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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第零章ヴァルキュリア・フロストバーン前編RPG ~女神の統べる世界、捨てられた島~
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夜会話②..


 私は屋根の上で風を感じていた。山奥の都市故に本来は匂わない磯の香りにここが捨てられた島であることを思い出す。


「………」


 酒場での会話後に一人……屋根にあがり何も考えずにいた。


「……ネフィア……あっ……今はヴァルキュリアか」


「ん……ウル」


「まぁその……全員が全員……お前を信じてるのは重いかもしれないが……気のするな」


「いいえ。ネフィアなんだからそれが普通なんです。だって………私は魔王だから」


「まぁ……うん……そうだけど……」


 ウルツウァイトが隣に座る。


「実感ないのに……大変だろ?」


「記憶はある。それに…………なんでもない」


 私は何となく。まだ、何となくだが……「使命がある」と思っている。それがわからないが、分かるまで考えようと思っていた。絶対に流れついた意味がある。


「それより賑やかでいいね。私達だけじゃこの都市は広すぎ」


「まぁな。それよか……明日からどうする?」


「それは明日決めましょう。よっと……ちょっと行ってきます」


「何処へ?」


→捨てられた島の岬

→酒場

→寝室


「海に行って来ます。あとで寝室に帰りますから」


「おう……会ってくるんだな」


「ええ」


 私は屋根から飛び、翼を広げた。翼は月明かりを反射しキラキラと輝き私を目的の場所まで連れていってくれるのだった。





 ザァーザァーザァー


 波の打ち寄せる音の中で私の探している人は居た。何か槍のような物を抱え。布が巻かれている。


 バサァッ


 私は舞い降り、翼を収める。彼の座っている姿に声をかけた。


「トラストさん……こんばんわ……今日は風が泣いてるように聞こえますね」


「ふふ。その言葉はですね。大人になり、子を持っている身でも引かれますよ。そうだね……泣いてるように聞こえるよ。ネフィア女王様」


 トラストが立ち上がり。私に深く頭を下げた。そのあとに蕩ける笑顔を向けてくる。年上の芳醇な誘いの匂いがしそうな笑顔だ。抱かれてしまいそうな包容力。流石はランスロットの父親である。私は寝取れる力を見た。


「皆から聞きました。今までのご無礼お許しください」


「許しますから……そんな堅いのやめませんか?」


「わかりました。お嬢様」


「むぅ……」


 本当に本当に本当に本当に……キザぽく……ドキドキする。こんな人が旦那だった彼女は凄く大変だっただろう。


「それでネフィアお嬢様は少しお時間がありますか? 一つ、預かり物があります」


「えっと……はい。それよりも先に質問いいですか? 奥さんは見つかりましたか?」


 トラストさんは首を振る。


「ここには来ないのかもしれません。私自身もなぜここに居るのかも不思議でしたが……皆は私の事をよく知っております。そう……一部の方は私をまるで戦神のように崇めている人もいましたね」


「……お理解してませんか?」


 なにか感じとっているようだった。


「少しだけです。私の行いは皮肉なことに魔族側で評価されたようですね。帝国の騎士なんですがね。ははは」


 軽く笑いながら彼はそれは嬉しい事だと言う。「まるで物語の主人公や王子になれたようだ」と。


「ネフィアお嬢様の用件は以上ですか?」


「はい……すいません。話の腰を折ってしまって」


「いいえ。では……これをご存知ですか?」


 トラストさんが槍をくるくるとし布をほどく。その布は赤く、黄金の糸などで竜の絵を刺繍してあり。大きい大きい旗となった。


 私はそれを知っている。


「捨てられた島で赤きマントを羽織った若者に会いました。名を伏せてこれだけを渡し消えてしまいました。私の挨拶を無視するように……これは帝国旗のモチーフした物ですね……それしかわかりませんでした」


「……」


 私はその旗を貰う。ズシッとした重みがあり、強く握りしめた。


「この旗をご存知ないでしょうか? これは元は帝国の物ですよ?」


「見たことはありません。どの騎士団とも違うようですね。そう、見たのは……ネフィアお嬢様が掲げていた所だけです。過去の大戦で」


「わかりました。ご説明します。元の持ち主はドレッドノートです」


「!?」


 さすがにその名は分かるらしい……「持ち主が若い」と言われていたので、わからなかったのだろう。


「そして、これは帝国創世記の軍旗。皇帝旗です。私が譲り受けて掲げていたんです。彼の夢は……『これを世界に掲げさせる』だったのですが。夢半ばで私に渡しました」


「そうですか……皇帝は託したのですね」


「押し付けです」


「いいえ……ネフィアお嬢様なら。代わりに夢を叶える事を確信していたのでしょう。わかりました……ありがとうございます。教えていただき」


「いいえ……これを渡してくれてありがとうございます。私にとって……大事な形見ですから」


 私はそれを地面に差し、夜風でなびく。トラストさんはそれをみて跪いた。


「やめてください……魔王です」


「はははは……いいえ、皇帝は継いだのです。王を……なら私はあなたに従います」


「………ふふ。忠誠は?」


「それはすでに捧げた方がいます。申し訳ありません」


 旗を引き抜き彼の肩に置く。


「よろしい………頑張ってください。帝国の大英雄」


「はい。仰せのままに」


 私は彼が何故ここに居るのかわかっている。


 だからこそ、お願いした。そういう縁があるのだろう。調べて貰いたい。


「トラストさん……外で奥さんを探してください」


「!?」


「そして……世界を見てきてください」


「……わかりました」


「私……もう一度アメリヤさんに会いたいです」


「もちろん……私もです」


 二人で笑顔で頷きあったのだった。





 次の日、海岸で船に複数人が乗船する。向かう場所は都市インバス近海。


 都市インバスに海なんかない。海なんかないが私は海を渡る。


 皆の顔は複雑そうなのだ。


 そう……捨てられた島に流された人の中で外が気になる者達が多く乗船した。


 ある人は人を探すため。


 ある人は世界を知るため。


 ある人は物を探すため。


 そう……心残りを。


 私は全員の顔を見る。見るが知らない。だが全員は私をネフィアと崇める。それだけに申し訳なくなる。


「さぁ……降りる準備しな。鈴を持ったな……心残りを探しな」


 船頭の声で船が岸に乗りあげる。皆が立ち上がり、冒険の用意をして降りて行く。


「さぁ……ささっと降りろ。まだまだ往復しないといけない」


 私達は霧を抜け……四方八方に散ったのだった。

 




【イベントが開放されました】


【固有アイテム・魔王旗を手に入れました】


【冒険者ギルドが再建されました】


【探索者が開放されました】





【名令嬢アメリア・アフトクラトル】


 トラスト・アフトクラトルの妻にしてある理由で有名な令嬢。病弱だが非常に優しく芯が通った令嬢であり、アフトクラトル家を支えた賢母。トラストを支え続けた彼女は息子などが英魔でも名のある良血家で有名であり。結果、英魔国内でよく知られる令嬢である。





 


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