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上陸作戦前編~歴史が動くその日~


 スキャラ族長はまた、夢に呼び出されたことを知る。空には天高く太陽が登り、白い空間にガゼボがちょこんと立っていた。ウネウネとそちらへ向かう瞬間にバラの花弁が舞い、幻想的な赤いバラ園が生まれ、彼女を驚かせる。


 夢だからこそ魅せれる。バラ園の幻想郷にスキャラ族長は彼女の姿を見つける。


 白い鎧を着たままで傍らに国旗を置いて……椅子に座っていた。あまりの絵になる横顔に息を飲む。


「こんばんわ……スキャラ族長」


「こんばんわです……ネフィア女王陛下」


 ネフィアは立ち上がる。旗を持って……そしてそれをスキャラ族長に突き出した。


「期は満ちました……掲げる日が来ました」


 スキャラ族長はその丸められた旗をつかみ受けとる。受けとる瞬間だった。軽いと思っていた木の棒と布だけである筈だった。なのに振り落としそうになる。


「んぐぅ!?」


 掴んだ瞬間に……スキャラ族長は何とか落とさないように力を込める。ズシッとした重さに驚いた表情をネフィアに向けた。


「……すでに。多くの者が旗の下で英雄になりました。トロール族長、オーク族長に都市インバスに残った住人も皆」


 スキャラ族長は冷や汗をかく。今、そんなことになっていたのかと。


「旗を掲げてください。スキャラ族長……頼みました」


「こ、こんな重い……違う!?」


 スキャラ族長は……旗が軽くなるのがわかる。そして、その旗をそのまま掲げることが出来た。太陽を象った旗が何処からか吹く風によって靡く。


「私は各員、己が義務を果たさんことを期待す」


 ネフィアが真っ直ぐスキャラ族長を見る。スキャラ族長はその目に答えて片手で旗を掲げた。目の前に一瞬、都市インバスや商業都市で散った仲間の勇姿が瞳にちらついた。そして、その勇姿にスキャラ族長は勇気を貰う。


「陽に誓います!! 我ら!! 義務を果たさんことを!!」


 スキャラ族長は大きく叫んだ。







「義務を果たさんことを!!」


 バッ!!


「…………あれ?」


 ベットの上で私は手を上げながら叫んでいた。一緒の部屋で寝ていたスラリンが起きて来る。


「どうしました? スキャラちゃん……」


「スラリンお姉さま………その……」


 夢の中を思いだし、慌てて立ち上がる。


「スラリン大隊長!! 女王陛下から指令です!!」


「!?……内容は!!」


 スキャラ族長の雰囲気に真面目な顔をするスラリンは聞く。「いかなる指令か」と。


「己が義務を果たさんことを期待する」


 スラリンはそれを聞いた瞬間に急いで部屋を出る。そして、数分後……早朝に起床ラッパが鳴り響き都市ホエールは水面へと浮上するのだった。


 都市ホエールの背中に大きな国旗を掲揚し、皆がその意味を知ることになる。


 開戦開始だと。






 浮上し、海面に出た都市ホエール。空は曇っており、所々大きく時化ている。波が激しくホエールの体に打ち付ける。暴風が吹き荒れ、いい天気とは行かなかった。


 しかし、旗の棒は折れる事なく。旗を掲げ続ける。


 その中で、兵士達が集まり、並んだ。暴風は魔法によって防いでいる中で笑みを浮かべる。


「大隊長!! 登壇!!」


「気をつけ!!」


 ザッ!!


 暇な時間に訓練していた結果一糸乱れぬ動きで直立不動の姿勢となる。スラリン大隊長が一つ高い台へと向かい強く踏みしめるように登る。そして、冷徹な美少女は叫んだ。


「全軍、上陸準備を行う!!」


「やっとか!!」


「待ちくたびれたぜ」


「静かに!!」


 ざわつく隊員にスラリン大隊長が黙らせる。


「我々は陛下から大きな任を請け負おった。我等が勝つためには絶対に成功させなければいけない!!」


 隊員たちが息を飲む。


「なぜなら!! 我々を信じ!! 戦い続けている者たちがいる!! 我々の成功を祈り!! 先に英霊となった者たちがいる!!」


 隊員たちは胸に手を当てだす。


「オーク族長は時間を稼ぐために最後まで戦った!! トロール族長はなんと相手の将を討ち取り!! 我等の勝利のために身さえ捧げた!!」


 スラリン大隊長の言葉は嵐に負けずに海原に響く。


「我々は彼ら英雄に何を見せられる!! 恥ずかしい事など見せられない!! 同じ英魔とし誇りをもて!! この作戦を彼らに捧げる鎮魂歌としようではないか!!」


 隊員たちの目の奥に何かが灯る。


「行くぞ!! 英雄の後に続け!! 解散!!」


 スラリン大隊長の号令と共に兵士達上陸作戦の準備をしだす。そして……


グオオオオオオオオォッン!!


 ホエール・リヴァイアサンが吠え、空間を震わせたのだった。






 曇の中、建てた個人用の仮設住宅で南騎士団長は聞いた。


オオオオオオオオオオオ!!


「なんだ?」


 空間を震わせるような雄叫びが海から聞こえてきたのだ。


「………」


 長年の間が囁く。身が引き締められる重圧が海から発せられたのだ。


「……来る!!」


 南騎士団長は敵が海からやって来る事を隊員に告げるのだった。







 この日、帝国と英魔国の歴史に初めての上陸作戦とそれを阻止する戦闘が始まる。


 そして……その戦闘によって。


 大陸に激震が走ることになるのは……誰も知らなかったのだった。


 そう……ある英魔の女王以外は。 


 ノルマン上陸作戦の火蓋が切られる。


 英魔の女王によって。















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