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ノルマン上陸作戦後編~女傑四天王の誕生~


 スキャラ族長である私はある旗を掲げる。無地に太陽を現した簡素な旗だ。それを手に曇天の空を見る。鳴り響く豪雷の下でその時を待っていた。


「スラリン姉さん見込みは?」


 隣の蒼い美女に作戦の正否を聞く。


「やってみないとわかりませんわ。だけど……やるしかない。向こうも浜に簡素な城壁を組んでる。予想通り」


「女王陛下はそれも予見していた……いいえ。わざと流した。理由はなんでしょうね?」


 そう、奇襲作戦なら作戦を相手にバラす必要はない。


「……スキャラ。それは終わったあとに考えましょう。とにかく今は……目の前の敵を粉砕するのみ」


「ええ……そうね」


ダッダッダッ!!


 魚人の戦士が私たちの元へ駆け寄ってくる。そして、跪き頭を伏せた。


「全軍、指定位置着きました。氷山空母ハボクック全艦発艦許可を」


「……スキャラ族長。命令を」


「命令を出すのは任せます。私は……海兵隊に混じります」


「族長!? しかし!!」


「スキャラ族長……あなた……染まった?」


「陛下はどうされますか?」


 スラリン姉さんと兵士は沈黙する。


「海兵隊指揮は私が取る!! スラリン大隊長……陽の導きがあらんことを。次に会うのは大陸で」


「ふぅ、陸で落ち合いましょう」


 私はゆっくりと二人の前で去ろうとし……


クニュ


ベチン!!


 足を絡ませてコケてしまった。


「……」


「……」


「……うっ」


 私はそのまま立ち上がり二人を見る。


「あのね。スキャラ……『決まってる』と思ったよ……でもね……コケてしまうのはないわ」


「………では先に向かっております」


「……」


 「穴があったら入りたい」と思うのだった。カッコつけたのに。




 私は大隊長の任を任された。他に誰も出来る人はいないと言われて……渋々だった。


 しかし……訓練し、同志、部下と親しく、厳しくしていくうちに、予想よりも遥かに自分が皆の支えになるのがわかった。


 故に導かないといけない。目立つ色として赤く塗ったパンジャンに乗り込んだ。分かりやすい道標だ。


「大隊長!! 前へお願いします」


 第1氷山空母ハボクックに乗り込む。用意がされている空母はダミーも含め50隻に及んだ。


 それにパンジャンとともに乗り込む。すでに命令はしてあった。


[英魔の義務を果たせ(各人の意思で攻めよ)]


「揺れるんで、氷で固定します」


ガッシュン!!


 魔法が使える船員がパンジャンを乗せていく。


「スラリン族長と共に戦える事を光栄に思います」


「スラリン族長と同じ船か!! 帰ったら自慢しよ」


「スキャラ族長!! 帝国なんぞ蹴散らそう!!」


 多くの士気の高い声に満足しながら……後方で大きな喚声が湧いた。船員が話を聞きパンロット(パンジャン操縦者)に話を初めた。


 どうやら海兵隊を率いるため、士気が上がったのだ。勇猛果敢に戦うほど士気は上がるだろう。


「スキャラ族長が前線率いるってよ!! 後ろから来るから……俺たち失敗はできねぇな!!」


「おいよ!!」


「海の女ってやつ見せてやるんだからな!!」


 なお、スラリン含め。スライム族に雌雄は無い。女王陛下と一緒であることにスライム族は誇りに出来る。勘違いであるが。


「よし、行くぞ!! 全軍発艦!!」


ゴワン!!


 船体が大きく揺れ、後方に大きなパンジャン音と海を掻き分ける音が体に響く。


 私を乗せた空母ハボクックを先頭に三角形で編隊を組んで旗を掲げる。皆はその旗にお祈りをしながら浜を目指すのだった。





 海からの魔物避けに作られた簡素な石壁を補強し、杭も深く差し込み、バリスタも設置した砦の上で騎士団員が叫ぶ。


「なんだあれは!?」


「氷の船か!!」


カン!! カン!! カン!!


 曇天の空、鉄の鎧を着た傭兵や騎士たちが鐘を鳴らす。バリスタを構え、魔法使いが呪文詠唱を初めた。


 多くの多くの兵士たちも手にボウガンや槍を構える。


「氷の船でやって来たぞ!! 射程に入ったら打て!!」


 騎士団員が叫び。攻撃の準備が始まる。


「なんじゃ……あれは……」


 壁の上に上がってきた南騎士団長は得体のしれない敵を見る。氷の船だが……暗く遠くて見えなかった。帝国兵に緊張が走った……遠く数十の氷の船が恐ろしい速度で海を走ってくるのだ。泳ぐではない走る。


 そして……射程に入り。鉄の雨と火の魔法による石の雨が氷の船に降り注いだ。





ジャアアアアアアアアア!!


「身構えろ!! 射程に入った!! 攻撃が来る!!」


ドゴーン!!


 空母ハボクックに魔法が当たり屋根が砕け散る。しかし……パンジャンは無傷だ。壊れた先から人魚が魔法で補修し猛攻を耐えていく。その攻撃濃度は……訓練よりも薄く。遥かに優しい物だった。


「ははは!! 実戦の方が優しいとはなんだ!!」


「訓練の方が大変だったぞ!!」


 帝国の攻撃を嘲笑う隊員たち。ここが戦場とは思えぬほど余裕の声。しかし、掲げた旗は千切れ飛んでいる。


 弱い訳じゃない。訓練相手が悪かっただけのことだ。


「もう少しで乗り上げる!! 耐衝撃!!」


ズサアアアアアアアアアアアアア!! ガダン!!


 船隊が勢いよく乗り上げる。スライム達がパンジャンを吹かした。


ガガガガガガ!! ガッシャン!!


「開ける手間が省けたわ……全軍!! 突撃!!」


 目の前の氷が砕け散り目の前に浜が広がる。スライム達は大隊長の叫びと共に浜に乗り上げバリスタや魔法の雨の中を突き進む。





「攻撃が効かない!?」


「どうすれば!!」


「降りてきたところを狙え!!」


 砦の上で怒声が轟く。曇天の空のしたで氷の船が浜に乗り上げた。そして……中から馬車の車輪が転がってくる。


 南騎士団長や他の者たちはその得体のしれない物に攻撃する。赤い車輪を先頭に走り……意志があるのか攻撃を避けていく。そして………驚くことが起こった。


ドゴオオオオオオオオオオン!!


 バリスタを直撃させた車輪が大きな大きな爆発をしたのだ。その威力は上級魔法を凌ぐより遥かに強大な威力だった。


 そして皆がそれの恐ろしさを一瞬で理解する。南騎士団長は叫んだ。


「全部!! 近寄らせるな!!」


 攻撃は苛烈を極める。





「へっ……あいつ。先にいっちまいやがった」


「なーにすぐいく」


「すまねぇ……俺はここまでのようだ」


ズガアアアアアアアアン!!


 1機また1機と攻撃で壊される。しかし……予想よりも遥かに少ない数の被害だけで浜をパンジャンが進む。そして……とうとう……


ガン!!


 残ったパンジャンと赤いパンジャンが一列に砦の壁にくっついた。スライムたちは叫ぶ。


「「「「死に腐れ!!」」」」


 パンジャンが発火し、膨大な熱と光と激しい圧縮した空気押し出し。大気を揺るがす大きな爆発音を響かせる。


 あまりの大きさに……兵士の耳がキーンと聞こえなくなるほどだった。近くにいた生きるものたちも一瞬、何も聞こえなくなる。


 大きな爆発と共に……砦の壁は大きく砕け。パンジャンにくっつかれた場所はすべて吹き飛び崩壊する。





「壁にくっついた!! にげろおおおおお!!」


ギャアアアアアアアアアアアア!!


 兵士達の叫びと爆発音が重なり。石が吹き飛ぶのか見えた。南騎士団長や他の皆もその場を離れる。雷の音のように激しい轟音と共に石壁が吹き飛び多くの兵士の頭に降り注ぐ。


 南騎士団長は騎士に砦を離れ、陣を構える事を命令したが見たことの無い物と破壊力に呆気にとられ、万の兵士が遁走を開始してしまう。南騎士団長はグッとこらえ。全軍撤退を指揮した。


 そして………それを聞き。南騎士団5番隊長以下1000人の騎士が大きな音でビックリし暴れる馬を捨て反転する。


「……殿は勤めます」


 南騎士団員の騎士が盾を持ち……南騎士団長はそれに「すまぬ」と一言伝えて。撤退を行う。


 いつしか……空は明るくなっていく。心とは違い。明るくなっていく。







ズサアアアアアアアアアアアアア!!


 浜に空母ハボクック十数隻が乗り上げ。中にいた海兵隊と言われるスキャラ族長以下の槍を持った兵士が浜に上がった。曇天だった空は晴れて周りは明るい。まるで……栄光が降り注いでいるように。


「全軍突撃!!」


オオオオオオオオオオオオオオオオ!!


 浜を走り、パンジャンドラムで開けられた道を進む。目の前に騎士が盾を持ち応戦の姿勢を見せていた。爆発の中を生き残ったスライム達と数千の海兵隊が騎士へ畳み掛ける。


 スキャラ族長が槍を構え、騎士と合間見えた。


「我が名はスキャラ族長のスキャラ・オクトパス!!」


 声を張り上げて名乗り、ビタンと足で相手の盾に攻撃を加えていく。


 気づけば皆が騎士と乱戦となる。陸では弱い海族だったが。パンジャンの爆発に触発され「我こそは!!」と死をいとわず畳み掛ける。これに騎士はたまった物じゃないと後退しだすが……数に物を言わせ、そこを突き騎士をどんどん打ち倒していく。


 スキャラ族長はそんな中で冷静になる。


「深い追いするな!! 残った砦を制圧し、陣を組め!! 浜を我が物とする」


 逃げる騎士を追いかけるのをやめさせる。そして、盾をもたず持ってきた旗を持って砦を登る。曇天だった空が晴れ……気づけば太陽が顔を出した浜。砦の上に旗を差し……周りを見た。


 抵抗する者は居らず。魚人達の顔が困惑しだす。太陽の光がスキャラ族長に注いだ。


「………勝った。勝ったぞおおおお」


 スキャラ族長は……大きく叫び。皆が槍を掲げたのだった。







 後退した南騎士団は落ち着いた兵士を集め陣を整え逆襲を行おうとした。しかし……偵察によってそれが無意味になる。


 残っていた砦を奪われ……浜に氷の柵など。防御陣を構えていた。残ったバリスタや、兵糧さえもを一瞬で爆発させられている。


 その1手2手先に動く亜人に南騎士団の決定は………


 滅びかけの都市まで撤退だった。この日から……数日後。帝国首都に報が届き大混乱となる。


 自分達が攻められている立場を帝国貴族たちは恐怖したのだった。



 




 


 





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