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女体化魔王で成り上がり、婬魔の姫と勇者のハッピーエンドのその先に  作者: 水銀✿党員
第1章~始まりは一人の狂人の連れ去り~
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勇者に夢渡り..


 夜中、カンテラを最小の明るさに調整して2段ベットで横になりながら商店で買った回復魔法の初級本を眺める。昔は読めなかったが読めるように変わっており適正有りと本が判断した。胸糞悪い、恥ずかしい言葉が書いてある。回復魔法と言わず、奇跡と言うらしい。どうでもよいと思うが我は我のために学ぶ。


「奇跡なぞ………無いと言うのに。いや……」


 頭に何かが引っかかる物を感じ、考えないようにする。魔族が奇跡奇跡と言って気持ち悪いし変だ。だが、実際は感じている部分がある。


チャラ


 本を置いてアクアマリンの宝石を手に取り、眺めた。綺麗だと思う心に戸惑いを持ちながら。それを見続ける。「知りたい」と言う心の声が響いた。勇者を知りたい。そんな想いが募る。だからこそ……だから、今日は絶対に夢を覗いて過去を引き出そうと考えた。


 勇者が寝るまで勉強しながら待つ。そして勇者の寝息を感じるまで時間はかからなかった。そこから音を殺し、ゆっくり、ベットから自分は降りる。


「すやすや寝よって………余が暗殺者なら一瞬だな」


 全く、警戒心の無い顔。珍しい腑抜けた顔を眺める。


「ふふ、あんなに恐ろしいほど強い奴なのに寝る姿はかわいいもんだ」


 何分間そうしていただろうか。余は顔を振り本来の目的を思い出す。


「い、いかん!! というか何故見とれるんだ‼」


 勇者の頭に手を乗せる。夢魔は淫らな夢を見せる事が出来るため夢を操るのは得意。本能でどうすればいいかを知っている。姿を変える事も理解できた。


「お前が悪いんだ。何も言わないお前が」


 アクアマリンを触れていない方の手を握り締め、胸に当てる。そしてゆっくり目を閉じて夢に入った。






「ん………ここは?」


 四角い部屋、本棚が沢山あり。机の上には自分が大好きな童話が開いている。


 赤い豪華な天井つきベット。


 窓から日の光が、差し込んでいる。


「……………あれ?」


 見たことある。場所。


 布団から立ち上がり、窓の外を見る。


 魔国の城下町が目に飛び込む。


「………えっ?」


トントン


「ご飯をお持ちしました」


「あっ………うん」


 いつものパンとシチュー。ダークエルフの衛兵の一人が準備をする。


「今日は外へ行きたいと泣かれないのですね。ネファリウスさま」


「あっ……え? 夢……だよね?」


「どうされました?」


「風の勇者とか、余が女になって………旅をする」


「ははは、面白い夢ですね!! ああ、その童話ですか? 面白い夢だったんでしょう。それでは失礼します」


ガチャン。カチャ


 鍵を閉められる音。何度も聞いた音。


「えっ………夢………え?」


 鏡を見ると男の子だ。しだいに視界がボヤける。


「いや………いや………」


 あの日々は幻想だったなんて……嫌だ。嘘だ。


 目に涙が浮かぶ。


 また、狭い世界で時が過ぎる。


「お願い……夢だって言ってえええええ!!」


「おい‼ 起きろネフィア!!」





「おい!! 起きろネフィア!!」


「!?」


 目を開け、飛び起きる。目頭が熱く、目の前が涙で見えない。勇者に覆い被さってる。


「どうした!? すすり泣いた声が聞こえてビックリして起きたら………」


「はは………なんだ。夢だ。うぅうううう」


「あ~お前。大丈夫。悪夢は去った」


「ひっく……そうだな………うん」


 勇者が頭を撫でてくれる。優しく。すごく大きく暖かい手。女になって泣き虫になった。でも我慢しようとしても我慢できない。落ち着くのに時間がかかる。


「お前、俺の夢を見ようとしただろ?」


「な、なぜそれを!?」


「頭に呪文かけて寝てたんだ。夢魔だから覗かれるのが嫌だからな。だけど、すまない。悪気があったわけじゃないんだ。本当にすまない。こんなに……悲しい想いをさせるつもりじゃなかったんだ」


「………すん」


「ああええっと!! 何でもするから!! 何でも!!」


「……………じゃぁ教えてよ!! 『私』に!! なんでこんなことするようになった過去を!! ネフィアって誰!! ねぇ!! 『彼女』って誰!!」


「………ああぁ……ええっと………」


「…………もういい。寝る。バカ。でもチャラにしてあげる。ありがとう………バカ」


 自分は二段ベットにあがって布団にくるまった。怒りと感謝を混ぜた感情がぐるぐるする。そして次第に眠くなり、でも今度は安心して夢を見れそうな気がした。






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