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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第零章中編 ~深淵の大穴、捨てられた大地から目覚めた魔王~
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堕天使ルシファーの憶測.


 ネフィアは帰宅後から数ヵ月を平穏と共にすごす中で玉座に呼ばれた。そこで島の現状の報告を聞いた。報告に上がったのはトキヤだけであり、ネフィアは静かに話を聞く。


 内容は族長が表だって陣地取りを行い島の拡張に尽力していること。


 一度産み出した流れ着く土地たちは戦線拡大と伴い大きくなる。そして……族長も大体が流れ着いた。商業都市ネフィアをも奪い取る。捨てられた都市オペラハウスや獣族の都市リザード等も島に流れ着く。


 ネフィアは席に座っているだけで族長たち、特に海族たちの活躍が著しく。トントンと勢力が増えていく。


 何もせず、任せるだけで彼女の配下は世界を壊していった。


「ネフィア……王国勢力と女神勢力に竜勢力と旧世代の人類だけが残った。地上主要目標はほぼ奪い取ったな」


「ええ……何も私が動かないでも。そこまで行くのですね。トキヤ」


「ああ。九代族長も集まった。戦力は揃った……何処を攻めるかを今度は決めないといけないし……色々と編成がな……」


 トキヤの言葉にネフィアは頷く。しかし、ネフィアは不安がよぎった。被害も出ているが勝ち続けていた。その勝ち続けていた結果が非常に不安になるのだ。


「トキヤ……勝ちすぎでは?」


「ああ、強いな……特に海亜人の飽和攻撃理論は恐ろしいし、九代族長たち一つ一つが国家レベルの軍持ちだ。本来はそれらで戦争し合う筈だった……全くお前の求心力の成すことだよ」


「うむむ……本物の私はどれだけなのよ」


 ネフィア・ネロリリスの恐ろしさを味わう。


「わっかんねー。でも、世界を取り戻そうと我らは勝っているのだから、今は喜ぼう。技術も増えているし、新しい物も開発されている」


「……一度大きく会議をしましょうか」


「ああ。そうだな。全員に伝える。じゃぁな」


「ええ。トキヤ。今日は帰ってくる?」


「帰ってくる」


「わかった。ごはん炊いておくね」


 ネフィアはフワッと玉座から降り、彼に抱きつき、そして離れる。離れ、トキヤが背を向き玉座の間を離れるときに天使ルシファーとすれ違った。ルシファーはトラストのサイン入りの愛槍を持ってネフィアに謁見する。


「ただいま帰りました。ネフィア様」


「おかえり。天使族は増えたのね」


「はい。堕天するものはわかっておりますのでそれを暗殺していけばいいのです。ネフィア様……多くの天使からの報告書をお渡しします。ネフィア様だけに他言無用で読破後は焼却をお願いします」


「焼却?」


「はい。いつも秘匿とする書は燃やしております。ネフィア様の頭を記録庫とする計画もありました」


「忘れるわよ?」


「はい。だから全く進みませんでしたね。今は……無い記録としてます」


「……もらいます」


 ルシファーから紙の報告書を受けとるネフィア。それを見たあとにルシファーを見る。


「説明しますね。焼却してください」


「わかった」


 紙は燃えて灰となる。そしてこの世界に女神の能力を記す紙は消え去った。


「ヴィナスの能力は……少し恐ろしいわね」


「はい。勝てるかわかりません。ヴィナスの能力それは……『ヴィナスの自身の巻き戻し』」


「巻き戻し……」


 ネフィアは静かに説明を聞き入れる。近くにあった黒板をルシファーは用意し説明を続ける。


「一と言う世界が先ず。ネフィア様が勝利した世界とします」


「うん」


「でっ、この世界ではヴィナスは失敗しております。力の発現はきっと負けた瞬間だったでしょう」


「あのときに……」


「理由はもちろん。もっと前に巻き戻しが出来る場面があったはずです。何かの理由か、『力によりヴィナスは過去に戻ることが出来た』と考えます」


「過去に戻ったことの証明は?」


「ネフィア様の墓です。ネフィア様を勇者に倒させたあとに天使に監視させていました。異常な恐怖を持ち。天使族や勇者側のトキヤ殿との会話でネフィア様を危険視していました」


「……私はそんなに強いのかしらね」


「強いですよネフィア様。だから怖れた。だからこそ、全員に未来を見せ。『ネフィア様、対、多数の勢力』と言う今の勢力図が生まれております。ヴィナスはネフィア様復活を『予見したのでは?』と思います」


「そうよね」


 黒板に丁寧に文字を書いていくルシファー。そして逐次消していく。


「疑問、いいかしら?」


「はい」


「今も巻き戻されない理由は?」


「黄金の法則で大きな大きな力には対価があるようです。何度も何度も出来ないのが現状でしょう。『世界をやり直すと言う力』は絶対に」


「そうかもしれないね。しかし、『使えない』とは思えない」


「はい。ですからネフィア様……使われる瞬間をどうにか阻止する方法が必要です。そしてそれはネフィア様が手に入れると私は予言します」


 ルシファーは黒板で汚れた手を拭き。ネフィアの手を取る。


「ネフィア様。頑張ってください」


「……丸投げね」


「ええ。ヴィナス様を倒せるのはネフィア様しか居ません。だから……私たちはそれをその決闘させ得る劇場を用意しなくてはならない。ネフィア様は力を蓄えてくださいませ」


「鍛えるだけね」


「はい」


 ネフィアは頷き。自身が五月蝿く指示せずに静かに玉座に座ることにするのだった。







 報告を午前の中で聞き、お昼を済ましたネフィアは一人で都市郊外に出る。


 誰も見ていない場所でネフィアはボールを持ち。壁に向かって投げる。


 真っ直ぐ投げられず四苦八苦するなかで……一つ一つフォームを思い出していた。


 ネフィアの投球方法を。


「む、むずかしい」


 背中を向けての大きく振りかぶる投球は軸がぶれてあまりにフラフラとなってしまう。下半身を鍛えている筈だが慣れてない。


「………」


 しかし、体幹はしっかりしていたため。ゆっくりとゆっくりと投げ方が様になっていく。氷を出し鏡で確認しながらその投球を覚えていく。


 基礎として何度も何度も。壁にボールを叩きつけ。拾い。叩き。拾いを繰り返す。


 何度も何度も投げていく内にネフィアは自身が本物に近づく気がして……ワクワクした。


 何度も何度も投げて行くうちにネフィアはそのボール投げが楽しくなったのだった。








「トキヤごめん……」


「ごはん炊き忘れただけだろ。気にするなよ」


「……ごめん」


「何があったんだ?」


「これ」


 屋敷に帰ってきたネフィアはボールをトキヤに渡す。擦れたボールにトキヤは「ほほう」と言い。そういえばと思い出したようにネフィアに言った。


「始球式だったな」


「はい……変なのは見せられませんから……」


「そっか。ネフィア……期待が重いもんな」


「……はい」


「ネフィア。汗流したら外で食べよう。とろけるハンバーグと言う店があったんだ。そこへ行こう」


「えっ!? 行く行く!!」


 ネフィアは顔と手を上げて「行きたい」とアピールをする。トキヤはそれに笑顔で答えて支度しろと言い。ネフィアは支度する。


 トキヤは汚れたボールを置き。新たな戦争が明日から始まるのだなと染々と感じるのだった。


 事件はすでに会議前から始まっているのだから。








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