竜の墓場..
私は古い知り合いに会いに行くかのように懐かしい気持ちで旅をする。
族長たちに国を任せての旅だ。
向かう先は……海を越えた先。竜の墓場らしい場所だ。
私たちは翼はないだからこそ運んでくれる人が必要だった。そして……その二人は選ばれた。
火竜と飛竜の二人だ。
私は火竜ボルケーノの背に乗りトキヤが手綱を取る。
ボルケーノがトキヤに疑問を投げた。私は声が出せないため直接聞く。
「なぜ……私らではなく。彼らなんだ?」
「理由は簡単……多い方がいいらしい。いや……ネフィアを待っているだそうだ。それに結界がこじ開けれるのが金竜だけらしい」
「ボルケーノ姉さん。その金竜銀竜ってどんな人?」
小さなワイバーンが周りを飛びながら火竜に聞く。大きさから親子のような差があるが大人同士だ。
「……今思えば大人な竜だった。先を見て考え……悩む事の出来る人だ。銀竜はバカだった」
「……」
私はちょっと鼻を掻く。銀竜ってバカっぽいのは知っていた。それでも金竜のつがいとしてはしっかりと面倒を見てたような……違う、金竜が面倒を見てたんだろう。
「鋼竜の記憶からだが……金竜が『バカは可愛い』と言っていたからそうなのだろう。まぁその当時は金竜以外は愚かだった」
「そうね……愚かだった」
ボルケーノがシュンとする。それを私は背中を撫でた。
「……」
「声でないと優しいな」
「……」
ペシペシ
私は抗議するようにボルケーノの背中を叩く。
*
旅は西へと進む。上空から自然を眺め。空の魔物達を退けながらどんどん西へと進んだ。
魔国の空は自由であり。魔物もいる空だったが……比較的に安全な旅だった。
途中、海洋都市オクトパスにより……ある島の情報を得る。
大きい結晶が中央にある島。結晶はダイヤよりも脆く。銀色の光沢や虹色の光沢などがあり少し変わった結晶だった。近いものは魔力石。大きな大きな魔力石が生まれている。
魔力も濃く私の体に何か入っていく気もした。少し体が軽い。
都市オクトパスよりも西に島があり……結晶化した場所が存在しているとの事だった。まだ誰も海をわたれずに開拓出来ない場所だからか自然が残り、ワイバーンかドレイクかわからないが飛び回っていた。
結晶の中心にワイバーンの死骸が転がっている。その付近に降り、火竜は人の姿に変わる。赤い長い髪が伸びる細身の女性。その女性がワイバーンが人型になった瞬間に手を繋ぐ。迷子にならないように子供扱いして。
「過去、竜が人知れず死んでいく場所。今ではワイバーンだけの墓。私も『いつかはここで終わる』と思っていた時期があったが……別に静かに息を引き取るなら他でもいい。まぁ何も考えずに終わるならここだ」
「ふーん。竜姉さん。迷子にならないから手を離して……」
「だめ。勝手が違うの……危険よ」
「危険っちゃ危険か……一応何処かで休むか? 何日も飛んでいたんだ。疲れただろう?」
そう、何日も飛んでいた。
「大丈夫。こんなもので私は疲れたりしない」
「竜姉。歳だから落ちるかなって不安だったけど大丈夫だった……んぎゅ!?」
「デラスティ!! この口が悪いの!?」
「ごめんなしゃいいいいい」
火竜がデラスティの頬をつねる。甘い教育していた昔より少し。しっかりと厳しく怒れるようになったようだ。
「竜姉~痛い……本当のことじゃん」
「私はまだ。しっかり羽ばたける。まぁ疲れたけどな……」
「では野宿をしよう。ちょうどあそこの結晶の隙間が風雨をしのげそうだ」
火竜と飛竜が降ろした荷物を掴み。皆で結晶の隙間に身を隠す。魔物の声が響いた。
「……結構大きいのが居そうだな。ボルケーノ」
「いるでしょうね。魔物」
「夜番は俺がするよ」
「頼むわ」
「……」
トキヤが結晶の穴の前に陣取り。床に丸めた布をひく。持ってきた荷物の中から大きい瓶とスプーンをボルケーノに手渡した。中身は肉などを混ぜてペーストにしたものを煮沸処理した保存食だ。
しかし、瓶はすごく大きかった。
「ボルケーノ。どうぞ……味は良くないが腹が膨れるはず」
「ありがとう。飛ぶ前に沢山食べてたけど……バレてたか……」
「バレてる。特注品だから。だいぶ膨れるはずだ」
ボルケーノがそれを持ち。蓋をあけて……デラスティを呼んだ。まるで子を先に食べさせるためにする仕草に私はほほえましいなと思いながら……お腹を擦った。
「竜姉さん。僕のはあるよ」
「あら。そう。わかった……昔からの癖ね……」
ちょっと淋しく赤い髪を弄りだすボルケーノ。まぁ気持ちわからなくもない。
「ネフィアも。あんまり美味しくない保存食だけど……食べないよりましだから」
「……」あーん
「食べさせろか……わかった。子供みたいな事を人前では控えろよ~」
「そう言って。お前は甘やかしてるな」
「ボルケーノ……まぁ今回はいいさ」
トキヤが喉の件から優しくなる。いや、甘くなる。その甘さはイチゴジャムより甘い。
「ネフィア。まだ、しんどいだろうが……我慢してくれよ」
私は首を振る。しんどくはない。
「……無理なら帰るから」
「………」
本当に不安ばっかりを彼は口にする。仕方ない事だけどね。
*
布を被って横になり私たちは一夜を過ごした。外は変わらず魔物の足音が聞こえるが大きい結晶の洞窟内まで入っては来ないようだった。トキヤが見つけた結晶の洞窟内を偵察しながら、女神が示す地図の場所まで歩む。足元のゴロゴロした結晶の大地をひたすら進む。
「……」
声を出せない事で私たちは黙々と進む。先行し、魔力の残滓を残すトキヤを追いかけながら。
「……はぁ。あなたが静かだと調子狂わね魔王ネフィア」
「そ、そうだね」
「………」
ちょっと私は困った顔をする。やはり声とは重要な意思を伝えるための行為なのを失ってからこそわかったのだ。そう……彼の名前をもう……言うことは出来ない。
「……」
「ご、ごめん。そんな落ち込むなんて。だ、大丈夫……なにが大丈夫かわからばいけど!!」
「りゅ、竜姉さん!! そうだ、ここってどんなとこなの? 詳しく!!」
気を使ってデラスティが話をボルケーノに振る。ボルケーノはゆっくりと説明する。
「竜の墓場だった場所は説明したけど……そうね……死ぬのを待つ場所ね」
「死ぬのを待つ?」
「そう。強大な我らは……死ぬ間際に仲間に食われる危険があった。狩りもする力もなくただただ時間を待つ。痛みを喰われることを良しとせず。最後まで強者を貫くために人知れず待つ場所」
「……竜姉もいつかここに?」
デラスティが少し悲しそうな声で問う。
「……ふふ」
それにボルケーノは微笑みながらデラスティを撫でる。
「安心しなさい……虚勢は張らない……一人で逝くのは淋しいわ」
「竜姉……その……長く生きてください」
「……」
「……」
少し、しんみりした空気が流れる。実際長命といえ……先にどちらか。ワイバーンか先かもしれないしどちらがなんかわからない。
決まった時間しか持っていない故に。
パンッ!!
「「?」」
私は強く手を叩く。それに二人が私を見た。笑顔を向けて……二人の手を取る。
言葉はないが。何となく察してくれるだろう。
「……そうだな。魔王」
「そうですね」
わかってくれたかわからないが……私は二人の手を取り、魔力の残滓を道標に進んでいくのだった。
*
残滓が途切れる。魔力の残滓の切れた先にトキヤが立ち後ろの光の溢れて見にくい穴を指を差した。
「ん……ネフィア? なんで仲良く手を繋いで歩いてきたんだ? 手が塞がったら何かあったとき対応が遅れるぞ?」
「………」
「ふーん。まぁ一応気を付けとけよ」
「トキヤ兄ちゃん。ネフィア姉さんの事わかるの? ずっとなんか会話してるような感じだったけど……」
「まぁな……お前もたまに竜姉さんの事がわかるときがあるだろ?」
「あるある」
「そういうのが……あるってだけだよ」
「……」
「ネフィア、行こう。この先に見つけた」
私たちは洞窟何の終わりに入り込んだ。




