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ノルマン上陸作戦後、旧魔術第2都市戦前..


 スキャラ族長は制圧した浜辺で喜んで宴会している人達を見た。隣には今回の功績者スラリン大隊長とともに壊れず残った壁の上からじっくり眺めていた。


「スラリン姉さん……あれは?」


「ああ、昨日の戦死者です」


「戦死者……戦死者!?」


 スキャラ族長は驚いて聞き返す。戦死者が生きているように見えたからだった。


「生きてる?」


「いいえ……遺体ですよ。なんでしょうね……遺体なんです、もう……でも最後まで戦いたい一心で起き上がった彼らだったんですが。向こうは全く何もせず逃亡しましたね」


 そう、訓練ではネフィア女王陛下がまとめ上げての大攻勢によって敗北を喫したが。今回は何もなく少ない犠牲でこの場所と先の「滅んだ」と言われる都市の地を手に入れた。今は短い休暇のようなものである。


「……祖国は強かった。だけど帝国は弱かった。しかしそれでも死傷者はでる」


 魚人たちが飲み食いし、肩を並べる。しかし、次第に一人ずつ倒れて砂となり海に帰っていく。


「……最後の時間。仲間と共に……私たちに死の先を女王陛下は生んで下さったようです」


「……」


 宴会している人達が減っていく。ゆっくり……ゆっくりと。消えた仲間に我慢できず泣きだす人もいた。


「……スキャラ。サボってるように見えるかも知れないけど。目を瞑って」


「全部の指揮権委託してるんです。何も知りませんし……英霊となる彼らに私たちは咎めるなんて馬鹿なことは出来ませんよ。はい……ハンカチかして」


 スキャラ族長も我慢できず。最後の彼らを見て……もらい泣きをするのだった。





 スキャラ族長以下の海族は都市ホエールさんを浜辺でわざと座礁させて浜に物資を運び、予定として大攻勢をもう一度行い。首都まで目指す予定である。


 滅んだ都市位置にまで進出し簡易な陣を設けて作戦会議しているその時だった。


 スラリン大隊長はある一団が迫ってきていると聞き慌てての防衛線を張る。数は100。全て騎兵だと聞く。


「……スキャラ族長。偵察ですかね?」


「旗はどんな旗ですか?」


 帝国の旗はドラゴンの旗。確認を取ると全く違い。紫の色に盾の紋章だったらしいと聞き「招き入れよ」と命令を下した。


 そして……招き入れ。布の天幕の下で代表の騎士が兜を脱ぐ。


 金髪が靡き、女王陛下のように気高く綺麗な女丈夫が姿を表した。ハイエルフの女性に二人は驚く。


 スキャラ族長は衛兵を下げさせる。天幕の下、スキャラ族長とスラリン大隊長とその女性だけになった。


「マクシミリアン領を治める。マクシミリアン騎士団長エルミア・マクシミリアンです。先の戦い見事でした」


 頭を下げる女性に二人は慌てて跪く。女王陛下のご友人であるために。


「す、す、す……」


「スキャラ落ち着きなさい。私はスラリン大隊長。指揮を任されております。こちらはスキャラ族長です。おもてなしせず申し訳ございません」


「なんで跪ついたの?」


「女王陛下のご友人とお聞きしております。同じ位を持つ者と思います」


「……ネフィアさんは元気ですか?」


 スキャラ族長が深呼吸し答える。


「苦しい戦いの中で頑張っております」


 答えたエルミアはしゃがんでニコニコと笑みを二人に向ける。


「顔を上げてください。そんなに高尚な人物でもないですよ。それにいちいちそんなの大変でしょうし。無礼講で行きましょう。はい立つ」


 二人は慌てて立ち上がる。


「ああ……本当に彼女。魔王になったのね……あんな子だったのにここまで……」


 エルミアは「うんうん」と頷き。二人は顔を見合わせる。


「スキャラ族長さん。ネフィアさんから私について何かを聞いてますか?」


「マクシミリアンに頼りなさいと……」


「ふふ。そう……安心しなさい。私は貴女たちの味方です。戦闘での共同は会ったばかりであり足並みを揃えるのは難しい……なので支援物資を贈ります」


「それは!? 本当ですか!?」


「内陸の補給を任せてください」


「お、おお!!」


 スラリン大隊長は感激し。スキャラ族長は手を上げた。


「内陸の補給とかどうしようか悩んでたんです。海なら得意なんですが」


「そうなんです……いいタイミングでした」


「あら、そうなの。ふふ……良かった。では細かな事。作戦でも私を混ぜてください」


 スキャラ族長は背後に大きな大きな支援者を手に入れるのだった。






 支援を受けられると言うことで。マクシミリアン騎士団が驚く作戦に出る。


 帝国兵が籠る旧魔術第2都市の目の前にマクシミリアン騎士団の陣地が作られたのだ。


「あいつら……敵に向けて防衛戦を仕掛けようとしているみたいです」


 帝国は予想外な援軍に歓喜した。しかし……数日後。マクシミリアン騎士団が単独で突撃すると言う報告が上がり、共同戦線を断っての暴走が開始される。その結果、マクシミリアン領に「敗走した話」が出回った。


 帝国兵はマクシミリアン騎士団の敗走に恐怖を抱き。南騎士団長はその蛮勇を止められなかった事を悔いた。しかし……全ては演技だった。


 マクシミリアン騎士団は支援で都市前に勝手に陣地と補給物資を置きっぱなししたのだ。


 帝国はそれを見逃していた。マクシミリアン騎士団が味方か敵かの判断はつかづ。距離をとっていたのも幸いし。スキャラ族長以下部隊はその陣を奪い(貰い)。都市攻略の足ががりとすることが出来たのだった。


「上手く行きすぎて怖い」


 スキャラ族長はそう言い残す。そして……都市攻略戦が開始された。




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