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金竜ウロの背に乗って..


「………金竜ウロ。久しぶり」


 赤い髪のボルケーノが金竜の前に立ち。鼻を撫でる。


「……久しぶり。ボルケーノ」


「ウロは流石だ!! 俺はわからなかったよ」


「ボロスは静かに黙って聞く」


「……はい」


 金竜がゆっくりと体を倒した。目を閉じながら。


「ごめんなさい……少し……この姿勢でいいかしら?」


「それよりも人竜になる呪詛を教える。ボロス、こっちへ。あとこれは魔法ではない。呪いだ……弱体化のな。だが、思ったほど悪くはない。穏やかになる」


「いいでしょう」


「よかろう」


 ボルケーノがボロスを呼ぶ。ボロスも近づき伏せた。金竜と銀竜を従える姫のような姿で詠唱を始める。


「一応聞くが……その呪いはいたいか?」


「………静かに詠唱を待て」


「……」


 私は遠くでトキヤ、デラスティとその様子を見ていた。きっと……痛いのだろう。


「……よし」


 ボルケーノが魔方陣ではなく呪いの印を二人に刻む。そして、発動した。


「行くぞ。はっ!!」


 魔力を注いだ瞬間だった。二体は暴れ狂う。


ドタ!! バタン!! 


「んがああああああ!?」


「ん……ん……つ、辛い……お、起きたばっかにこれは……げふ……」


 金竜と銀竜がのたうち回る。危険なためにもっと離れて苦しむ竜を見ていくと10分後ぐらいにゆっくりと縮み。魔力のモヤに飲まれ……晴れた瞬間に二人の人が倒れた常態で現れる。ボルケーノが荷物で持ってきていたマントとローブを被せて体を隠す。そして服を用意した。


「……」


「……」


 二人はピクリとも動かない。しかし、息はあるようでボルケーノが蹴り飛ばして起こした。私はそれはひどいと思うが……黙っておく。


「うぐ……もう少し優しくお願いします……」


「……ボ、ボルケーノ……痛いじゃないか……」


「最初はそんなものよ。それよりも長く留まるのは良くないから。それを着て、マントを羽織り場所を移すわ」


「俺もそれがいいと思う。銀竜ボロス。背負ってやろう」


「くぅ……人間め。偉そうに」


 トキヤが簡素な服を着た銀竜に肩を貸す。銀色の硬そうな髪にヤンチャそうな男が渋々肩を借りる。肩を貸すぐらいはいいのだろう。そんな光景を同じように着替えた金竜は見てトキヤに声をかける。


「鋼竜ウルツウァイト? 魂が変」


「今はトキヤと言う。金竜さんよ」


「えっ? ウロまじ? こいつクソ野郎なの」


「ボロスは黙って……まだ本調子じゃないけどわかる……他の皆は?」


「それは安全な場所で話そう。ネフィア……肩を貸してあげな」


「……」コクッ


 私は頷き肩を貸す。ボルケーノとデラスティは帰り道を先攻偵察を行うために動き出す。


「……あなたがネフィアさん?」


「……」コクッ


「?」


「金竜ウロ……説明は省く。ネフィアはな……声が出せないんだ」


「!?」


 金竜ウロは驚いた表情をし……そして悲しく一言答える。


「過去に知った……あなたに逢えたのに。きっと……それを犠牲になにかを成したのでしょう。お疲れさまでした」


 金竜ウロは本当にドラゴンらしくない、ドラゴンだった。そう、まるで文化人の思考を持っていた。






 場所を移し、大きな魔物が入れない横穴に体を潜めてから。非常食を二人に手渡す。


「……?」


「……?」


 さすがに聡明な金竜も何かわからないのだろう。ボルケーノは手本を見せて瓶の蓋をはずした。


「こうやってコルクを抜く。それにスプーンと言う物を使い。すくって食べる。わかるね?」


 二人にも同じように蓋を外す。


キュポキュポ!!


 そして受け取った。スプーンを震える手で持ち。ボルケーノの真似でペーストされた非常食をすくい。口に入れる。ボルケーノは流石なのか、デラスティを育てた手腕を生かして優しく指導する。


「ん!?」


「ん!?」


 非常食を食べた二人が反応する。様子を伺ってた私は「きっと不味いんだろうなー」と思い。「我慢しないとね」と伝えようとした時だった。


「美味しい!?」


「うない!?……うまい!!」


 非常食を「美味しい」と言いながら食べていく二人。がっつりすくって口に頬張っていく。


「……うまいのかぁ~そうかぁーよかったな」


「僕、全く「うまい」と思ったことないよ」


「だよな。俺もだデラスティ」


「………」


 皆が私と同じように困惑していた。ボルケーノは懐かしい表情で見ている。きっと皆が通った道なのだろう。


 長い年月の休眠明けからかパクパクと瓶の中身を平らげる。


「ウロとボロス。人の食うものでそれは一番不味い物に近い。それが『美味い』と驚いてると……次には心臓が止まってしまうぞ」


「……これが不味い物なのか」


「……時代は変わるのですね」


 ボルケーノの一言に二人がガラス瓶を見て戦慄する。これ以上の物があると。


「お腹も満たされたし……話……してもいいかしら?」


 金竜が銀竜に一言も喋るなと釘を刺して話をする。ボルケーノは頷く。私も同じように頷いた。


「……他の竜は……もういないの? 知っている中ではヘルカイトとか……一部……生き残ってると信じてたけど」


「ああ。そうか……情けない話なんだが……」


 ボルケーノが申し訳なく語る。


「土竜のグランドさんは失意で落ち込んでそのまま病気にかかって療養中。ヘルカイト兄貴は都市拡張政策等離れられず。ラスティ姉さんも同じように忙しく。リヴァイアと言うのは普通に海で敗け亡くなり。鋼竜はもう人間に魂喰われて。正直、そこの女王ネフィアが居れば『何とかするだろう』と言う事で私たちしか居ないんだ」


 私はボルケーノの理由に……背筋が冷えた。私が「居れば何とかする」という認識をやめてもらいたい所である。せっかく……戦争で呼ばなかったのに。


「………」


「ネフィア。『戦争に巻き込めば良かった』と思っただろ。予備戦力とか難しいこと考えず」


「………」


「まぁ……忙しいんだ。許してやれ。それに身内を売ったんだ文句は言えまい」


 トキヤが肩を叩く。


「そうなんですねー。ネフィアさんはやはり私たちの未来だったと言うことです。私を救ってくださいました。感謝しかありません」


「では、ネフィアが今。目指している事に手伝って貰ってもいいな?」


「いいですしょう。過去の恩、救っていただいた恩をお返しします」


 ネフィアの代わりにボルケーノが話を進めてくれる。その瞬間だった。彼女の背後にエメリアが現れて金竜の前に出る。


「こんにちは金竜ウロ………エメリアです」


「こんにちはエメリアさん……金竜ウロです。少し変わりましたね」


「変わりましたね。ウロさんも」


「……変わりました」


 トキヤが横から話の間に入る。


「知り合いか?」


 私は世間は狭いと思う。知り合いぽい。


「知り合いです。聖域で会いました」


「そうです。昔はあなたも一人前の神族だった」


「……神族だった?」


「えっ? ウロちん神族だったの?」


「ボロス……黙ってて」


「しゅん」


 ボロスはなんで発言権利ないのだろうか。彼は拗ねてしまった。私はその銀竜に砂糖飴を手渡し、背中を撫でる。


「私はそう……元は竜を見守る者だった……竜が知恵を持ち願われた故に後で生まれた監視する存在です。しかし……私は堕ちた」


 金竜が懐かしそうに空を見上げる。そして静かに独白する。


「私は竜の自由さに恋い焦がれた。いえ……銀竜に焦がれた。そして、多くの神にお願いし……『滅びる竜を救って欲しい』と願いました。竜は人造の魔物であり、竜用のリミッターと歪な生体を用意し自然と絶滅するように仕向けられてました」


「そして……無視された」


「ええ、故に堕ちた。我が身を同じ竜とし……一緒に朽ちる。滅びる事を選びました。彼らは興味がなかったのですよ……自分の傘下以外の者に。まぁ同じですね、私も」


 金竜がため息を吐き。体を優しく撫でる。


「でも、堕ちてよかった。竜の人生はすこぶる楽しかったですから。それに……滅びませんでしたし」


「結果論。助かった。何事もわかりません。神であろうと知恵を持つ者であろうと」


「予言も役にはたちません。結局、結果は変わった」


「そうでもないです。今から役に立ちます」


 エメリアが金竜に顔を近付ける。


「聖域の位置を予想し、彼女たちを導いてください。そこに全ての神を忘れさせ、最後に残った忌み神が居ます」


「……わかりました。それが私の新たな役目ですね。いいでしょう導きましょう」


 金竜が頷き立ち上がった。その表情は柔らかく私を見る。


「……ネフィアさんに託すのは部が悪い賭けでは無さそうです。そう……例え負けたとしても」


「??」


 私にはよくわからないが皆が私を見て頷く。


「……」


 無駄に期待されている事に……申し訳なく感じながら。何も言わない。


 なぜなら私にとっては……復讐なのだ。そして、私たちは結晶化した島を私たちは飛び出す。金竜に導かれながら、青い空を進んでいく。


 目指す場所は……神が生まれる場所へ。



















 










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