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帝国遠征開始、魔国防衛準備..


 帝国歴496年夏期北伐開始


 予定年数は1、2年の大遠征予定とし、補給路を確保して進軍の大攻勢が実施される。


 部隊は四方騎士団による。遠征が実施され、多くの帝国民に応援されての出発だった。


 悪を滅ぼす聖戦と讃えるために多くの妄想の書がしたためられる。


 その軍団は歴代で最大に膨れ、通る道は何重にも踏み固められ石になるほどの膨大な兵士が動く。


 誰もその数を把握する前にすでに勝利をしたかのように話を始める。帝国の未来は明るいと上級貴族は笑顔で語った。






「ネフィア、帝国が今日、出発だろう」


 パシッ!! シュッ!!


「そうだね。トキヤのもって帰ってきた情報なら!! ん!!」


 パシッ!! シュッ!! 


「到着予定まで時間があるな」


 パシッ!!


「……多くの兵を用意しすぎですね。帝国は」


 私は自分の名前の商業都市ネフィアに馬を走らせながら来る。リザード族長以下獣人の民も大移動を始め、思っていた以上に帝国が時間を要してくれたため。なんとかここまで移動する事が出来た。あとはここで1日でも多く耐えて時間を稼ぎ……ゆっくりゆっくりと都市イヴァリースに戦力を集める予定だ。


 シュッ!! パシッ!!


「そこそこいい球だ。まぁ本当にそこそこだが」


 トキヤがお手製のボールを握りながら構える。それを私に向けて投げて……私は手にはめたこれもお手製のグローブで球を捕球する。そう、私たちは都市郊外で作ったボールとグローブでキャッチボールをして、時間を潰していた。思った以上に時間が余っている。


「民の歩は遅い。老人も子供もいる。時間があればあるほどいいのだけれど!!」


 シュヴァ!! バシン!!


「ああ、今のところお前の狙い通り。戦力は少し分散出来た。あとは……ここをどれだけ耐え、都市インバスでどれだけ将を殺し。都市イヴァリースで決戦迎えるかだな」


 シュッ!! バシ!!


 私は球を捕りながら頷く。今のところはいいと言える。まぁまだ戦ってはないが。


「今のところはいいね!!」


 大きく振りかぶって投げる。力込めて。


 シュバアアアアアアン!! バシン!!


 トキヤは力を込めた球をそつなく素手で掴む。


「……まぁ本当に。どうなるかな~。それよりなんか楽しいなこれ」


 シュッ!! バシ!!


「楽しいね。キャッチボオオオオオオルウウウウウウウ!!」


 渾身の力を入れて投げ放った。


 シュルルルルルルルルルルルルルルシュバアアアアアアアアン!! バシンッ!!


 トキヤは難なく捕球する。


「……なんで楽しんだろうな……なんか。心の奥で懐かしさを感じるよ」


「ゼハァゼハァ………そう……」


 「全く、余裕ですよ」といった顔で捕球され続け。私はムッとした。彼が投げ返した球を捕球して、力を溜める。その涼しい顔を歪ませるために。


「んんがしゃああああああああああ!!」


 全力で投げつけ………勢い余ってトキヤのはるか上を飛んでいく。


「あああああ!! ネフィア力みすぎ!! 一個球が無くなったぞ!!」


「ゼハァ……ゼハァ……ごめん……ゼハァ……畜生。なんでトキヤは涼しい顔してるのよ」


「お前の球は回転が緩く面白味のない球だ」


「………じゃぁ、トキヤは面白味球を投げれるの?」


「まぁそこそこ。行くぞ」


「はーい」


 私は頷きトキヤを見続ける。真面目な顔で地面を踏みしめて投げつけた。何も冗談言わず。キリッとした表情に私は惚れ直す。


「あぁ……トキヤ格好い………あっ!? 速い!?」


 格好いい姿から放たれた球が途中から加速するような錯覚に陥り捕球をミス。腹部の下部に当たる。


「が!?」


 鎧も着ず、一般の私服だった私はお腹に球を受けてしまい。しゃがんで痛みに耐える。地味な痛みに驚きながら顔をあげると。心配そうなトキヤの顔がすぐちかくにある。


「球が……の、ノビた……ちょっと痛い」


「何ボーっとしてたんだ? 大丈夫そうだな」


「ははは……格好いいと見とれてたら。思った以上だった」


「以外だろ? まぁこの球だからだろう。石ころはなーんも考えずに投げつけるし」


 私は立ち上がりキャッチボールを続ける。壁の上から様子を伺っている人たちを尻目に遊びを続ける。


「トキヤって野球好きだよね」


「なんでだ?」


「だって、めっちゃ楽しそう」


「ああ~楽しいなぁ。思った以上に楽しい。懐かしい」


 トキヤの懐かしいと言う発言に少し……私は悩んだ。そして考える。


「野球広める? トキヤがこんなに好きなら頑張って広報するよ」


「いや。別に……いいよ」


 球を捕球し。首をかしげる。


「なんで? 『もし戦争に勝ったら広めるんだ』って言おうとしたのに」


「なんと言うか。まぁ~あれだ。どうせ流行らんし今で十分楽しいからな。それにキャッチボールぐらいが何処でもやってる」


「………トキヤ」


 私は彼の魂に声をかけようと思っている。もしも、魂に刻まれているなら反応を示すだろう。


「黄色白色シマシマ。弱いよね」


「いきなりなんだ?」


 捕球しながら首をかしげるトキヤ。


「青いチーム雑魚」


「?」


 全く反応がない。トキヤが投げる構えをする。


「赤いチーム万年最下位争い~!!」


「あん?」


 ビュルルル!! クイッ!! ゲシ!!


「ぐふっ!!」


「ネフィア!? すまん!! つい!!」


 トキヤの球が落ち、腹部に直撃する。女の子で良かったほどに良くないところに当たる。男の人は悶絶する場所だ。昔ならオチンチン痛かっただろう。


「だ、大丈夫。お、女の子だから」


「ネフィア……なんか。すまん」


「いいよ……万年最下位は言いすぎた」


「……」


 しゃがんでピクピクしながら……立ち上がる。スカートが少し汚れているのをはたきながら城壁をみる。観衆が集まっており私たちを見ていた。手を振ると振り返してくれる。


「……ネフィア。いいのか遊んでいて」


「遊んでいるほどに余裕を見せる方が皆の気が休まるんです。例えここで負けようとね……」


「南方騎士団長以外が全て来る」


「そう……全てね。ふぅ。あと100球ぐらいでやめましょう」


「おう。大丈夫か?」


「私は女よ。痛みに強いの」


 私は顔を暗くする事が出来ない。皆に不安を生み出すために。だからこそ……トキヤと遊び、気をまぎらわせる。彼らを犠牲にする罪悪感を押し殺して。





 午後、昼を取った後に過去の族長たちがおいていた監視館に身を寄せる。兵たちは市民が残した空室となった家々を勝手に借りて住み。残した物で飲み食いしている。


 結局、腐らせるか捨てるかするので勿体ないためだ。最後は毒を入れる。金品も置いてあるが、くれてやるつもりだった。


 執務室に座りながら。ああ、私自身がこんな所にと感慨深くなる。


 男の仕事部屋に私は居ると。


トントンガチャ


「勝手に入るぞ」


「あら……どちら様……えっ?」


「おう……なんでここにいる?」


 執務室に知り合いの人が現れた。ソファーに座っていたトキヤが立ち上がる。大きい体の片腕の大豚の亜人。オーク族長が挨拶に来る。トキヤが亜人の前にたちはだかる。


「ここにいて悪いか? ワシは戦が好きじゃから戦いたくての」


「だからと言って族長が来るべきではない。首都の増強が任務だろう」


「首都には帰ってきた我が倅がいる。老兵のみが来ているだけだ。なーにお前らも女王とその王配だろうが!!」


「……そうだが。一人でも多く首都に居てもらわんと」


「時間稼ぎは多い方がいい。ワシらの若いのが成長するのに時間が足らん。ワシはその時間を稼ぎに来たのだ。ぶつくさ文句を言うな」


 オークがトキヤの頭を強く撫でる。トキヤはそれに抵抗せず受け入れた。


「わけぇの。老人の言うことは聞け」


「………」


「おめぇぐらいの息子が居るから安心せい」


「……わかった」


 トキヤが退いた後、移動していた私はオーク族長を見上げる。そして、手を伸ばした。


「意志が固いのは確認できました。ようこそネフィアに。一緒に戦いましょう」


 オーク族長はその手を掴みニヤっとする。


「ええ女だ。寝取りたいほどにな」


「ええ女だろう。俺の物だ」


「ククク。ああ、王配。お前は立派な男だな。しっかりと護る。取られんように」


 私はトキヤが褒められて嬉しいので微笑んで頷く。


「ネフィア……お前が喜んでどうする」


「ガハハハハハハ。熱々やな!!」


 オーク族長は片腕で私の頭も撫でるのだった。鬼気迫る人だったが柔らかいおじさんになった気がしたのだった。

















 




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