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航海記録、海中リヴァイア種海戦..


 多くの人に見送られながら都市ホエールは出港し潜航する。私は主人を残しての乗都だった。


 ホエール様も久しぶりの外洋に不安を持っていた。


 「同じリヴァイア種との戦闘はしたくない」と言い。ホエール様の背中の都市にも被害は出るし、動きもホエール様は都市を背負う分トロく、ホエール様自体にそこまでの強者ではない事が理由だった。


 一般のリヴァイア種と変わらないのだ。


 多くの不安とともに私たちは遠征する。しかし、不安とともに私たちは新しい力を持っていた。あとは自信がつくだけである。


 ずっとホエール様に護られて来た。「今度は私たちが護れればいい」と思うのである。






 航海から1週間。大変な事が起きた。外洋に出てから潜航途中でリヴァイア種が遠く前方にいるらしい。ホエール様が声を拾ったのだ。


 接敵は1日から2日後。ホエール様は浮上し海面に都市を晒した。リヴァイア種の上を通って行く予定だ。


 空は曇っており嵐を予見されたが我々には問題ない。


 迂回も考えられたが……一刻でも現地に赴きたいとの事で却下される。


 願わくば何もなければいいが。





 魚影確認。上を取っているため。都市に直接攻撃は出来ないようにした状態でリヴァイアサンを確認できた。


 運が良ければ……戦わずに済むと思われたが。現れたリヴァイア種は牙を持つ食肉種だと判明し都市中に警戒網が敷かれた。


 緊急会議の結果は……交戦だった。






 会議から1時間後、私たちは交戦準備にかかる前に集められた。弱々しく族長として不安視されていたスキャラ族長が英魔国旗と私らの族長旗を重ねて整列している所に現れる。勇ましく成長なされたスキャラ族長が話を始める。大広間に集められたスライムや魚人等々はカチコチに固まった。


 スキャラ族長は威厳を手に入れた。まるで……あの女王陛下のように。


「今回、周知しているだろうが再度確認する。スラリン大隊長……説明を」


「はい、スキャラ族長」


 スラリン大隊長様が現れ、スキャラ族長が後ろへ下がる。


「休ませろ。長い話になる」


「一同休め!!」


 バッ!!


 私たちは楽な姿勢に移った。最近、ダークエルフ式の統制方法が格好いいからと流行る。大隊長役職も同じ理由だ。


「では、お話をします。現在、肉食のリヴァイア種が確認されました。数時間後に接敵予定である。逃げられはしない」


 皆がざわつく。昔から我々はおやつのように食べられ続けて来た恐怖が胸に上がってきた。


ドンッ!!


 スラリン大隊長が大きくホエール様の背中を踏む。大きな音が広間に響いた。


「静かに!! 腰抜けども!! 殺る前からビビってどうする!! そこのお前!!」


「はい!!」


「お前は後方で女王陛下と接敵しただろう……覚えているか?」


「はい!! 恐ろしい程の剣筋であり、何も出来ず敗北しました!!」


「悔しくはないか!!」


「悔しいです!! 女王陛下にこんな惨めな姿を晒したことを!!」


「では!! 今の姿を見せれるか!!」


(いな)!!」


 大きく海人が叫んだ。それにニヤリとしたスラリン大隊長は叫ぶ。


「お前ら全員腰抜けか!!」


「「「否!!」」」


「では!! リヴァイア種なぞ!! 我々の敵ではない!! 今から作戦を言う!! 耳をかっぽじって聞けクソども!!」


「「「了!!」」」


 皆が叫ぶ。叫ぶと内から熱い物が込み上げていく。そう、私たちは闘志を燃やす。


「作戦を概要は殲滅!! スライム隊は水中用パンジャンドラムで相手に特攻をしかけよ!! 作戦は単純明快。敵を海底まで沈めてやれ!!」


「「「サー!!」」」


「全員解散!! とりかかれ!!」


 一斉に私たちはバラバラになり、持ち場に向かった。一目散に何も考えずに私も動く。


 私はお夫のように深く考えるのは苦手だ。だから簡単な方がいい。


 敵を倒せとな。

 






 接近まで数分と迫った中、持ち場についたまま指示を待つ。水中専用特攻パンジャンドラムに乗り込んだ私たちは両脇の魚人たちがいつでも押し出せる準備をしていた。目の前は赤い旗をおろした魚人が今か今かと命令を待っている。


「準備いい隊の点呼を行う。01から報告せよ」


 スラリン大隊長の声がピットに響く。私はなんと栄光の01隊だ。


「00。こちら01、準備よし。続け」


「02、準備よし」


「03、準備よし」


「04、準備よし」


「05、準備よし」


「06、準備よし」


「07、準備よし」


「08、準備よし」


「09、準備よし」


「10、準備よし」


「ほう、全部行けるか……30機……よし。今からホエール様が潜航する。その瞬間発都!!」


「「「了!!」」」


 スラリン大隊長が手をあげる。あれが降りた瞬間に目の前の赤旗は退けられるのだろう。私たちは前だけを見る。


「骨だけは拾うぜ」


「頼んだ。あとは任せろ。あとスライムに骨はない」


「そうか………なら、死ぬんじゃねぇよ」


「旦那がいる。彼の子を成すまでは死ねんよ」


 今か今かと私たちは静かに待つ。その時が来るまで。


「ホエール様潜航開始」


 目の前が慣れ親しんだ海中の青い空の景色に少しづつ染まっていく。綺麗なブルーの世界に私らはパンジャンドラムに魔力を注いだ。


「海中入りました!!」


 バッ!!


「射出!! 我が(青い空へ)!!」


 スラリン大隊長の手が下ろされ、目の前の赤い旗が上がった。その瞬間に勢いよく歯車を回し、両脇の取っ手をつかんでいる魚人が勢いよく押して外へと投げる。魔法の膜を突き破り、我らの海へと飛び出したのだった。






 ゴオオオオオオオオ!!


 都市ホエールはゆっくりと潮を吹き、大きく呼吸をしたあとにゆっくりと潜水する。潜水した瞬間だった。


 都市から小魚のようなのが30匹、勢いよく左舷から泡を出し射出される。


 30匹の小魚はそのまま右折して進む。大きな渦の音を巻きながら急速に速度が上がっていく。


「01を先頭に続け!!」


 大きくスライムが叫び先頭のパンジャンドラムに1隊3機編成で三角形のまま十の隊が進んだ。


 グォオオオオオン。


 大きい大きい姿の鮫のような魔物が口を開ける。小魚を吸い込むように口を開けた途端だった。


 グイッ!!


「全隊、下降せよ!!」


 小魚のようなパンジャンがななめ45°下に向き、大きな巨体を避ける。そして猛攻が始まった。


「全隊逆宙返り!!」


 ななめ45°から真下に向きを変えて、巻き込みように世界が逆さまになりながら反転させる。その勢いのままでリヴァイア種が泳ぐ時に生み出す乱流を掻き分け接近した。


「06から10まで!! 尾に食らい付け!!」


 声が響くと同時に鮫リヴァイア種の尻尾にパンジャンドラムが突き刺さる。そして連続した爆発が起き、尾がズタズタに裂かれ、青い空が血に染まる。


 リヴァイア種は苦痛に叫び、泳ぎが緩やかになった。隙が生まれる。


「腹の下へ!! 02から05まで突貫!! 01に続けぇぇぇ!!」


 そのままお腹のしたで角度を変えて突き刺し、爆発した。


 ズタズタに引き裂かれ、内部にもパンジャンドラムの破片が撒き散らされる。


「ふむ。ようやった……あとは喰らうてやる」


 そのズタズタになった側面からホエールが大きな口を開け、噛みつきリヴァイア種を千切った。鮫のリヴァイア種はピクピクと暴れずにとうとう動かなくなりゆっくりと沈んで行く。一瞬で絶命し……魚人たちが回収のために都市から飛び出た。


「生存者回収に来た!! 01応答せよ!!」


「01から……生存者確認。01よし」


「02……死ぬほど痛い」


「03……同じく」


「04……死ぬはやく……」


 各々が愚痴りながら順番に報告して、全員が生存していることが確認された。動けないスライムたちは魚人たちの網で捕らえ、ゆっくりと都市まで引っ張って貰う。


 パンジャンドラム特攻作戦は成功に終わったのだった。




 スラリン大隊長は都市の端で様子を見ていた。そのスラリンに魚人の隊員が近付く。


「スラリン大隊長。報告です!! リヴァイア種沈黙。ホエール殿が再度噛みついたままです。特攻隊員も全員が生存し、帰還しました」


「そう、療養させてあげて。死ぬほど痛いから。あとはリヴァイア種の解体し食料にします」


「はい!!」


 隊員の魚人が去り。スラリン大隊長はスキャラ族長に報告しに向かう。


「……私たちは英魔となり。捕食者になった。新しい時代ね」


 スラリン大隊長は勝てる喜びを知り、ヌチョヌチョと歩を進めるのだった。




 











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