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都市カタン、急報..


 私は一月もかけてリザード族長の都市カタンの砦門をドレイクに股がったままくぐった。勢いよく走り抜け、そのまま衛兵に止められる。場所は都市スパルタから北東に位置し、全く旅人なども寄らない小さな都市だ。


「止まれ!!」


 二人の蜥蜴男が槍を向けた先でドレイクが止まり、荒い呼吸のまま首を垂らす。「今までよく走った」と言えよう。


「何者!!」


 旅用に着ていたマントのフードを取る。旅でくすんだであろう金色の髪を見せつけた。プラチナの被り物が輝くだろうと思いつつ太陽を見上げる。


「じょ!? 女王陛下!?」


 カランカラン


 衛兵が槍を落とし跪く。私の威光はこんな遠い土地にも届いているようだ。全く誰のせいでこんなになったのか。


「不問。お主らは怪しい者を問いただしただけだ。気にすることはない。リザードは何処か!!」


「中央の族長中城でご御座います。ご案内します」


「いらん。場所は中央だな……このドレイクに水と休養を頼む。荷物はどこか宿屋でも置いといてくれ」


「は、はい」


 私は降り、頑張ってくれたドレイクの頭を撫でてそのまま走り出す。人垣が出来ている中を、昔のように避け跳躍し屋根に上がる。一番高く大きい石の積まれた建物を見つけそこへ向けて走り出した。背中の両翼を見せつけながら。


「……あれ……!?」


「あれみろ!! あの羽根!!」


 多くの人目につくように走り。跳躍し、真っ直ぐ前へと進み。最後の屋根から大きく大きくジャンプし、族長が居るだろう建物の前に降り立つ。


 目に前には大きな扉に両脇の牛の亜人。厳つい門番が立っており大きな矛で仁王立ちしていた。私は羽根を閉じ、髪を靡かせる。旅でくすんでいると思ったが……なびく、色も悪くないと思う。


 身嗜みとしては……臭いだけかもしれない。早く用件を済ませ風呂に入りたいところだ。


「通してもらおう」


「……例外で女王陛下をお通しすることは……」


 ドンッ!!


「女王陛下!?」


「!? リザード族長!?」


「やぁリザード族長」


 扉を蹴破り、現れたのは赤い蜥蜴の族長。リザードが現れる。その隣には猫耳のマスクをした女性がスッと現れては高速で私も後ろについた。軽装な血の臭いの染み付いた物。まるでトキヤのような人だと感じる。


「本物……ね。私の動きが見えてる」


「……」


 方目だけだが何とか見れただけである。首筋にナイフを突きつけられた。恨みでも勝ったか。


「リンス。やめろ」


「……娘のこと……ありがとう」


「綺麗なドレスでしたでしょ?」


「……はい」


「すまん。女王陛下……影の物だった故に……」


「いい部下で強い女性です。素晴らしいと思いますしこうやって嫉妬する事もかわいいと思います」


「………」


「リンス。お前には殺れない。ナイフを下ろせ!!」


「でも……」


「下ろせ」


「……つ。この売女」


 嫉妬深い女性は強い。私はよく知っている。だからか翼で押し出し、ナイフを退かせ、後ろを向いてニコッと笑い。


 ガッ!!


 ガンッ!!


 素早く顔面を掴み地面に叩きつけた。遠慮なく、牛の亜人が驚き飛び上がる程に。


「ぐふっ!?」


「売女って言われるの嫌いなの。安くないわ」


「リンス!?」


 勢いよく気絶したリンスと言う女性をリザードが持ち上げる。そしてぶん殴って起こした。


「ん!? 痛い……」


「敵うわけないだろ。バカ……すいません。こいつ……ちょっと……」


「いいわよ。でも……安心しなさい。あなたの旦那は取らないから」


「……信用できない」


「リンス!!」


「……ぷい」


 可愛い人ではある。まぁ……影の者と言う境遇から思うに彼しか彼女にはいないのだろう。親身になる人なら尚更。私は恋ばなを聞きたいところを我慢する。


「……リザード、ずっと姫様スゴいしか言わない」


「リザード、女の子の前で他の女の子の話は厳禁よ。反省せよ」


「精進します……でっ用件は? 撤退準備はまだですが」


 ここは緩衝地スパルタ国から北東な位置。帝国は必ずここを落とし、ここを拠点に商業都市ネフィアを落とす本腰を入れる筈。私は「何故ここへ来たか」と言うと……感じたのだ。


「勘が囁く……帝国はもうすぐ都市を出る」


「……予定では半年後では?」


「予定は未定よ……残念ね……もう終わり。陛下はもう長くない。半年まで持たない気がする」


「陛下とは……帝国の」


「そう。急報としても草を放った……それの手紙も来るだろうが早く撤収した方がいい」


「………少し時間をください」


「ああ、宿で待ってる。長旅で一人になりたいからな……」


 私はそれだけを伝えその場を後にした。何処の宿にドレイクを置いているかを探さないといけないと思いつつ溜め息を吐いた。


 リンスと言う女性がリザードに怒鳴られてるのを聞きながら……自分も怒鳴られてばっかりだった事を思いだし、時間の流れにすこし……さびしい気持ちになったのだった。





 夜中、眠った瞬間に何処かわからないガゼボに呼び出される。光に満ちた花が散る。誰が呼んだかなんて決まっている。


「ネフィア」


 俺は名前を呼ぶ。


「力を使うなと言っただろう?」


「言ってない聞いてない」


 ガゼボに近付くと大人しく座る。翼を休めた姿のネフィアが居た。その隣に俺は座る。ネフィアはスッと近付き……肩に頭を乗せる。


「………」


「………エルミアに会った」


「そう……」


「エルミアはエルミアで戦うそうだ」


「………そうなんだ」


「………」


 気の抜けた返事。いつものネフィアはそこにいる。


「ふぅ……仕事の話はよそうか」


「してていいよ……勝手に甘えるから」


「今日、何があった?」


「………なにも」


「何かなければここまでハッキリした夢にならない」


「……何があったと思う?」


「寂しくなったぐらいか?」


「半分」


「あと半分は?」


「……他の家族が羨ましくて」


「そうか……俺は~うーん。寂しいことはないな。別に満たされてる気もする」


「トキヤは私がいればいいもんね」


 俺はもちろん頷く。


「今はそうでもないけどな」


「……そうでもない?」


「皆と一緒にいて……笑顔のお前……凛々しいお前が見れる今が好きだな」


「結局、私じゃん」


「ネフィア……お前もだろ?」


「………違うし」


「よし、夢から醒めよう」


「ごめん!! 見栄張った!! まだ居て!!」


「わかったわかった!! しがみつくな!! 引っ掻くな!! 猫か!!」


「にゃああああああん!!」


「渾身な鳴き声だな!?」


 ネフィアが爪を立てて離すまいとする。あまりの力強さに驚きつつ。頭を撫でた。


「にゃああん」


「………」


 英魔国全域に覇を手に入れた女王はまったく威厳もなく俺に甘えていく。まぁ一部族長はご存知だし。ー、これが本来の彼女だ。


「にゃー」


「そろそろ人語話そうな?」


「なになに?」


 本当に昔のままのネフィアだ。なので世間話のふりした仕事の話をする。


「エルミアがさー王国再建したいんだって」


「王国再建? 出来んの?」


「お前、死都浄化出来ない?」


「浄化……あっ?」


 ネフィアが離れたあと手を叩いた。


「なるほど!! 強制的に成仏させれば害はないね!! よく気が付いたねエルミア姉さん」


「俺が気が付いたから提案した」


「……もしかして懐柔した?」


「もちろん。快く掌をクルクルしたぞ」


 全く快くとは行かなかったが結果は最良と言える。ネフィアの胃痛を和らげれればそれでいい。


「胃痛なんか感じないよ」


「……心読むなよ」


「いや……なんか。まぁ負担減らしてくれてるなーぐらいだった」


「……あーあー。顔に出てた?」


「もろ、ちょっち嬉しい」


「仕方ない。顔に出るんだ」


 隠し事出来ないのは健在ですか、そうですか。


「エルミアが……マクシミリアンが味方ですか……思った以上にヤバイ展開ですね。大陸中でも大戦争まっしぐらじゃないですか~」


「帝国側が元気なうちにはいいんだろうなぁ~」


「まぁ~やるまでです。そろそろ元気出ました。ありがとう……あなた。いつまた逢える?」


「さぁ……今、帝国。出兵はまだだぞ」


「予想より遅い」


「編成が変わったからな」


「変わった?」


 俺は笑顔で頷く。故に報告する。


「スキャラ族長の上陸作戦が先方に伝わった」


 すでに戦争は始まっている。







 私は起きたら薔薇の園、白の世界の中で横になっていた。赤い薔薇の園の中心に小屋のような白い支柱の大きいガゼボがあり、その真ん中にテーブルに座る人影に驚きを示した。


「こちらへ……スキャラ族長」


「女王陛下!?」


 私はビクビクと体を震わせながら恐る恐るガゼボの中へと入った。何を言われるか、畏れながら。


 











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