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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第零章ヴァルキュリア・フロストバーン前編RPG ~女神の統べる世界、捨てられた島~
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夜会話⑦~きっかけ~..


 初級のダンジョンから帰ってきてから数日後。私はメモ帳を片手に地図を見ていた。地図に置いても何も起きない。きっとまだ何か理由がいるのだろう。私が知らない何かが……


「女王陛下……ここにおりましたか」


「ん?」


 衛兵が私を探していたらしい。


「何のようだ? 報告は伺っている」


 そう、外の情報は報告書で貰っている。外からの食料運搬も行われており。水不足は魔法によって海水が飲み水とする技術が伝わり。思いの外……大丈夫になった。


 ただし……それでも。まだ足りないが。


「ええ、その……女王陛下に会わせろと五月蝿い方がいます」


「ん? 名は?」


「スパルタ国王……メオニダスと」


「!?」


 私は衛兵を退かせる。


「姫様?」


「国賓である。わかっているだろう?」


「はい。ですが……場所は郊外で待っているとの事です」


「?」


「鎧をお持ちします」


「………わかった」


 衛兵は何かを察しているらしい。私も何となくだが……

「荒事があるだろう」と考えたのだ。





 月明かりの中で……綺麗な花が広がり。潮風が花を散らせる。大きな勇者の剣を担ぎ、歩くなかで大きな岩が転がっていた。


 何故そこにあるのかは知らない。だが……何かがあってそこにあったのだろう。


 地元では有名な岩らしい。私は来たことがなかった。待ち合わせには定番であり。ここから魔国の冒険者が旅立つのを見届けてきた石だ。旅立つ石と意思をかけているのだろう。


 その石に腰掛けた。きらびやかな服を着て胸元を開けている手甲を持った王が鎮座していた。気付いたのかこちらを見る。筋肉隆々として強力な体を見せつけながら。


「お久しぶりだな。魔王」


「お久しぶりです。スパルタ国王……あの窓割った日ぶりですね」


「そうか……弁償はしてくれたか?」


「……ええ」


 弁償はしなくてもよかった。それよりも……


「あなた……死んでしまったですね……」


「……俺は……そうだな。帝国に負けた」


「最後まで戦ったんですねきっと」


「ああ……天使を何体も落としたが。無理なもんは無理だ」


「何故、人間であるあなたが?」


「天使や女神なぞ信じない性分だからだ。鍛えられた体こそ信じるもの」


「では……私も信じてもらえないのですね?」


「いいや……わからん。拳で語ってこそだ。語ったんだ。信じるさ」


「女神と戦いたかっただけですね……」


「ククク……そうだ。向こうは戦いが多いから楽しい時代になった。がっ……何故だろうな。つまらなく感じたぜ」


 ニヤッと笑い。私の前に歩く。剣を担いでいるのを見ながらヤレヤレとした姿で。


「それは……全く扱えてないだろう? 構えているのは俺が一騎討ちと考えたからか?」


「……闘いにきたのかと?」


 だってこの人そんな人でしょう?


「お前との決着はもうついている。あの一撃で負けたんだ。負けでいい。いや……もう一度……いやいや……時間がない」


 悩みだしたぞ……


「まぁいい。とにかくだ。お前はその剣を扱えきれない」


 私は聖剣を取り出す。


「同じだ……それも」


「………わかるんですか?」


「わからないのか?」


「……………確かにトキヤのようにつかえきれない。聖剣も手に馴染むと言う事がないです」


「理由はわかるか?」


 首を振る。


「お前の得物は?」


「………」


 首を振る。あの剣はない。


「そういうことだ。お前の剣………あの剣がお前にとっての天性の物だったのだろう」


「しかし、あれは……ただの剣です」


「………ただのそこら辺の剣か?」


「………いいえ」


 私は腰を触る。あの重さが恋しい。


「天性の物に出会うのは運命のような物。長く使い、長く持つ故に体が馴染み……無銘の剣であろうと聖剣へと昇華する。積み重ねた物により。伝説が刀身に乗る」


 なんか思った以上に知的でビックリする。


「驚いたか? 昔にこの手甲を見つけるまで戦った結果だ……いかに有名な物でも。結局は使い込んだ物の方が強い。そういうもんだ」


「……変。脳筋じゃない」


「ははははははは!! 戦うことだけは頭が回ってな!! 昔からな」


「でっ……戦わないのなら何故?」


「お前……拳闘士にならないか?」


 私は振り返って帰る。アホじゃないかやっぱり。脳筋だよ。


「まてまて!! 帰るな!! 理由がある!!」


「ん……忙しいんですよ?」


「王であるからな。しかし……聞け」


 私は剣を納めて彼に向き直る。腕を組みながら笑顔で頷き……


「お前は拳闘士の才がある」


「えっ……ええ……」


 すごいことを言いだしやがった。


「体の頑丈さ、そして踏み込みの力。天性の直感……剣がないなら拳がある。そして、王たる重さもある。この世界はな……そういうもので出来ている」


「……」


「拳は剣や槍よりも短い。だが……届く。倒せる。剣や槍は……折れるが体は壊れるにが最後だ。悪いものではない。それに、得物がない最後は拳に頼るだろう? 女神は強い……才能だけでは無理だ」


 私は何となくだが……ダンジョン内での戦いを思い出す。慣れない物を無理に使っている気がしたのだ。それが……ずっとついて回る。


「何も考えず。邪念に囚われず。ただ真っ直ぐ切り払う事が出来ないだろう。居合いもな」


「………はい」


 私は素直に頷く。


「その鎧の手甲。白金の合金だろう。充分手甲としてはいい武器だ。鍛えろ……己をな」


「鍛えろですか? あんまりムキムキ嫌です……女ですし」


「元男だろうが……まぁ。一度も鍛えた事がないだろう。がむしゃらに殴るだけじゃない。お前の能力は充分便利で使え」


「……師事してくれるんですか?」


 王は首を振る。そして……拳を向けた。


「俺は英雄じゃない王だ。時間がない。きっかけをだな……伝えに来た。それで充分。あの皇帝と同じように……黄泉からな」


「皇帝……おじいちゃんが!?」


「俺らは待っている。未来を掴みなおせ……魔王」


 風がひときわ吹き荒れ。私は目を閉じる。


「……ん………ん?」


 目を開けると誰もそこには居なかった。私はトラストさんの事を思い出す。彼も皇帝と出会った時はこういうのだったのだろう。


 人によって……流れ着く事が違うらしい。彼は私が得物で悩んでいる時に何かを残してくれた。


「皆、託すんですね……でも……一つ言わせてください……」


 拳を握るそして………


「もう少し……女性扱いしてくださいよ」


 私は小さく愚痴るのだった。







「ネフィア……最近、夜中で一人。何処に?」


「トキヤ……ちょっと鍛えてる」


「ふーん」


「ねぇ……私は強い?」


「強いが……?」


「ちょっと手合わせをお願いしていい?」


「いいぞ。頑張ろうな」


「うん………」






【スパルタ国の王メオニダス】


 砂漠のオアシスなど帝国と王国の緩衝地帯を治めた王。王は強い者が信条であり。拳で戦うことが大好きな戦闘狂い。ネフィアとは一度夢の中で戦い敗北し、ネフィアが新たな時代の王だと決めつけた人物。なお王らしく。戦うだけではなく国家運営もそつなくこなし中立を保ち続ける強国を維持し続けた。なお、ネフィアを「拳闘士にしたい」と思っている人。




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