にます」
「ふぁ!?」
「直接当てるのは極力やめてくださいね。女王陛下は身分を持っての喧嘩投方は悪です」
「は、はい……」
ネフィアはネフィア・ネロリリスの投方を思い出す。「当てに行くような感じはしなかったのだが……」とネフィアは疑問に思う。
「女王陛下……今日は少し調子が悪いでしょうか? あまり突っかかったりせず……」
「あっいえ!! 元気です!!」
「…………ん………まぁわかりました」
ネフィアはそのままダークエルフ族長を押して個室に入る。集中できるように1対1で投げられる用に作られた場所だった。
投球位置にネフィアはつき、ダークエルフ族長はバッターボックスにしゃがんでグローブを構える。
「真ん中構えておきます」
「………うん」
「では、どうぞ」
ネフィアはボールを持って背中を向ける。その瞬間にダークエルフ族長の息を飲む声が聞こえた。ネフィアはそのまま気にせず。体を横に向けそこから大きく捻り背中を見せた瞬間。弓の矢を離したように力強く体を回転させ、真上から叩き落とすように大きく振りかぶった。
球は真っ直ぐに進み。大きな音を立ててダークエルフ族長のミットにおさまる。
「………もう一回お願いします」
シュッ
ダークエルフ族長がネフィアにボールを渡す。そして今度は外郭低めにダークエルフ族長はミットを構えた。そのミットに向けて同じようにネフィアは投げつける。
バッシーーン!!
皮のボールがおさまるいい音が響き。ダークエルフ族長が慌てて面の防具を取りネフィアに向きなおる。ダークエルフ族長の厳しい顔にネフィアは「何がいけない事があったのか?」と思い萎縮する。
ダークエルフ族長はネフィアが萎縮するのを見た瞬間に確信へと変わった。
「女王陛下……少しいいでしょうか? 気のせいじゃないでしょう……女王陛下……あなたは……『いったい誰ですか?』」
「え!?」
ダークエルフ族長の言葉にネフィアは不意をつかれ言葉を出すのが遅れた。
「い、いいえ。ネフィアです」
「………女王陛下です。しかし………細部が違いすぎる。特に球の質が……違いすぎる。ネフィア様。訓練後。お話ください」
「………はい」
ネフィアはダークエルフ族長に己が偽物であることがバレてしまったのだった。
「何が違ったのでしょうか……『完璧に真似た』と思ったのに……」
「全く投げ方は同じでしたが。しかし、女王陛下の球は回転が甘くブレる癖のついた重い球です。今回は……真っ直ぐコントロールもよく。回転がしっかりとかかりノビがありました、軽い球です。全然違います」
「うぐ……」
ネフィアは変な所で違いが大きく出てしまったのだった。




