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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第零章中編 ~深淵の大穴、捨てられた大地から目覚めた魔王~
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堕ちる天使~新たな天使.


「エターナルブリザード!!」


 ネフィアが天上から氷球を殴り抜き、地面に向けて魔法を打ち出す。氷球はトラストと女神の間をすり抜け、衝撃波と氷の粒を撒き散らして地面にぶつかる。


ピキピキピキ!!


 地面にぶつかった瞬間に大地が四方八方に凍る。撒き散らされていた凍りの粒は鋭利な槍となり雨のように時間差で地面に向けて降り注ぐ。吹き飛ばされたトラストは盾で防ぎ、距離を離された女神は手をあげて魔力の壁で防ぐ。トラストの盾の表面で氷が這い。攻撃が治まると同時に雲から雪が降る。


 その雪が降る空でネフィアはトラストと女神の間に割って入った。


「こんにちは。ヴィナス」


「こんにちは。ネフィア」


 6枚の翼で後ろを隠しながら、黒い鎧に身を包むネフィアは真っ直ぐ睨む。宿敵に対して。


「女神さま!! ここは私が!!」


「いいえ。私が行きます」


「ワタシがいくぅ~」


「……ネフィア……その子を手に入れて情報でも聞き出すのかしら?」


「いいえ、どうするかは決めてませんが。ただ戦うだけです。ここで決着つけてもいいんですよ?」


 ネフィアは虚勢を張る。ネフィアは感じていた……今の自分では歯が立たない事を近くで知る。戦いに身を落としたネフィアの記憶が囁く。「強い」と。だが、それを知られるわけにはいかなかった。


「私は強い。知ってるでしょ? ヴィナス」


「ええ、知ってます。だからこそ、ラファエルには消えてもらいます」


 女神ヴィナスの手に青い宝石のような物が握られていた。そしてそれを握り潰し砕く。ネフィアは疑問に思った瞬間、背後でラファエルの悲鳴が響き背後を見た。ぐったりするラファエルをトラストが抱く。


「えっ!?」


 焦った声をネフィアが出し、ヴィナスは笑みを溢す。ネフィアが焦ったのがどうにも嬉しくなったのだ。


「……天使の核です。そうラファエルの……これで新しいラファエルを生み出すのに凄く時間を要しますが。裏切り、不利な情報を流されるよりもいいです」


 ネフィアは今さっきの宝石がラファエルの心臓のようなものだと理解し、苦い表情をする。


「何故、最初から砕かなかったのですか……」


「作るのに時間がかかるの。体だけを消し、新しく体だけを作った方が楽なんです。有限の人間よりも無限の天使が必要だからね。だから……ネフィア」


 ヴィナスが指を差す。


「懐柔しようとしても無駄よ。すべての核は私の手にあり、今のように消し去れる。裏切りは絶対に許しません」


「……あなた。自分が生んだ天使を最初から信じてなかったのね」


 ネフィアが驚いた声でヴィナスに問う。


「あなただって裏切り者はいるでしょう。知恵がある場合……どうしてもエラーはでるのよ」


「私は信じるのが一番と思ってます。だから悲しいですけど裏切りも認めます。それで私と戦っても何も言いません。打ち負かします。そう、自由です」


「蛮族ね」


「蛮族ですが、簡単でいいです。だって貴方のように裏切る人はいないのですから」


「ふふ、本当かしらね……」


 ネフィアとヴィナスは「話が合わない」と考えたあと。ヴィナスが振り向きそのまま去る。ヴィナスも虚勢を張りながら震える手を隠す。「まだ戦う時ではない」と。


「今日は見逃してあげましょう」


 そう言い、天使を連れて雲を切り裂き消えていった。ネフィアは「助かった」と思い気を肩の力を抜く。理由はどうあれ危機は去ったと。


「トラストさん……彼女は?」


「……ダメみたいですね」


「……はぁ……はぁ……」


 ラファエルはゆっくりと魔力となって下半身から消えていく。まるで存在して居なかったように霧散していく。


「トラストさん……そんな悲しい顔をしないでください」


「………すいません。君を護れなかった」


「いいえ……護れましたよ……トラストさんが羨ましかった……」


「羨ましいですか?」


「はい……絶対に護ると言う意思が眩しく……私には無いものでした……迷ってばっかりで……」


「……」


「でも、いいんです……ネフィア様」


 ネフィアが近付く。


「もっと多くの人を救ってください。こんな世界じゃなくて……救いがない世界より……まだ、救いが少しでもある世界を……お願いします」


「うん。約束する」


「……はぁはぁ……トラストさん」


「なんですか?」


「ありがとう……」


 フワッ


 トラストの腕のラファエルは力が抜けた瞬間に光の粒となって散り、雪と共に地面に落ちて溶けていく。「元の魔力となって世界に戻ったのだろう」とネフィアとトラストはわかった。


「天使には自由がないそうです。トラストさん。生まれるときから生与奪を女神が持っているそうです」


「……そうですか。しかし、それが彼女らなのでしょう」


 諦めとも悟りともとれる発言をトラストをし、光となって消えた彼女に対し祈りを捧げようと考えたが……首を振りやめてしまう。


「そういえば……僕の女神は敵でした」


「トラストさん。『陽の導きがあらんこと』をです」


「陽の導きがあらんことを」


 トラストは言葉を口にし、船頭の鈴を鳴らした。その瞬間に霧が生まれ二人を包む。


「ネフィアさん……ありがとうございます。無理を言いまして」


「いいえ。仲間ですから」


「ふぅ……敵いませんね」


 霧が晴れた先の眼下には都市イヴァリースが見えるが二人は驚いた顔をする。何故ならイヴァリースの上空に天使が飛んでいたのだ。


「攻撃!?」


「ネフィアさん……攻撃でしたら兵が動いていると思われます」


「そ、そうよね……トキヤも飛んでいない。なら……」


 人工太陽に照らされた天使達がゆっくりとネフィアの前に並ぶ。ネフィアは彼女らに覚えはなくただただそれを見ていたが。英魔国旗の刺繍をした天使の制服に味方であることに二人は落ち着く。


「焦りましたけど……大丈夫そうですね。トラストさん」


「はい。大丈夫そうです。ラファエルさんが残したのでしょうきっと」


 ネフィアは頷き。並ぶ天使に挨拶を済ませて二人は悲しい気持ちを持ったまま、城に戻ると……蒼い髪の天使が笑顔でお出迎えをし、ネフィアは一言溢した。


「ちょっと……もうちょっと……感傷に浸る時間をください」


「………ネフィアさん。同じ気持ちです」


「えっ……トラスト様……ごめんなさい。会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて……飛んで起きたんです。ごめんなさい」


 ネフィアは使用人にお茶を持ってくることを命じ、流れ着いたラファエルとトラストを連れて面会用の部屋へ向かうのだった。







【聖域の守護者が流れ着きました】










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