英魔王の大号令..
早朝、私はベットから立ち上がり。彼の頬にキスしたあとに鏡の前に立った。裸のままで。
全身鏡の前に立つ。見た目は……魔王の姿で……いつもみる私自身の姿だった。だったのだが。
鏡の中の姿から部屋の模様など全く違っていた。寝室は王族の寝室で私は寝間着を脱いで全身鏡に立っていた。堂々とし。声が聞こえた。
「今日も綺麗だけど。不安そうな顔だぞネフィア」
全身鏡を見ると顔に重圧や、何もかもから逃げ出したいと願う少女が目の前にいる。鏡に額をくっつけて鏡の彼女に近付いた。どういう事がわからない。いた、これは記憶にある。
「あいつらは勝手に簡単に言うが………簡単じゃないんだぞ」
そう、責任を伴う。重圧を支えないといけない。そんな重圧をこの体は耐えられるほど甘くはない。
「皆が支えると言ってくれたけど………」
目を閉じている。
「あれに………あなたはなれるのネフィア」
私に問いかける。昔から私は鏡の自分を見てきた。笑みもなく真面目な彼女は私の瞳にうつる。
「男から女になった。悪魔から聖職者になった。ネファリウスからネフィアになった。少女から母親にもなった。今度は魔王から元魔王。そして女王陛下になれるの?」
その問いに私は答えれない。私は泣きそうになりながら。へたりこんだ。
「無理だよ………無理。トキヤ………どうしたらいい?」
「……おい? どうしたへたり込んで? 無理って?」
「えっ?」
目の前の鏡はへたり込む私を見せる。いまさっきのは幻覚だったようだ。泣いてはいないし、ただ座っているだけ。
「昨日……頑張る言うて……もう、弱音かな?」
「あっ……う、うん。なんだろう……弱音だね。うん……思い出した。最初から自信なんてないんだ。自信は後からついてくる」
ネフィアだってそうだった。悩むんだ。
「そうだ。後からな……後からネフィアはその身分に見合った働きをしたよ。だから……期待される。だから皆が憧れた」
「……うん……だね」
私は立ち上がる。やることを……皆に示さなければならない。
何処へ行こうか?
→島の外
→島の中
*
私は島の中、鎧といただいた旗を持って壁の上に羽を下ろした。宣言するにはここがいい。
みんなの声が聞こえるこの場所に。
集まる場所は郊外がいいだろう。
「ネフィア? ここで何を?」
「愛を叫ぶ」
「やめろ……一回怒られたろ」
「冗談……じゃぁ。本当に私が魔王であるならばを見せる」
「………」
私は壁の上で旗をなびかせ魔法で声量を増幅させる。
「すぅ……………はぁ………」
深呼吸から。
「我が愛しの英魔族たち!! 余の声を聞け!!」
大声量で都市に放った。
「13時!! 飯を食って郊外に全員集合!! 以上だ」
それだけを伝え。トキヤに笑顔を向ける。
「どれだけ来るんだろうね?」
「冒険者が主だったからな~」
「弁当ひろげよっか?」
「うーん。お茶くれ」
「はーい」
「ネフィア~朝から五月蝿いなー」
「あっマナ」
緑の神が私の隣に座る。
「でっ……私の分ある?」
「多目に作ったからあるよ」
「やった!!」
「はぁ~これがあの世界樹かぁ……ユグドラシルによく似てるな」
「こんにちはトキヤさん。イケメンだね……樹に入らない?」
「叩きおるぞ。マナ」
「冗談、冗談」
私はゆるーく待つのだった。
*
ゆるーく待つつもりだった……だったのだが。
ザッザッザッザッザッザッ
1時間前から人が集まりだし、何人かが指示をし、私の元に正装ランスロットと白いドレスに大きな杖を持ったアラクネ族長リディアが現れ何本かの旗を持ってくる。ノワールとサーチが先に挨拶と進行を決めて、私には「これでいいですか?」と決をとった。もちろん頷くしか出来ない。
気づけば都市は空となり。皆が私の前へと来たようだ。
軽く……私自身の姿である。ネフィアと言う者の求心の力に驚く。皆がたった一人の者に従うのだ。
「………時間ですね。では……今、代表としてリディアお願いしますね」
「はい」
時間が昼過ぎを差した瞬間だった。私は……壁のそとの眼下……何もなかった場所をリディアと見る。
「………つぅ」
数万の民衆がそこにカンテラを地面に置いて集っていたのだ。それも都市の住人からすれば少ないだろう。しかし……私には多く見えた。リディアが愚痴を溢す。
「まだ、これだけなんですね。流れ着く者は……」
「リディア……仕方がない。何人かの将がいるだけ幸せだと思う」
私はこれでも少ないだろうと記憶では覚えてる。何人かの名だたる者は私の後ろで椅子に座りながら待機していた。そして……長はなんと。
「諸君……号令をさせていただきます。昆虫亜人族リディア族長です。では………気を付け!!」
カンッ!! バッ!!
リディアが杖を叩き、叩いた音を目印に皆が整列した状態で体を垂直に正す。一部の亜人も同じように背を正した。
「国家掲揚」
大きなポールが兵士によって立てられ、固定されている物に旗がくくりつけられ月夜に照らされた物が上がっていく。潮風になびく白地に太陽の旗が上がり……
「敬礼!!」
バッ!! バッ!!
一斉に皆が胸に手を当て敬礼を行う。私はみよう見まねで敬礼を行った。敬礼の種類は種族ごと違うようだ。旗が頂点に達し、号令が飛ぶ。
「直れ」
バッ!! バッ!!
皆が敬礼し、同じ動作で行うのは見ててドキッとする。異様な光景。いつものリディアじゃない。そうまるで魔王のような厳格な感じが胃をキリキリさせる。
「………女王陛下登壇!!」
「………」
私は皆の前に立つ。リディアは下がり、後ろでランスロットとトラストさんに褒められていた。
「………」
皆の熱い視線が体を突き抜ける。私は旗を持っており、それを地面に立たせた。
ふと……あの声が聞こえる。「王は天が選ぶ」と。あるお爺様の声が。そして………彼の旗に勇気を貰う。多くの戦場を駆け抜けた彼の勇気を。
「………おほん」
シーンとするなかで私の声が広がる。
「急遽の集合。ありがとうございました。私はご存知……ネフィアです。そして………一番始めにここへ流れ着いた者です」
話す内容は先ず皆に現状を知ってもらわないといけない。内容を考えてなかったけど……先ずは。
「……よくぞ余の元へ……帰ってきてくれた事に感謝する。そして……すべてを話をしよう。休め、長くなる。座りながら話を聞け」
皆を座らせる。私も同じように壁に座った。
私は女神の戦いを事細かく説明する。
「女神との戦いに敗れた。結果……私はここに流れ着いた」
負けたかわからない。だが、負けた事にする。相手を女神と言うのを仮想敵国として皆に目先の敵を明確化させる。国民を巻き込む。
「何をしたか……何をされたかわからない。しかし……ここは流れ着く場所。故に我々は未来を奪われた事は確かだ」
ゆっくりゆっくり紡ぐ。そして……旗を見ながらゆっくりと立つ。
「以上が私が知る情報である。そして……憤りでもある。中には非戦闘員も居るだろう。だからこそ。明確に目的を話そう………もう一度、もう一度、私たちの未来を奪え返さないか? 私は奪い返したい……そう復讐がしたい。女神ヴィナスに我が剣を届かせ……地に伏せたい」
「女王陛下……横から失礼します」
リディアが私の隣に来る。その表情は……魔物のように歪んでいる。
「許されない事です。アラクネ族長が宣言する!! 我の英魔昆虫亜人族!! 決を取る!! 女王陛下に従う者は立て!!」
アラクネ族長に号令に体の大きい亜人が立つ。多くの透明な羽を持つものや……亜人の中でも姿が特徴的な人々。実際……彼等は私がいないと魔物ままだった者たちだろう。
「……リディア。残念ながら、他の族長はいない。9大族長として代表者として決を取るべきでした」
ランスロットが彼女の隣に立つ。
「決を取ります!! 英魔族として立つものは!!」
整列する数万の人が一斉に立ち上がる。
「以上……英魔国民全員が満場一致です女王陛下」
「……よかろう。我が宣言する!!」
私は旗をつかみ掲げる。
「我が命ずる!! 奪われた未来を取り戻せ!!」
「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」
私は崔を投げる。焚き付け、都市ヘルカイトの民に目的を示した。大歓声の中で私は小さく。これでいいのかとマナに問う。
背後の彼女は……娘と孫と共に跪いていた。
「………ん」
結局私は……魔王になれるようだ。
*
大歓声の中で解散を指示し、一部の有能な将を呼ぼうとした。結果、トキヤにノワールやランスロットとリディアにユグドラシル。金竜と船頭が会議室に顔を出す。場所はヘルカイトの住んでいた領事館で顔を見せる。だが……知り合いばかりで拍子が抜ける。
「でっ……まとまったけど。問題点は?」
私は中央の真ん中で報告を聞こうとする。
「沢山あります。女王陛下」
「ランスロットさん……必要な物から」
「では……実は食糧難です。備蓄も少ない。農作物ができませんし、時間がかかります。そして……人材不足。一応リーダーらしき人は居ますがそれをまとめる階級を持つ者が少ないです。金竜さんはその中でも竜系亜人をまとめてくださってますが……」
ランスロットはリディアを見る。リディアは申し訳なさそうに顔を伏せる。
「少し、リディアだけでは荷が重い」
トキヤが話に割って入る。
「荷が重いのは知っている。少し無理でもやってもらわないといけない」
「わかっている。リディア……ごめん」
「いいえ、ランスさん。それが私の役目です。カスガさんもいつか流れ着きます。それまでの繋ぎです」
まとまったらしい。しかし……トキヤが唸る。
「それよりも物資不足だよな。流れ着いた物では到底無理。これから先でも流れ着いた者が増える現状……厳しい」
「私はその……生産も弱いです」
ユグドラシルが申し訳なさそうにする。仕方がないとも言えるのは明かりが月のみであり、土地も肥沃なのだ。生きる方が大変だろう。
「太陽が欲しいです」
「太陽か……」
「太陽ねぇ……」
「太陽……」
「私を見るな。無理無理……今はその力が使えない」
陽の奇跡と言う。夜を照らした化け物魔法があるが……今の私には唱えれそうになかった。
「寒いですし……何かあればいいですね」
「何か妙案はないだろうか?」
「船頭何かないか?」
「ワシはただの向こう岸に渡らせるだけであり。土魔法事態ではどうにもならん。人手ならゴーレムで……」
今、海岸側はゴーレムが席巻し。船や港の整備……釣りや漁などをやっている。それでも間に合わないわけだが。
「………」
私は皆の案を出し合うのを見ながら。角を生やす。魔王らしく角を生やした。
「ネフィア? なに生やしてるんだ?」
「ちょっと……だけ。思い出したからね」
「何を?」
「英魔族首都イヴァリース」
「……それがどうした?」
私はニヤリと笑みを向けた。
「都市イヴァリースにたんと蓄えがあろう? 生産だけが得るものではない」
皆が驚いた顔を見せる。そして……私の口からある事を提案する。
「首都イヴァリース。奪還……そして略奪を行おう」
私の案はすぐに決を取られ……実行に移されるのだった。
*
【新旧魔王の悩みのイベントが解放されました】
【英魔族昆虫亜人族部隊が解放されました】
【都市ヘルカイト衛兵が解放されました】
【亜人たちが立ち上がりました】
【魔王ネフィアが解放されました】
*
【陽の奇跡と言う。夜を照らした化け物魔法】
ネフィアが一度、都市を燃やさんとする放火砲の炎を空に固定した魔法。夜中を昼間のように照らし続けた出来事。そして、ネフィアの最強最悪な魔法として禁止された。
【王は天が選ぶ】
人間皇帝のありがたいお言葉。なおネフィアは天井だと勘違いした。




