日誌①..
日誌・遠征1月目
スパルタ国に到着した。我々帝国はスパルタ国で再度、物資を馬車に積む。多くの金を使い補充した。
先発偵察騎兵によると亜人の都市は藻抜けの空だったと報告があり、先の商業都市に兵が集まっている様子。
激戦は商業都市についてからと判断する。
願わくば帝国の栄光があらんことを。
*
愛する。我が妻、アメリアへ。
今は都市スパルタだ。この手紙が届く頃には出発しているだろう。
都市スパルタは思った以上に勇敢な男が多い。コロシアムもある。
だが……少し私には少々むさ苦しい場所と言える。気温は砂漠であり暑く。鎧の上で肉が焼けるほどに熱される。
君を連れてここへは来れないほどに過酷だ。
しかし、魔法使いを雇えば涼しくすごす事ができるだろう。いつか……君が体調の許す限り、二人で訪れたい物だ。
今日は体調は優れるかい? 立ち上がれるかい?
不安ではあるが……元気でいてほしいと願うよ。
愛してる我が姫よ。トラストより。
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女王観察日記~研究記録30日~
エルフ族長からの使命で監視を始めて1月。姫様の周りに多くの亜人が集まっている。
姫様は野球という遊びに色んな種族が声をかけて誘い。それに応えていた。
偏見を持たず。どんな種族ともわかり会える女王の姿に驚く。容赦ない死球にも驚く。誰も姫様にぶつけられても文句は言えないだろうからの戦法だ。容赦ない。
目の前に迫っている帝国の遠征部隊に……怖じけない姿に勇気づけられる。
勝てない戦でも。きっと……
*
「トキヤ……皆で何してるんだ?」
「ああ、ランスロット」
俺は壁の上で眼下を見ていた。同じように衛兵も眺めている。その中でランスロットに声をかられたのだ。
「野球っていう遊びだよ」
「……投げ合う遊びですね」
「そそ。ルールもあるけど。ああやってネフィアがしっかり教えたら。まーじめに覚えてるんだよ奴等は」
笑顔で初心者の衛兵にルールを教えていく。覚えている衛兵はすでに18人、何個も小隊で集まって遊んでいた。
「……面白そうですね」
「面白いよ。でっ……蜘蛛姫は?」
「馬のお嬢さんと一緒に首都へ。一応まとめないといけませんからね族長として」
「嫁が族長は大変だな」
「奥さまが女王な方が苦労するでしょう?」
「元から王の才能持っている奴ほど。楽でいいよ。勝手に……やるんだからさ」
「ですね……」
壁の石に座り俺は一言聞く。
「お前の父親。出てくるだろうな」
「南騎士団6番隊長ですから」
「……人はわからないけど。旧き黒騎士の一人だから。強いだろうな」
俺は親友の心情を聞き出そうとする。自分には家族はネフィアしかいない。だからこそ……「悩まないのか」と。
「父上は……優しい人で、そしてやはり黒騎士でした。あとは母上を愛しすぎて引いてましたが………今は気持ちがわかるので。複雑です」
「……」
ランスロットは笑みを向ける。苦笑いのようだが。
「確かに父上と剣を交えるかもしれません。僕はそれでもいいと思っています」
「家族でもか?」
「もちろん。父上は母上を姫と呼んで怒られてましたが。僕もリデァアを姫と呼んでます。そういうことです。トキヤと同じです」
「女のために捨てる事なんてないぞ」
「残念ですが。昔から教育で……騎士たるもの『姫を護ってこそ』と教えられて育ちましたから。だから。交える事は気にしませんよ」
「………昔のお前とは違うな」
「昔の事は言わないでください。恥ずかしいので」
ランスロットは顔を背ける。黒歴史と言いたいのだろう。
「………わかった。嫌なんだな」
「はい。憎たらしい顔をしてますね」
「もちろん。嫌ならやるまでよ」
ランスロットと壁の上で昔話をしだす。昔話をするほどに我々は長い時間を過ごした気がした。昔は帝国のために剣を握った仲がいつの間にか完全に裏切り者になっているなんて……面白いじゃないか。
*
帝国遠征から1月と1日
スパルタ国を出発。目指すは商業都市。
魔物の被害は無い。
懸案事項は無い。
そして……士気も高い。勝って貴族の仲間入りや上に階級になれるチャンス。
誰が多くの兵士の首を狩れるか。競争である。
多くの者が功を求める。
私も前線で戦えればよかったのだが………




