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都市インバス。銀髪鬼と女王陛下..


「女王陛下……申し訳ありません」


 気持ちを切り変えて向かった教会の礼拝堂。その中心で吸血鬼のセレファは頭を下げた。牢屋に止めておいた銀髪鬼が逃げてしまい。結果、大騒ぎらしい。首都に戦力を割いたために残っているのごく少数。討伐にも行けないと言う。


「別に謝ることはないわ。結局、人狼側と教会側は和解してないのでしょう?」


「いえ、和解は済んでいますが……一部の勢力は反発しており。その先方があの銀髪鬼と言われる女性なのです」


「ブラッド・クドルシュチェル。名があるけれど………」


 そう、珍しい。名前があるのは多いが家の名前がある者は魔国では変わっている。種族名が入るのが多いためだ。


「クドルシュチェル家と言うのが元帝国の貴族家であり……人狼となってしまい追放され。流れ着いた者達です。私とは違った元人間ですね」


「……でっ、そのクドルシュチェル家の本拠地は?」


「都市外れにあります。固い黒石の屋敷です。昔からタカ派で味方も殺すほどに残忍な家でした。まぁ暗殺稼業が得意な人種ですね」


「トキヤはしってる?」


「知らない。俺は暗殺が得意だが暗殺者だったことはないぞ? 一応黒騎士だった」


「そうだっけ?」


 夜襲くそ得意なのに。こだわりがあるのだろ。


「まぁいいや……私が直接伺……」


「ネフィア危ない!!」


 ヒョンヒョンヒョン!! カン!!


 私の体を掴みトキヤが庇う。彼の鎧に金属音が教会に響いた。セレファは声をあげる。門の前に立っていた衛兵が大慌てで敵を探す。


「衛兵!! 逆賊です!!」


「どこだ!! どこに!!」


「ネフィア……大丈夫だな。離れろ……敵だ」


「もっと~抱きつくの~ん~」


「敵前!!」


「はっ!? トキヤの庇い行動に体が勝手に………ん?」


 私はなんとなく離れてある場所に手甲を叩きつける。


 スカッ


 それは空振りをするが私は驚き乱れた呼吸音を聞いた。


「トキヤ……見えないね」


「……ネフィア。背後に居たみたいだが見えないな」


「トキヤ、わかる」


「まて……」


 私は目を閉じるトキヤを守るように剣を抜く。


「見つけた!! そこだ!!」


「どこ!?」


 私はトキヤに向かって聞くがトキヤはすでに走りだし、どこかの空間を掴んだ。あまりの速さに私は自分が追い付けてない事を知って、弱体化を感じた。


 トキヤが片手で締め上げ……空いた手で体をまさぐるように調べる。空中をニギニギしているのは何処か不思議だった。


「えーと……人型。見た感じ……ん?」


「……ん?」


 ぬらっと姿が現れる。男の人だった。人狼だろうか。耳がないが人ではないのはわかる。


「存在感を薄くしても気が付いたのは認めてやろう……しかし、姉御は気付かなかったな」


 男が唸る。その瞬間……


 シャン!!


「ん!?」


 私はしゃがみ、背後からの凶刃をさけた。運よく避けられた鋭い剣の間合いから転がるように身を離す。頭の上を刃が通ったのだ。


 ヌラッ


 背後に振り替えって目を凝らす。セレファもそれを見て驚きの声をあげた。


「銀髪鬼!!」


 綺麗な令嬢だった。銀色の髪に黒いドレスがよく似合い。脇に白鞘と言う木の鞘から鍔がない刀を抜いた姿が妖艶に映る。その刀はきっとドスと言うだろう。


「ほう、うちの首への急所をかわす事ができるのね~」


 妖艶に笑みを溢して刀をしまう目の前の女性にセレファは呪文を打つ準備をする。私はそれを一睨みでやめさせた。


「ええ、眼力やねぇ~。しっかり威圧できる程に鋭い。ダイガク(留置される)のお礼に参りにタマを取りに来たら………中々、いい傭兵を雇うとる」


「……女王陛下。お下がりください。銀髪鬼を殺さなかった私の落ち度です」


「せやな~私が生きてるのは甘いわなぁ~じゃが……簡単にタマを取らせんで」


 私は少し微笑む……と言うか笑いを堪えた。トキヤはそのまま男を捻り、気絶させる。そして私の隣へ移動した。どうやら彼は囮だったようだ。


「ネフィア……なんで笑いを堪える?」


「トキヤ……だってさぁー」


 私は彼女に背を向けて二人でコソコソ言い合う。


「どう見ても極道とか任侠とかのそれよ!? 面白すぎるわ」


「いや、確かにどこから見てもそうだが。笑えるか?」


「絶対、吠えてくるよ。あんたらとか、こう~なんか絡んでくる感じで」


「まぁ確かに……笑える展開かも……」


 ああいうのは異世界だけかと思っていたのだ。


「あんたら!! 人の前でコソコソ陰口かい!! 女王陛下ちゅうもんはそんな奴なのかい!!」


「「ぷっ……」」


「なにわろてんねん!! 人、見て笑うなんてええ度胸やぁ!!」


 見た目、令嬢の極道に私たちは緊張が解れた。


「悪かった。あまりに………その……あれだったから」


「仕方ないね」


「おんどりゃ~ちょっとクドルシュチェル家舐めとらんか? 舐めとったら痛い目あうで?」


「ふぅ……銀髪鬼。いいえ。クドルシュチェル家ご当主。ご存知でしょうが……紹介を。我が名はネフィア・ネロリリス」


「俺はトキヤ・ネロリリス……」


「なんや……おまえら………うちはブラッド・クドルシュチェルや仁義を切ってきやがった……なぁ」


 トキヤと私は並び頷いて頭を下げた。


「吸血鬼セレファとの抗争。その怒り、私の顔を立てて収めてくれませんか?」


「……ほう」


 目の前の銀髪鬼が眉を歪ませる。ドスを構えたまま。


「赤の他人がこいつの喧嘩買うちゅうことか?」


「いいえ。セレファは私の倅。ええで」


「……なら、『何してくれる』と言うんや」


「ケジメを見せたる」


 剣を取り出し、小指に触れさせる。どういう事がわかった銀髪鬼が驚いた表情をした。セレファと衛兵が集まって叫ぶ。


「「「女王陛下!?」」」


「ネフィア……今度は指を失うか」


「この場を治めれるなら安い。私の指はええ値段するで」


「……まちな!!」


 銀髪鬼が近付く。そして、笑顔になった。


「お前ら、我が家のシキタリよう知っとんな……堅気がワイらの真似事せんでええ~あんさんの生き指はこいつらには勿体無い……綺麗な指やさかい」


「どうも、許していただきありがとうございます」


「まぁ……興が冷めた。ええで~それよか、ちょっと我が家に来なはい。中々楽しそうな(やっこ)さんと見る。ちと話さんかい?」


「いいですね。まだ日が高いですが?」


「なんや、気にすることない。すーぐ暮れる」


 銀髪鬼が倒れている男を叩いて起こした。


「姐さん!?」


「おわったで、帰るで。セレファ!!」


「………」


「ええ、胆力ある組長や……今回、その顔免じて帰ったるさかい。大人しゅうせいや」


「ふぅ……傘下は嫌か」


「せやな。何度も何度も聞いたけど自由にさせてもらうわ」


 セレファもやれやれと言った感じで私を見た。


「くれぐれも首に……気を付けてください」


「ふん、安心して。『取れるなら取ってみろ』と言うわ」


 勇ましく返事をし私は機嫌が治った銀髪鬼についていくのだった。








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