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イヴァリース大平原~遭遇~..


 騎士団員はとうとう山や森を抜け最後の平原。魔国首都イヴァリースの前に広がる大平原に到着した。大平原に名はなく。首都の名をそのまま使いイヴァリース大平原と命名されていた。


「あれ……なんだ?」


「……一旦戻るぞ」


 偵察として先行していた騎士が馬を反転させ騎士団長達を呼ぶ。騎士団長たちは呼ばれた瞬間に馬を走らせ平原を見渡した。


 北騎士団長は偵察に激を飛ばす。


「接敵。数から見て敵主力だ……陣を組め!!」


 帝国の騎士達が馬で主力に命令を行う。迅速に敵と戦えるように慌てて整えるのだった。


 布陣は右翼に南騎士団、東騎士団。中央に傭兵、歩兵、西騎士団。左翼に北騎士団、黒騎士団と西騎士団騎兵たちが展開する。


 両翼を騎兵とし。中央にいる兵士を護るように布陣をし……騎兵を生かす戦術が出来る平原を利用する事が決まった。





「来ましたね。慌てて編成を行っているのが見えます。如何しましょうか?」


「チャンスですが……待ちましょう」


 エルフ族長が私に伝え。それに答えた。頷き、エルフ族長は持ち場に戻ろうとする。その前に私に声をかける。


「姫様。加護があらんことを」


「……ありがとう。まぁどうなるかですね……上手くいけばいいですが」


 都市の城壁に旗を刺し、すっと飛ぶ……高い場所からゆっくり降り、スタッと音を立てて都市の外に出た。都市の外だが、難民の仮設住宅が並び。多くの者が仮に住んでいた。


 視線を浴びる中で待機させていたドレイクに股がる。急いで応援されながら先陣に向かい。


 先陣に用意した天幕のしたに駆け込む。


 入った瞬間に皆がその戦う時が来たのだと理解し、会戦準備を行う。


 それはもう……私が何を言うこともなく準備が始まる。


「……」


「ネフィア。持ち場につくぞ」


「………え、えぇ。なんか一言あっていいじゃない」


「すでに緊張してるんだ」


「トキヤがいっぱい訓練したでしょ?」


「それでもだ」


「……実戦だから?」


「そう……じゃぁ行くぞ」


「……そうね」


 私はドレイクに乗り直し……逐次他の兵士に激励を飛ばしに陣を奔走するのだった。








 にらみ合いから1日たった早朝。遭遇し戦うことはなく準備を行い。にらみ合いが続く。


 いつ決戦の火蓋が落ちてもおかしくはなく。少しネフィアの魔力が焦げ臭い匂いを撒いていた。


 騎士団は両翼を騎兵で固め。そこから平原を駆け回り戦う機動戦の陣を敷く。帝国の強さを知らしめる騎兵隊が準備をした。万の騎兵隊は恐ろしい程の突貫能力を有しているだろう。


 対する魔国は右翼にドレイクの騎兵隊を集め。左翼は歩兵だけである。右翼には帝国の半分以下しか騎兵隊しか居らず。方翼だけになる。背後は都市から伸びる仮設住宅などを盾にしているが歩兵も騎兵隊も数は少なかった。


 帝国の名だたる将は右翼。南騎士団、東騎士団。中央に傭兵長、黒騎士団。左翼に北騎士団、東騎士団。南騎士団長死去の代わりに北と東が主力ともとれ左翼側。魔国右翼の騎兵隊と当たる。空にもワイバーンの騎兵がいるが背後を取れる気配はなかった。都市攻めのも数は少ない。


 そして……ネフィア率いる新生魔国側の名だたる将は右翼。獣人族長、ダークエルフ族長、エルフ族長率いるドレイク騎馬隊。


 中央に悪魔族長エリック。吸血鬼族長セレファと民兵長と精鋭黒い戦士ノワールにサーチがいる。色んな種族混成の歩兵部隊である。


 そして……過激な戦闘が予想される場所。左翼にはオーク族長、トロール族長。そして……名だたる将にまでなったランスロットが指揮をする。


 都市には予備部隊であるアラクネ族長以下昆虫亜人族の兵と民兵が待機していた。予定としては左翼支援になるだろうと予想がされていた。将の数も兵数の差も歴然だった。


 そんな中で新生英魔国の旗が翻り。信号旗が上がる。それは準備が終わった事を示す旗だった。


 差はあれど……誰も敗けを考えず。前だけを向いた。イヴァリース大平原の中心で。歴史で始めて亜人と人間の決戦が行われようとしているのだった。






 帝国が陣の展開が終わり。魔法使いが対禁術魔法を唱え。戦場は魔法のない旧時代の戦いに落ちる。


 魔法は禁止する場合の方が効力は強く。帝国はこれによって数の優位で覇権を手に入れてきた。禁止された元では魔法使いの上位の魔術士も制限がかかり。剣で斬った方が早いと言われるほどだ。


 その整った戦場で兵は火蓋が降りるのを待っていた。


「ふむ……」


 騎士団長達も同じように待ち、急拵えた物見矢倉から相手の陣形を見る。黒騎士団長、北騎士団長、東騎士団長、西騎士団1番隊長が相手の陣を見る。


「黒騎士団長、なんだあの馬は?……あれは……魔王だな」


「ああ。北騎士団長。魔王だな」


 黒騎士団長が仮面の上から双眼鏡を覗き答える。北騎士団長は鼻で笑う。


「あれは……魔国側の馬か」


「目が赤く白いドレイクか。異常個体だな」


「白馬と同じか?」


 陣の前を旗を掲げて左翼から右翼へ走る。その姿に北騎士団長は何をしているか理解はしなかった。しかし……黒騎士団長は眉を歪ませる。


 黒騎士団長は危惧する。士気が異様に高いことに。走る中で亜人達は堂々と誇らしく胸を張っていた。


「白馬のつもりだろうか? 古くさい……あれでは大将が一目でわかるだろう」


「目立つな。確かに……あれの首を取ればいいな」


 魔王は白色の鎧に白い白馬のようなドレイクを乗りながら何かを叫んでいた。それに呼応するかのように大歓声が響く。


「……なるほどやる気は十分か。相手の陣形を見るにこの平原で雌雄を決するつもりだ。しかし、この平たい平原では騎馬を遮る者はいない。向こうにも右翼に騎馬を集めているが……」


「数が少ないな……南騎士団1番隊長と東騎士団長には物足りないか?」


 黒騎士団長が二人に声をかける。


「ガハハハ……中央の魔王の首はワシが近いの1番隊長もな!!」


「ええ。しかし……大きい図体ですね」


「亜人はワシのように大きいが所詮!! 旧時代の無知恵の陣だな」


 両翼に騎士を用意してないのをバカにする東騎士団長。葉巻を取りだし火をつける。


「……フゥ~。あの白馬に矢を放て」


「なっ!?」


 南騎士団1番隊長が驚いた声を出す。後ろに控えていた騎士が物見矢倉から降り、叫ぶ。


「矢など効かないと思うか? あの魔王は所詮お飾りだ……弱々しい文を出すほどにな。愚かに射程内だ」


 白いドレイク乗った魔王が中央で止まる。


 そして……市民を攻撃する用に用意された矢が放たれ。下卑た笑いが物見矢倉から発せられたのだった。







 私はエルフ族長が用意してくれた白いドレイクに乗り。前線の陣の前を駆けながら声をかけていった。もちろん魔法が禁止、妨害されている時でも無理に声を響かせていた。


 声を響かせる事はなんとか出来る。囁くような芸当は出来ないが魔力を反発させて無理矢理声を通した。


 そして……中央に差し迫り止まる。中央の前線にいる悪魔の軍団を指揮する劇場の悪魔エリックと吸血鬼と人間のような狼男たち。人形兵を指揮する吸血鬼セレファに民間の亜人志願兵の長と勇者を倒すために鍛えた精鋭黒い兜と異国の武者鎧を持ち帰り着ている戦士達の長ノワールとサーチに会うために。



 その一瞬だった。


 私は青天の空に多くの影が動いているの見る。


 矢の雨。今の時代はあの矢尻では屈強な兵士は倒れない。旧世代の代物。そう……民を倒すためにだけの殺傷道具。それが面となり雨となり空に埋め尽くされる。



「皆、盾を構えよ!!」



 私は大きく大きく魔力を乗せて叫んだ。怒号が起こる中で兵が上に盾を向ける。


 そして……



ヒョンヒョンヒョン!!



 草原の上に矢尻が突き刺さる。



「女王陛下あああああ!!」


 何人かの臣下の声がした。








「姫様ああああああ!!」


「女王陛下が矢の雨の中に!!」


「ネフィア姉さま!?」


 矢の雨、矢で倒れる愚か者は居ないが数が数であり、その数には屈強な兵士でも耐えられない。そんな中で傘のように防ぐ事の出来る盾を持たない姫様が巻き込まれ慌ててセレファとノワール。サーチが躍り出る。


 あまりの激しい雨に身動きが取れず耐えるなかで皆が不安がる。


 そして……矢は止まった。被害報告があげられていく中で皆が盾を構えるのを止める。


 そして、皆が目を開けて絶句する。



「…………」



 何も言わず、帝国の方に向き背中を見せる女王陛下に誰もが……言葉を失った。ゆっくりと振り向くネフィアの姿に白い翼があるように空見する。


「すいません。私の距離への配慮の無さで起きた突発的な物でしたが……一糸乱れぬ動きは見事でした。正面は任せましたよ」


 女王陛下は声を出し己の失態を謝り、一言だけ「任せる」といいそのまま、何事もなく走っていく。



「………」



 その勇敢な姿に皆が叫んだ。その奇跡に誰もが勇気を手にした。そして……今か今かと敵を見る。



 そう……「早く戦いたい」と叫ぶのだった。







 物見矢倉の騎士団長達は遠くで観戦し何かを魔法で防いだと確認する。


「………ふむ。敵の士気を上げただけか?」


 大草原に広がる歓声に眉を歪ませて東騎士団長は吸いかけの煙草を握りつぶす。


「少し、癪だなあいつ。ワシはもう右翼へ向かう」


 機嫌を損ねた東騎士団長を皆が見つめながら各々が物見矢倉を降りていく。そして、最後に残った黒騎士団長は魔王の姿を双眼鏡で追い続け。帝国側左翼、魔国側右翼の騎馬隊に混じるのが見えた。何人かの報告にあった族長らしい人物と会話をして消える。


 ちょうど、左翼に配置しているため見えるだろう。


「……ふむ。正面にたつは殺しそびれ逃げられた者か」


 黒騎士団長は己の失態からここまでに至ったことに何度も何度も驚かされる。


「……」


 そして、何度も何度も。驚異に思うのだった。そう……その豪運に。









 トラストは最後の用意した紙で3通の手紙を書き。後方部隊の従者の3人に預けた。


「もし、私になにかあればお願いします」


 そう伝え。大きい盾のような剣、ディフェンダーを背負い馬に乗る。剣は取り回しは悪いために別に用意した騎士の丸太のように太い豪槍を地面から引き抜く。


「トラスト殿。ご武運を」


「ああ……」


 馬に鞭を打ち、前線の仲間に合流する。トラストは覚悟決める。


 同期に聞いた情報で「見えた」と言う息子が帝国側右翼に居ることを知る。


 黒騎士団長から聞いた盗まれた聖剣とともに。


「……さぁどうなるでしょうね」


 






 






 

 


 





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