鍛える魔王..
私は一人で訓練所や城壁を走り込んだりと体を動かす。トキヤには黒騎士のように厳しい訓練をお願いした。
報告などは全く受け付けず。部下に一任し……皆が見える場所で体を鍛えた。部下に一任している理由は……情報を集める事だけに注力しているため戦闘は無く。民は生きており、なにもせずとも国は回るからだ。そう、全部面倒をみる必要はない。そういう制度がエルフ族長によって組上がっていた。
だからこそ時間があり。だからこそ……備えて鍛える事を私は選んだ。嬉しいことに見た目が変わらない事が知れ……精が出る。
ご飯は城の衛兵の食堂を利用し、午前、午後とただ体を痛める事だけに注力した。
剣も持たず。ただただ……鍛える。記憶の中で初めて起きている時間に頑張ている。
夜中は拳で戦う衛兵を夢の中に誘致し、教えを乞い。共に組手を行う。トキヤも同じように一緒に鍛えてくれる。
それが何日も何日も続く。
スパルタ王が何故、戦うのが好きになったかを肌で感じた。
彼が声をかけてくれなかったらきっとわからなかっただろう。
私は……運動し、組手をし、自分の合う戦う形を見つけ研究し。それを試す。
そう、いつしか楽しく。楽しく。トキヤにあきられながら鍛える事が楽しくなった。
最初は一人だった訓練も……衛兵やダークエルフ族長も皆が「一緒に」といい。気付けば私の周りには多くの人が集まっていた。
スパルタ国の王は何故信頼されるかを……感じた瞬間だった。だから……今度またあったときは邪険せず。お礼を言おうと思う。
強くなっていく自分がわかる。
*
「ネフィア様……少し休憩されませんか?」
「ん? エルフ族長? そうね……ちょっと休もうかしら」
一人、郊外で花を凍らせ、魔法の精度と力を測っている時に声をかけてもらう。凍った花たちをゆっくりと戻しながら。しっかりと操れている事に満足する。
「ネフィア様をそこまで努力させる理由は何でしょうか?」
「ん? 話さなかった?」
「申し訳ありません。噂しか耳にしておらず直接聞いておりません。強くならなければと」
私は動かない月を見る。
「皆はよくやっている。この前もダンジョンを見つけ攻略したらしいし……皆が皆……役目をこなしている。私は聞いたの『敵は強い』と。なら今は力を貯める。試すときと考えている」
「……やはり。大きな戦いがあるのですね。わかりました。答えていただきありがとうございます」
「うむ。全ての大陸の情報を期待してます」
「ええ、それと……相談です。実は……」
ダークエルフ族長が一枚の報告書を寄越す。私はそれをみながら……顎を押さえた。
「……会議ですか?」
「はい」
内容は権力者同士の冷戦協定の席があることだった。非常に気になる内容であり……深く読んでいく。
「これは……」
「女王陛下……向こう側で女王陛下のことをご存知な方がいるのでしょうか?」
「……いるのでしょうね。名前がある」
私は権力者同士の会議で何故、私の名前が上がっている事に疑問を持つ。
「誰か……知っているからこそ議題に出すのでしょう」
「女神でしょうか?」
「そう、思います。会議室に皆を呼んでください。会議ですよ……そろそろ、動き出す必要がありそうね」
「情報が集まっておりませんが?」
「動く期を間違えてはいけませんよ」
赤いマントを掴み、黒い鎧に身を包む。あのとき……旧友に会うために白金鎧を着ていたが今はこちらが正装である。正直なところ白金よりも重厚な黒鋼の魔法鋼は重いが今の体には丁度良かった。
あれを着るほどに私は白く甘くはないのだから。
「ふふふ……ふふふ……はは……」
「じょ、女王陛下?」
「ごめんなさい……少し楽しくってね」
ダークエルフ族長が少し冷や汗をかいている。そんな彼に私は背中を叩くのだった。
*
俺は名も無き商業都市に来た。全ての中心の都市であり唯一無二の不可侵都市の約束を決め。物資の取引を行う拠点都市。多くの議会を行うために残された都市だ。
その都市の中心。城の議会室に人型に擬態した姿の魔物が並ぶ。
群雄割拠の時代で己の力だけで切り開いた強者達。それを横目で俺は皇帝を護衛する。
俺のとなりに座るのは帝国代表者、女神代表の俺と同じ人間であり皇帝のネリス・インペリウム。多くの策略で登り詰めた女傑であり。人間を統べる王である。連合国地方を言葉で統一し他の勢力と戦っていた。
彼女の右腕でもあるため……よくよく彼女を知っている。非情な性格でもある。
「………恐ろしいメンバーだな」
「ええ、そうね」
メンバーを一人一人見ていく。
緑髪の青年は嵐竜テンペスト。エルダードラゴンであり魔物を従える王。竜王と名乗り。ワイバーンやドラゴンを使役し、誰よりも空を制圧下に置く。
深淵のように深い黒髪の男はトレイン・ヴァルボルグ。デーモン、悪魔とい言う闇の亜人を従い人を虫のようにしか考えていない。この世界を霧に落とした張本人たち。一部の亜人も合流し気付けば奴の父親は魔王となっていた。
そして……そのとなりの男性はツギハギの体で死んでいる人物。嵐竜と同じエルダードラゴンであり。不死者の王。腐竜ラスティと言う。マクシミリアン地方を滅ぼし。己が王として殺した相手を使役する世界最大の兵を有する者である。
最後に対面に座る。魔女はグランドマザーと言われる我々とは違った人間を統べる者。旧支配者と言う者たちだ。昔は占い師で俺も占って貰ったことがあり、多くの相談を受けていた者だったが全て演技だったと言えた。
そう……今この瞬間に世界の王がここに集まっている。
集まってしまった。
敵対し、戦争中の我々が。前線から兵を引き上げたのだ。
「では……集まりいただけましたね」
そして、最後に聖域で待つと思われた女神ヴィナスが現れる。代表としての俺の立場がなくながそれ以上に緊迫した情勢なのだ。
一夜にして都市が消えたのだから。
まぁ……皆が代表なぞ出さず。本物しかでないのだから顔を出すしかないだろう。1月前には考えられなかったことだ。
「「「……」」」
皆の視線が彼女に集まる。ギロッとした睨む視線を。敵意を向ける。
「では、停戦協定の前に私が覚えている情報を公開しましょう。ネフィア・ネロリリスについて」
皆が静かに聞きに徹し……我が女神の声を聞き続ける。
「ネフィア・ネロリリスがどういう理由か生まれた。彼女は真の魔王です」
「……魔王は我が父上だが……と言いたいが俺も名前と何故か強かった事を覚えている」
「そう、覚えているのです。何故か『強かった』と」
トレインが頷きながら。同意していた。そして嵐竜が口に出す。
「……ふん……いかすかねぇ野郎だ。だが……俺もそいつには何故か……心当たりがある。何故かな……お前はどうだ? 腐竜」
「………さぁ、知らないな。俺は……興味もない」
「そうか。人形遊びで満足か?」
「……」
嵐竜が歪んだ笑みで挑発をする。腐竜は何も考えずに無視をした。
「……と言うことで。私は停戦を提唱し手を取り合ってこの世界を護るべきだと思うのです」
「ククク!! 女神!! 何がそこまでお前が危険視するのか知らないが!! 乗ってやろう!! だが、同盟は組まない!! 現れた奴を勝手に喰らうだけだ。自由にさせて貰うぜ」
嵐竜が折れる。俺は驚いた……そこまで危険視しているのは嵐竜も同じ事に。
「……魔王ネフィア。ネファリウスと何か関係が?」
「…………そいつとは違うでしょう」
「ほう? まぁいい……四天王を向かわせればいいことだ」
「腐竜さんは?」
「……土地に入ってこなければいい」
全員がたった一人の魔王の登場で停戦を承諾した。隣の皇帝も同じだろう。この停戦中に力を溜めた者がこの世界の覇者となるだろう。
「……ふーん。嵐竜に何故か腐竜がそっち側。憎たらしい女は皇帝。側近はそのまま父親に魔王を譲渡。女神は『信仰を持ってる』と……ふーん」
「「「「!?」」」」
会議室に暢気な女性の声が響く。女神が鎌を構え。皆が席を立つ。扉がゆっくりと白く霜がつき開いていく。その中心に黒い鎧を着た角が生えた金髪の美少女が不敵な笑みを向ける。衛兵は……凍りついており。氷像となって動かない
前に出会った時よりも鋭い視線と圧力。重々しい動きで、別人のように彼女は前回と変わっていた。
冷たい笑みを皆に向けながら頭を下げる。
「やぁ、やぁ、やぁ~諸君。お久しぶり。一部は黄泉から復活おめでとう。私の名はネフィア。知っているだろう? 一度お前らを殺し………」
ぴきぴきぴきぴきぴき!! ガッシャアアアアアン!!
「あら? 手荒い歓迎ね………」
女神が勢いよく鎌を投げた。同じようにトレインも魔力弾を撃ち、腐竜は爪を投げ、嵐竜は風の矢を放っていた。しかし、厚い氷壁が彼女の前にそびえ立ち攻撃を物理的に防いだ。
「妖精姫のニンフみたいね……」
隣のネリスが俺に聞く。
「勝てる?」
「様子を見よう」
彼女は満足した顔で髪を靡かせる。
「ふふふ、なーに安心して。宣戦布告程度のご挨拶………それだけ。じゃぁ帰るわ皆さん……トレインも後でヨロシクね」
「…………何を」
「貰いに行くから……待ってろよ」
軽い世間話のように彼女は話す。その姿は余裕の現れか大きく見え。そして……全員の敵意を真っ向から跳ね返す。
「では……さようなら」
彼女が氷の壁を生み出し。氷の壁を破裂させる。皆は防御し目線を離した瞬間。黒い鎧の魔王は消えた。
そして……話が終わった瞬間……そらから宣戦布告の紙が振り。挑発をする。一部の王が不可侵の中で彼女に刃を向け直すほどに激昂し、停戦協定にある言葉が付け足された。
深淵の王ネフィアが死ぬまでの間、全てにおいて不可侵とすると。
*
商業都市の城の中で俺たちは声を聞いた。彼女と共にただただ世界を回ろうとし、ここで大きい事象が起きることを拾った。だからこそ二人で潜入した。隣の妻である人は黒い修道服を着ている。
「サーチさん……見えますか?」
「見たよ。ノワールさん……」
俺は黒い布で身を包み。夜闇に紛れて城に潜入した。師匠はトキヤ様である。並大抵の事は出来るように、そう訓練された。
「………よし。だいたい見た。頭に入ったわ」
「本当に便利です。サーチさん」
「ありがとう、ノワールさん……行きましょう」
「ええ……どうやら囲まれたようですしね」
城の窓に捕まっていた俺らの周りに天使が集まり出す。サーチを抱き、そのまま窓から飛び降り、天使が群がる。武器などは何も持たず。ただただ興味本位で顔を出したのだ。
チリーン!!
鈴の音がした瞬間。目の前に霧が現れそのまま入り込み。
バッシャーン!!
上空から海に落ちたような高さから落水する。勢いよく叩かれ痛みの中で水面まで泳ぎ顔を出す。霧が深い中を1つの船が横切る。
「ふえ……ペッペッ……辛い」
「サーチの姉さん。お手を」
船に昔馴染みの戦員が自分達を上げてくれる。その中に女王陛下の姿もあった。
「げほ……一瞬で移動が出来るのは知ってたが落ちる時に使うとダメだな」
「ほれ、タオルじゃ。顔をふけ……今から帰るからな」
「ああ、お願いします船頭、女王陛下もお帰りですか?」
「ええ、先に宣戦布告を少しね。敵を直接見たわ」
「えっ? 城の中に!?」
「ええ、皆寝てしまってね……しっかりと入れたわ」
寝てしまっていない。皆……凍ったのだろう。
女王陛下はそれが出来るほどに鍛えられている。
「女王陛下……帰ってからまた会議ですか?」
「うむ……そうだな。都市を一つ奪ってみないか?」
女王陛下が歪んだ笑みで隊員たちに問う。俺たちは頷き……彼女についていくことを誓うのだった。




