AF「小さなランプ」~煌めく都市インバス~..
家に帰って寝ていた時だった。
ボゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
膨大な、膨大な魔力と音に私は目が覚める。窓の外が明るく。トキヤを慌てて起こそうとしたがすでに起きていた。彼もやはり起きてしまうのだろう。
時刻は8時。窓の外を見ると大きな大きな火球がある都市の真上に上がり、見覚えがあった。
慌てて着替え、トキヤに「行ってくる」といい窓から飛び立つ。白い翼に熱を感じながら。私は……都市インバスへ向かった。
*
空を飛び数分後。眼下にあの火球を打ち出したのだろう物が見える。それは蜘蛛のように足があり。目玉のような形状のアーティファクトだった。見覚えがあったのは一度ネフィアがあの放火砲の球をあやつり今のように照らす物を使い夜を昼にしたと言う奇跡を知っているからだった。
だからこそ……その放火砲がゴブリンによって整備されているのを空から見続ける。
「太陽を作った?」
そんな言葉が漏れ、ゆっくりと降りる。降りるとゴブリンの指示していた一人が近付いてくる。
「女王陛下、驚かされましたか?」
「え、ええ………すごく。驚かされたわ」
「一応通知はされてたと思うのですが……今日から8時から16時まで……あの人工の太陽で島を照らすことが決まりました。8時に大きな音がしますが……明るくなるので便利です」
「え、ええ……」
私は空を見ると目が焼けるようにまばゆい火球の魔法に少しだけ……恐ろしさを感じた。あれが……都市に落ちたらと想像すると少し怖い。
「怖い」
「安心してください。事故っても熱くないです。消えるようになってます。陽の女神の慈悲でしょう。ありがとうございます」
「……う、うん」
私にはそんなに高度な火の魔法は扱えない。だから……これは模倣されている。奇跡を全く同じように起こしているだけ。でも……これが私の力と誤解するならば。
「そうですね。模倣です。いいと思います」
そう思わせておこう。
「褒めていただき光栄です。では……仕事が残ってますので」
ゴブリンが去り、仕事に戻る。整備されていくゴブリンの放火砲を私は目に焼き付ける。
これが……多く残っていた時代を想像し、今この放火砲は何を思っているだろうかと考える。
兵器として開発され人を殺める物が、人を救う事の出来る物になっているのを。
「………あと100年200年すれば……付喪神でもつくのかしらね」
*
私は慌てて出てきたため、朝食を取れていない。なので都市インバスですませるついでに気になる場所に立ち寄ろうと訪れる。
昔に比べ、黒い石の建物は変わっていないはずなのに明るいような、澄んだ空気が流れていた。
人々も変わっており、悪魔、人のような人狼に肌を隠した吸血鬼、婬魔、デーモン。そして球体間接の人が行商を行っていた。変わりすぎている光景に昔の記憶違いに……少し違和感を覚える。
「世界が違うよ」と言われれば信じてしまいそうだった。
とにかく暗いイメージはない。そして、皆が私を見るが距離を取ってくれている。「関わらないように」と……変わった料理にコイのフライが出回っていた。コイ……コイ? 話を聞くと養殖のコイと言う人食魚を売っているらしい。味は……なかなか淡白な味で醤油と相性がよかった。
なんで……醤油あるの?
「少し未来の場所なのかな?」
食べ歩きながら……路地に入ると……そこは幻想的な世界が広がっていた。黒い路地は太陽の光が入らないのだろう。だからか……魔力石のランタンが多く吊るされ、足元を照らしていた。その数は多く。黒い石に光が吸われる分すごく多くのランタンが飾っている。
そして、一つ一つ全く同じ形がないようなほど多種多様のランタンが店の商品のように並んでいた。
小さなランタン……大きなランタン……ランプたち。まるで英魔のように多様だった。
そう……路地をランタンを光を楽しみながら私は進んでいく。
覚えている道が全て……光に照らされ……その先に見つける。
広場に立つ、大きな大きな教会を。
「あった!!」
私は多くの巡礼者が行き交う教会に足を踏み入れる。中のベンチは埋まっており、外の人も待っている中で私は進んでいく。気づかれているが……何故か道を譲ってくれる。譲りながら、私に祈りを捧げてくれる。それも……悪魔たちが。
「………あ……これ」
教会の中を、導かれるように進むと3人の像があった。
そう、3人である。その3人に見覚えがある。耳元で誰かが囁く声が……入ってくる。
豊の女神ユグドラシル
愛の女神エメリア
そして………
陽の女神ネフィア
生きている者をすでに神とここは称えていた。そう、私と私の姉様とあの……子を。
「女王陛下……いえ、女神様でしょうか?」
背後から聞こえてくる吸血鬼の声。私は振り向き、翼が勝手に広がる。
「吸血鬼セレファ。来ましたね。待っていましたよ」
目の前のローブを着た。吸血鬼が跪く。
「セレファ……ただいま流れ着きました」
「……うん。任せた。皆の未来を取り戻すために世界を壊せ」
「は!!」
私はただ短く。命令を出すのだった。
*
帰る途中、私はある店に立ち寄った。ふと……導かれるようにその店に入るとそこはランプとランタン屋だった。店員は悪魔の女性でありセイレーンと言う翼を持った悪魔だった。
「はい、いらっしゃい。女神さま」
「あっ……えっと。はい」
ここでは本当に女神と言われる。陽の女神とは違うが……黙っておく。
「いつもいつも……大変でしょう」
「ええ……あの見ていっても?」
「はいどうぞ」
「………これ全部あなたが?」
「ええ」
店の中は暖色に包まれていた。綺麗な綺麗な世界に私は虜になりそうだった。こんなのが都市中にある。
「綺麗……」
一個、小さなランプを持つ。ほのかな暖色の光を放つシンプルな物だ。
「女神さまは昔の人かいね、たしか……なら今の都市インバスは知らないね」
「……ええ。驚いてます」
「そりゃね。私らは明るくなろうとランプで都市を照らし続けた。いつしか……皆が欲しがるようになってね。何処へ行ってもインバスの都市印が入ったランタンとランプが出回ってるよ」
「名産品なんですね」
「まぁね……その陽石はうちでしか作れないからね」
「陽石?」
「魔石に陽の女神を彫るのさ……すると魔力を流すと暖色の色で照らしてくれる石ができる。魔石が無くなるまでね。無くなったら新しいのを入れればいいけど。ここでしかその陽石は生まれないんだ。きっと奇跡の起きた地でしか作れないのだろうね」
私はランプの中を見る。暖かい光に……,私ではない人を思い出す。熱い人だった。そう……すごく熱い人。
「これ……ください」
「ふふ。お代はいらないね。それより本当にそんな小さいランプでいいのかい?」
「いいんです。だって……お手製でしょう?」
「ふふ。そう……一番の自信作。なんでわかったんだい?」
「一番安く一番皆に買って欲しくて小さく。そして……一番。広めたそうに沢山作ってるものですから」
「ふふ……ええそうよ」
「うん……では。ありがとう。いただいてきます。後ですね……やっぱり払います。10個……ここに送ってください」
「どうしてだい?」
「私の可愛い同族の子たちがいるんです」
「わかった……じゃぁ……お代は~」
私は支払いを済ませ。その小さなランプ一個を手に帰宅するのだった。
*
「ただいま。ネフィア? 部屋を暗くしてずっと何を見てるんだ? ランプだよな?」
「トキヤおかえり……うん。小さなランプ」
「へぇ~どれどれ。なんだこれ? 魔石が違う。暖かいし」
「陽石だって………煌めく都市インバスで買ってきたの」
「ふーん……光が揺らめくな」
「うん……普遍で揺らめき。太陽のように暖かい光……私もこんな人になりたいな」
「……………なっているさ。希望のな」
「……そうだといいな。うん……」
私は本当に彼女のように英魔を照らせる光になれるだろうか? 火の魔法がない状態で………
「………綺麗な光」
私は少し……ネフィアの能力を羨ましく思うのだった。
*
【AF「小さなランプ」】
煌めく都市インバスの名産工芸品。中には都市インバスを照らしたとされる夜中の太陽の奇跡を模した魔法で作った陽石が埋め込まれている。色んな手芸者によって作られた物は形も何もかも違い。多くの英魔族のコレクターによって品評もされる。
「住むものたちの意識を変えたい」と言うことで黒く暗黒に包まれていた都市インバスはランプによって四六時中明るく煌めく都市となった。
住んでいる物は闇の者ばかりだが、そんなことは気にせず。光を好み手に入れるため努力する。故に英国の何処よりも都市は煌めき続けるのだった。




