夜会話⑥..
私は都市ヘルカイトの家から都市イヴァリースへ引っ越しを済ませる。毎日千人単位で島の岸に打ち上げられる人々。その人々が都市イヴァリースに移住し活気がゆっくりと戻っていく。
ただ……食糧難はあり。私たちは至急探検隊を組織した。
向かう先は腐竜の果樹園や大農園。トロールの農業都市だ。
そして……今日。私は城の中で新しく流れ着いた者と出会う。王の間に私は椅子を産み出し、黒いドレスで肘を起きながら流れ着いた者の謁見を行った。
「女王陛下……ダークエルフ族長バルバトスでございます」
「うむ……よく来た」
「……」
ダークエルフの成人が私の顔を覗き首を傾げた。
「少し、雰囲気が変わられましたね」
「……そうか?」
「いえ……」
彼は立ち、頭を下げる。鼻を掻きながら答える。
「少し……『真面目になろうか』と思っただけです」
「わかっております。今、置かれている状況。私たちの不甲斐ない結果です。女王陛下が女王陛下たる理由を拝見いたしました。この結果を覆せるように働かせてもらいます」
私は少し引っ掛かりを覚える。何かを知っているのだろうか。それとも察しているのだろうか。
「ダークエルフ族長? 雰囲気変わって何を察したんだ?」
「女王陛下は……いつ時も柔らかい。優しい方でした。しかし、有事や私たち族長の手に余る事があれば誰よりも先に歩を進め。その姿は立派な王の姿でした……いつもいつも問題ばかり起こしては困らせてたのですが。本当に有事の際は誰よりも頼りに……」
「話が長い!!」
ダークエルフ族長の話を私は無理矢理切る。そして……彼は未来の族長なのだと言う事がわかった。
「女神を倒して何年後の君だ?」
「記憶にございますはネフィア期の2年目です。女王陛下が治める初めての元号です」
「……その数年で有事何回?」
「しょちゅう……ですね。表に出ない事件も多いです。女王陛下が解決した事件も多いですし、我々の仲間が解決した事件も……」
私は前途多難を知る。女神勝利後に。
「それもいいけれど……今は……今を生きましょう」
「はい。では、都市の警備や治安はお任せください」
「うむ……下がってよい」
「はい。あと女王陛下。これからはどうされるのですか?」
「……誘われてる場所がある」
私はそう言い。椅子から立ち上がって彼の隣に立つ。
「期待してるぞ。リディアは族長として浅いし象徴のようなタイプだから。本当に実力で9人の中に居る。お前のような者を待っていた」
「……はい。ご期待に添えるよう精進します」
彼の肩を叩き私はそのまま、走り。廊下の窓から呼ばれている場所まで飛んでいくのだった。
*
待ち合わせ場所は都市ヘルカイト郊外。そこに3人のドリアードが立っていた。
「ネフィアこんち」
「ネフィアさん。こんにちは」
「ネフィア姉さん。こんにちは」
マナ、エウリィ、ユグドラシルが緑の槍を持って待っていた。私は彼女らに近付く。彼女達は都市ヘルカイトともに流れ着いたのだ。種族は木、代表としてマナが喋る。
「実は私たちの根で変なものを見つけたの沢山。忙しいと思うけど教えるね」
「うん、大丈夫。忙しいのは私の民だと思う。私は椅子に座ってるだけでいい。でっ、たまに顔を出せばいい」
「へー。そうなんだ。流石……」
「でっ情報とは?」
マナが地面を槍の先で叩く。金属音が響き。私は首を傾げた。
「なんか埋まってる?」
「そう。埋まってる。いっぱい空洞や何かの建物が埋まってる。たぶんダンジョン。私はこれをアビスと名付けた」
「アビス?」
「深く深く。色んな所に形は違えど入ることが出来るの……トラストさんに聞いたけど。文献にもない。だからこれはネフィア期に発見されたダンジョンがここに来てるのだと思う」
ネフィア期とは私が女王となった都市を元年といい。それからの年数を言うらしい。帝国期を模した物だ。
「なんで私が発見するの?」
「治世、戦がなく。冒険が進む結果だと思いますよ? 私の知らない世界、世界樹なんて名前だけだったのです。そう、私たちのは見てきた物しか知り得ない。だからこそ……まだ世界には不思議があるし、過去の遺跡もたくさんある」
「楽しそうね?」
「めっちゃ楽しみです。冒険できるから。冒険者を募り、世界樹の迷宮アビスとして潜ろうと思います」
「あっ……楽しそう」
私は冒険者でもあるので少し気持ちが知れた。おくにある宝を目指すのは性と言うべきなのだ。私も真面目に攻略したことはない。
「それで私を誘ってくれたんだね?」
「いいえ。この呪いを解いてください。入れないんです」
「ん?」
私は槍先の物を見る。鉄の丸い蓋であり。そして……恐ろしい事にそれは文字が書かれていた。地名だろう。この世界の文字ではない文字で書かれ、私はそれが異世界の文字であることを知っていた。
赤い帽子の子供の絵が書かれて剣を持つように木の棒を構えていた。しかし、それは表面上。触れると呪いがかかっており。蓋を引っ張ろうとも開かない。恨みの声が聞こえそうなほどに怨念がまとわりついていた。
「……呪いですね」
「呪いです」
「開けてほしい?」
「ほしい」
「中はヤバイ……絶対……ヤバイ」
「わくわく」
「………知らないわよ」
「大丈夫です。この体は偽り。倒れてもまた木の実として生みます」
私は祝詞を唱える。一応聖職者のため呪いを祓える。昔より時間がかかるが……女神ではある。炎が使えた時の方がきっと早く祓えただろう。
「どうぞ……開きますよ」
そういい、ユグドラシルが槍を引っ掻けて蓋を開ける。中は暗くカンテラで照らすがカビのニオイしかしない。結構奥は深い。
「入る?」
「もちろん。行くよーみんなー」
「はい………ちょっと楽しみね。ユグドラシル」
「うん!! お母さん!!」
私は冷や汗が出る。
「私は……帰るよ」
絶対に良からぬ物がある。
「ネフィア……一緒にいこ?」
「……行きません?」
「私が一番のり!!」
「あっ!!」
ユグドラシルが飛び降りる。皆が続き……私は……
「ああああ……もう……行くわよ!!」
同じように飛び降りるのだった。しかし、それがいけなかった。梯子があるのに飛び降りた結果。
「げしゃ……」
「ふしゅ!!」
「あっつ!?」
「とう!!」
ユグドラシルが下敷きになり。その上に私たちは重なっていく。そうバカだった。私は羽で光を生み出しながら冷や汗がでる。入らなければ良かったと後悔する。何故なら……
「見たか銀翼この勇士~日本男児が精込めて~作って育てた我が愛機~空の護りは引き受けた~」
奥から……野太い声の歌が響いて聞こえるのだから。
*
【ダークエルフ族長以下、英魔衛兵旅団が流れ着きました】
【ダンジョン……???……が開放されました】
【情報が少し開示されました】
*
【ダークエルフ族長バルバトス】
エルフ族などから嫌われていたダークエルフ族の長。非常に屈強な将であったが不遇な処置で魔国首都の防衛のみ従事させられていた。だが……ネフィアの覇によって和解し、逆に魔国首都の防衛が生き甲斐に変わってしまった族長。最初から首都に居続けたため。首都で強権を持ち首都の影の王とも言われる。英魔最強と名高い騎士団。英魔衛兵旅団を持つ。ネフィアの時代に現れた隠れた英雄である。
【英魔衛兵旅団】
ダークエルフ族長が新しく組織した陸空を持つ名門衛兵団。騎士団とは違い。衛兵に誇りを持つが騎士と変わらない。衛兵の地位を高めた団であり。衛兵の最上位。「英魔衛兵である」と言うだけで尊敬される組織へと変貌した。首都の警備は彼等が全て見る。国の治安維持も飛行船を用いて行っている。




