とある夢記憶..
「女王陛下その……申し訳ありません!!」
「ん?」
私は夢の中で女王陛下にお呼ばれした。何か不敬を働いたに違いない。跪き頭を下げる。床に額をつけて許しを乞う。
「申し訳ありませんでした!!」
「………ごめん。不敬とかそんな事で呼んだわけじゃないわ。それに早く座って。この夢を維持するの大変なの。それもジリジリ脳ミソが溶けるぐらいに」
「は、はい!!」
慌てて席に座る。美しい金色の髪を靡かせる女王は私を見つめて笑み向けてくださった。
「かわいいお嬢さんと思っていたのですが。あなたは流石族長。素晴らしい成果でした」
「い、いえ……」
兵器案は女王様の案だった。それを実行したに過ぎないと述べようとした。しかし、手で制されて口を閉ざす。「そんなことよりも聞きたいことがある」と言う。
「今の現状は?」
「は、はい……都市ホエールは南下中です。まだ付くには時間を要します。大型なリヴァイア種との交戦もありますが問題なく進めております」
「それはよかった……海は大変ですものね」
「はい。しかし!! 私たちは捕食者となれました!! これも女王陛下の!!」
「ストップ!! ストップ!! 讚美はどうでもいいから!!」
「………す、すいません」
「自慢したのはわかるから。全て終わったら聞いてあげるから」
「はい……」
私は顔を伏せる。恥ずかしい。なんて失態を。
「ふぅ。実は帝国に上陸作戦が漏れたらしい」
「!?」
私は顔を上げた。
「もしかして……裏切り者が!!」
「いいえ、『予想通り』と言う」
「予想通り?」
「ええ、だって『流すように』と私が言ったから」
「な、なぜ!? それでは上陸作戦の失敗するかもしれませんよ!!」
「失敗? あなたは失敗すると思うの? 私は成功出来ると確信してるわよ」
「あっ……うぅ……ひぐ……」
言葉に窮する。女王陛下の絶大な信頼は胃が痛い。重たすぎる。からだが緊張し泣いてしまう。
「泣かないでよ」
「ずび、ずびまぜん」
「……まぁ作戦変更。上陸作戦の成否は問わない。目的は徹底的に兵士を殺せ」
「ばい?」
「ハンカチかみなさい」
「んんんんん!!」
私はハンカチで鼻をかんだ。
「それで……徹底的に兵士を殺せとは?」
「上陸作戦は一回で終わらせないの。攻めを何回に分けて行い。敵の戦力を削いで行く。何度も何度も……それで失敗してもいいわ。上陸出来なくても多くの敵を消せばね」
「………」
「どうしたの不服?」
私は顔に出ていたのかもしれない。少しだけ……泣いて吹っ切れたのだ。女王陛下の考えは読み取れなかったが「最低限これだけはしてね」と基準を言っている。
信用されているようでされていないようにも取れた。
「私の信頼する兵士に失敗はないです」
「あら……では。何処まで行けるの?」
「帝国の砦前まで!! 行ってやりますよ!!」
「出来るの?」
「やるんです!! 最低限の仕事はそれですね。じゃぁ………」
私は胸を張る。代表で宣言する。
「我々で帝国を落としても問題ないですね」
「………ふふふふふ!! はははははははははは!!」
女王陛下は頭を押さえながら大きく笑う。「愚かね」と道化を笑うように。女王は帝国を見ているのだろうからの笑いだった。しかし……私は引く気はない。
「いいわ、最低限以外は好きにして!! いい情報をあげるから!!」
「なんですか?」
「マクシミリアン騎士団は味方となった。同じ帝国を敵として剣を握る。動きはわからないけど……協力できるならしなさい」
女王陛下は地図を生み出し、場所を示すした。ここからがマクシミリアンの領地らしいのだ。
「マクシミリアン騎士団は族長のように強い。知り合いもいる。エルミアと言う名を尋ねなさい。彼女は私よりも上位者。不敬は許されない」
「…………わかりました」
そんな人が居るとは思えなかったが私は頷いた。泣き虫の私は何処かへと消え今は燃える闘志を押さえながら夢から醒めたのだった。
*
早朝、私、ネフィア・ネロリリスは頭が痛い。
「能力使いすぎた………」
トキヤを呼び、その後にリリスを呼んだ。夢を操る能力を持っているからこそ出来る芸当だが。それ相応に魔力も体力も失う。
「夢は繋がってる。過去未来現在と……でも……」
それを泳ぐのは並大抵の事ではなかった。自我を保ち、座標を決め、描き生み出すのは一苦労である。
「スキャラ族長は大丈夫かしら……リヴァイア種に勝ったから気が強くなってる気がするけども大丈夫よね………きっと」
私は立ち上がり、椅子に座る。想い描く盤面の通りになるかはわからないがどうにかそこまで持っていきたいと願う。
「時間を稼ぐ……とにかく」
時間が惜しいと思いつつ、鎧に着替えて宿を出た。向かうは昨日と同じ場所。リザード族長の居城に。
*
執務室に私は案内してもらう。護衛など居ないのを皆が不振がっていたが弱い護衛なんか要らない事が噂され、瞬く間に納得した表情でその説が広まった。
「女王陛下……昨日はすいません。あと、この者の出席を許していただきありがとうございます」
「…………ふん」
昨日の今日で嫌われているのは知っているが、その「愛してます」と言う行為が微笑ましくあり同席を私は許した。
「いいのいいの。愛の女神も許したでしょう。それよりも本題ね」
「はい」
「時間は少しあるけれどもここを捨て……北へ目指すのは進んでいる?」
「……少しイザコザはありましたがこの屈辱をいつか晴らさんという士気の元で纏まりました。また約束事を決めて味方を増やしました」
「では……移動を開始はいつから?」
「一応、民はゆっくりと旅をしております。老いた者も多く………中々進みが遅いですが」
「そうですか。そうでしょうね」
「間に合いますでしょうか?」
「間に合わない。だから商業都市で抑える事が必要よ」
「………そうですか」
リザード族長が溜め息を吐く。
「……『死ぬ覚悟を持て』と言うことですね」
「苦しいでしょうが……そう言うことです」
「…………無駄死に」
「無駄ではないわ。いいえ、無駄にはしない。死者を愚者か英雄にするのは生きてる私たちが決めるの。生きていればね」
「……」
「……」
二人が私を見ながら目を見開く。
「なぜ驚くの?」
「いえ……そういう考えがあるのですね」
「まぁ、私の考えだけだけどね。あなたにも居るでしょう。忘れられない人が」
私にはいる。彼にもいる。
「わかりました。商業都市に迅速に向かわせます。以上ですか女王陛下?」
「以上です」
「では……今度はこれを」
リザードが奥さんから手紙を貰い私に渡す。
「スパルタ国からの親書です女王陛下」
「……親書?」
「届いたのは昨日、届けに行こうとした時にですね。申し訳ないのは……封を切りました」
私はそれを受け取り中身を確認する。封を切っているために内容偽装などもされていても不思議ではないが。そんな臣下はいない事も知っているので内容を疑わず見た。
「スパルタ国は絶対帝国側かと思った」
「それを確認されてもよろしいのではないでしょうか?」
「………しょうがない。会いたくないけど……近いし会いに行ってあげましょう」
手紙を懐に入れた。内容は「話をしたい」との旨をかかれている私が送った宣戦手紙の返書だ。
「女王陛下……実はですね」
「なに?」
「すでに客人で迎えております」
私は嫌な予感しかせず。頭を抑えるのだった。




