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開戦二日目~殿~


 夜営の大きな天幕の中で騎士が今日あった出来事を聞いた。メンバーは北東西の騎士団長と代理の南騎士団1番隊長が座る。重々しい空気の中で東騎士団長だけは酒を飲んでいた。嫌われているために黒騎士団長は帝国にお留守番である。


 数で圧倒していた兵士が遁走、鉄塔を登った先で負け、鉄塔さえも破壊されたと兵士が言う。


 予想外な負け方だと一同は思い。亜人の強さを認識した。


「黒騎士と白騎士の二名に大きな巨人と豚の亜人により遁走です」


 東騎士団長が愚痴る。


「全く、情けない兵士どもだ」


 傭兵も含む兵士だったがそれでも押し返され、指揮崩壊が起きてしまった。北騎士団長は腕を組んで考えを話す。もっぱら二人だけの会議のような物だ。


「あそこに4人の将がいると思います。それも指揮能力の高い者が」


「そうだろうな。明日はどう攻める?」


「籠城戦の蓄えがあるでしょう。しかし、攻撃は緩やかであり兵士の数もそう多くはない」


「鉄塔は壊されたがくっつける事を考えると……悪くはない」


「明日はにらみ合いにしましょう。他もいいですね? 次の攻勢は4方向から行きます。それも……塔を立ててのね」


 皆が異議はない事を言う。


「では、会議は解散。塔を作成しましょう」


 皆が気付いていた。槍が降ってくる数を見て……兵の数を。たった5000程度だけと。







「なーんもないな?」


「ないですね?」


「ありませんね」


「ナイノ」


「つまらんな」


 トキヤ、ランスロット、私、トロール族長、オーク族長が双眼鏡で陣を見た。全く動きがなく首を傾げ私を双眼鏡で見る。


 皆の目にはどう言うことだと聞いている目。トキヤは少しシワがと言いかけたのを私はアッパーで黙らせる。ワザとでも許さん。


「つぅ!?」


「私は全て知ってる訳じゃない」


「だが……予想は出来ないか? なんだろうな?」


「帝国が攻めてこないのは不思議ですね」


 皆が不思議がる中で私はふと、砂埃が上がっているのを見る。


「兵が移動しています。陣地移動……」


 わざわざ持ってきた作戦用のテーブルが近くに置いてある。そこに広げられた城の周辺地図を見た。敵を知るには敵の気持ちになってからだ。


 もし、昨日の戦いを見て作戦を練るならどうするか。


「………兵の数を知られましたね」


「ネフィア?」


 皆がテーブルを囲む。


「槍の投擲は連発出来ない故に投げる間隔があります。それを遠くから見ていたら大体の数が予想ができるでしょう」


 前線の兵士からは見えないが。遠くからなら見える。


「他の壁の上を見られているとも思われますし……あの大規模な敵前の陣地変更は我々が打って出れない兵数なのを感じての行為でしょう。もし、出てくるならの陽動かもしれませんね」


 皆が息を飲む。何が起きるかわかったのだ。


「一枚一枚兵を薄く展開しても……それを撃ち破る力は私たち無いのがバレますね」


「しかも女王さんよ………この広い壁を全て守れんぞ」


「知ってます。帝国は気付いた。一斉にかかれば……穴が空くことを」


 的確な兵分散。国力があるために出来る敵前の大胆な陣地変換。熟練の戦争経験者の目は鋭い。


「攻撃準備はいつまでかけるか分かりませんが………次がこの都市最後ですね………」


 私は目を閉じて溜め息を吐く。時間を稼げれないことが分かったのだ。兵が少なすぎた。


「負けか……初戦で崩れんかっただけマシだな」


「オデモソウオモウ」


「………それでも何人かは」


 バシン!!


「ぐっ」


 大きな大きな叩く音が響く。オーク族長が私の背中を叩いたのだ。少し噎せてケホケホする。


「な、なんですか……」


「胸を張れ、最初の日から暗い顔をしてなかっただろ。1日で滅入っては困る。これからなのだからな……」


「オデモ、オウエン」


「……そうですね。出来る事を考えましょう」


「それについてだが……親方と話し合った。ワシらだけ残る」


「!?」


 私は驚いた顔で二人を見る。


「今から首都へ帰れ、女王!! 囲まれる前に脱出し、都市に残した若いオーク族をまとめよ!!」


「しかし!!」


「オデモ、ワカイセガレガイル……ジシンノワガコ」


「そうだ。殿は任せろ……お主はな……必要なのだ。ここで倒れてはいけない」


「……見殺しに」


「見殺し? バカいえ、我々だけで勝てる。そうだろ?」


「ソウダ」


 二人がニヤニヤとして私の頭を交互に撫でた。


「若いのに背負わすのはあれだが。今からはあんたら新しい若いのが引っ張る時代になった。ワシらでは無理な方法でな……」


「………うぅ」


 私は心底悔しい思いをする。無理なものは無理であり……己の非力を呪う。わかっていたことだ。自分の策だが……決意が揺らぐ。


「ネフィア、北門を開ける準備は終わってる……実はもうすでに聞いていたんだ」


 トキヤが肩を叩く。


「兵は残りたいやつだけ残す。早く支度しろ女王さんよ。最初からわかってただろ? それ以上はワガママだ。来ただけで皆は喜んでるさ」


 私は喚こうかと思ったがヤメて唸るだけにする。テコでも動かないだろう事は……わかっている。


「非力を許して」


「なーに。悪いのは今まで争ってた我々だ!! あーんな帝国を舐めてた我々の罪だ。背負わせてすまんな」


 オーク族長は腹をかかえて笑う。豪快に、楽しそうに笑い続けるのだった。






 日の高いうちにドレイクに跨がり北門まで向かった。トキヤにランスロットは門を出た先を走り偵察に出掛けている。私だけ、時間をズラしての出発だった。


 理由は何故かわからなかったが……北門の向かう道を見たら一瞬で理解できる。


 石畳に両翼1列。道に並んだ亜人達が直立不動で胸に当てる敬礼し。一部は旗を掲げ、胸を張っていた。長い列の中心を私はゆっくりと進んだ。


 皆の期待と羨望の目線に笑顔で答える。陛下の旗を掲げなおし、持ちながら。


 途中、オーク族長とトロール族長が現れ、列を崩して兵士が後ろに付き従い、静かな門出を見守る。


 それは門の下まで続き。私は……門の下でドレイクを振り向き変え、後ろについてきていた英魔達を見る。清々しいまでに笑顔で私を見つめ……私は泣きそうなのを飲み込んだ。


 女々しい事はいらない。皆が静かに私を見る。


「私以外に……去るものはいないのだな……」


「そうだ。皆は覚悟の上で残った者達だ。絶対に勝つためにな」


「オデタチハミライノタメニ」


 私は旗を掲げながら叫んだ。大きく白い翼を広げて。


「諸君は英魔族の誇りであり!! 英雄だ!! 故に義務を果たさんことを私、女王が期待する!! 後で会おう。ヴァルハラの地で!!」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


 膨大な声量が都市に木霊する。私を応援する声や、勝利を望む声に、女神として敬う声。多くの仲間に……背中を押される。


「………ふふ。勇ましい。英雄たちに陽の祝福を」


 何故か笑みがこぼれおち、翼をはためかせて羽根を舞わす。


 不思議と一人一人に魔力の羽根が風に乗って届けられ手に乗り、光となって残る。負傷者も皆がその光景に驚き。光となった羽根を胸に抱く。


 熱が覚めたかのよう静かになり。私は羽根を仕舞い。急いで門を出た。


 背後から……門が閉ざされる音と共に振り向かずにドレイクで走り走り抜ける。


「……うぐっ……うぅぅ……」


 我慢していた雫を……溢しながら。





「……イッタナ」


「ああ、これでいい。これでな………」


 門を閉ざし、石で封をする。そして、兵たちは口々に女王陛下を称える声を出しながら四方に分散した。


 「次に会うのはヴァルハラで」と言いながら。


「……でっ。おまえ……残って良かったのか? 今からでも……」


 オーク族長は隠れているだろう妻に声をかけた。悪魔の女性は笑みを向ける。


「あなたが私を寝取り犯し、孕ませ、人生を歪ませた。その時に言っただろう……死ぬ瞬間を笑って蔑んでやると。踏みつけて惨めに呪いながら殺してやるとな」


「懐かしいな」


「そのチャンスが来たのよ……残る理由には十分よ」


 大きな矛を振り回し。オーク族長の妻は笑顔を向ける。


「惨めな、慰め物の人生だったわ」


「すまんかったな~まぁもう、いつでも首はやる。最後にな」


「……感謝の言葉はないの?」


 オーク族長は頭を掻く。女王陛下の顔を思い浮かべ、頷き。背を向けた。


「ありがとうな……」


「ふぅ。嫌な人生だったけど…………全く悪くなかったわ」


 トロール族長は空気を読んでその場を後にし、オーク族長は鼻を掻いてなんとも言えない顔をするのだった。






「………」


「ネフィアこっちだ」


 平原から森に入った所に護衛や偵察を行うトキヤとランスロットが見えた。ドレイクに二人は乗りこちらに手招きをする。途中、帝国の偵察兵が死んでいたのは彼らにやられたからだろう。


「お前だけか……」


「……うん」


「トキヤさん、ネフィアさん……いきましょう」


「ああ、ネフィア。悲しいのは分かるが、お前のすべき事は……」


「わかってる……わかってた……こうなるって事は……わかってた。覚悟した……でもさ……皆……どんな顔をして私を見てたと思う?」


 私は怒られたかったのかもしれない。なんでそんな愚かなことをや、最初っから逃げればとか……色々と罵声とかを覚悟した。「死ね」と言ってるような物であり。それを伝えたような物だった。


「……笑顔だった。皆、私に対して笑顔で助かることに喜んでた……自分よりも私を……あんなにも多い人たちが」


「……」


「……」


 二人は頭を掻く。


「帝国の兵よりも格好いい生きざまだな」


「全くです。あいつらに見せてやりたい程に」


「……」


「ネフィア。あいつらはお前に未来を託したんだ。悲しむのはあとにしよう」


「……うん」


 私は涙を拭い。前を見る。押された背中は翼は熱を持つ。


「ネフィア、翼を仕舞え。目立つ」


「ごめん……では行こう!!」


 力強く、行こうと叫んだ。私にはまだやることがある。そう、やることが。


 英魔の勝利のために!!


















 


















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